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31 詐欺の被害

 ボーラン男爵の前にも資料が配られた。


「まずは、王都の屋敷ですが、こちらは王妃陛下が高値で購入してくださいました」


 ボーラン男爵一家がびっくりして後ろに座る両陛下へ顔を向けた。王妃陛下は笑顔で頷いた。


「それと調度品ですが、すべて擬物で価値はほとんどありませんでした」


「「「えっ!!!???」」」


 ボーラン男爵一家の三人は背筋をシャンとさせ、目玉が飛び出そうなほど目を開く。


「領地の屋敷の分も含めて全部です」


「は?」


 ボーラン男爵は疑問なのかため息なのかわからない声を出した。


「王都の屋敷の物が偽物だったので、領地の屋敷へ問い合わせました。結果、そちらも偽物でした。

残念ですが、装飾品も……です」


 ボーラン男爵夫人が気を失った。ボーラン男爵は口をパクパクとしているがキチンと呼吸できているか不明だ。サビマナは状況が理解できず、ネイベット侯爵と両親とを交互に見ている。


 本当はネイベット侯爵の手の者であるボーラン男爵家の新しい執事から、早々に偽物であるという報告は来ていたが、ネイベット侯爵はまるで今回のために調べたかのように報告した。


「ひっ!!」


 バザジール公爵が目を細めた。それに気がついたボーラン男爵子息が恐怖で小さな悲鳴をもらす。


「ボーラン男爵。それらをどこから購入したか教えてください。他でも詐欺をしているかもしれません。早急に調べます」


 ボーラン男爵子息がボーラン男爵の背を叩き正気に戻す。

 男爵はバザジール公爵に商人のことをしどろもどろに説明した。バザジール公爵はメモをとると壁にいる文官を呼ぶ。そして、そのメモを文官に渡すと文官は一礼して部屋を出ていった。

 ムアコル侯爵も扉の前に控えていた兵士を一人近くに呼び寄せ、何やら指示をした。兵士が頭を下げて部屋から出ていく。騎士団として捕物に協力することは当然なのだろう。


「ネイベット大臣。その手の報告は早目にいただきたかったですな」


「すみません。ボーラン男爵領の屋敷の分もあったもので」


 バザジール公爵は了承したと首肯した。ネイベット侯爵がボーラン男爵家の方へ向き直す。


「ボーラン男爵。芸術品は売買が難しいのです。まず初めは、すり寄ってくる商人ではなく、信用する貴族から紹介してもらった商人から購入するべきでしたね」


 ネイベット侯爵は項垂れるボーラン男爵に親切に説明した。ボーラン男爵は泣き顔となっている。


「宰相。我らは退室する」


 国王陛下がバザジール公爵に声をかけた。バザジール公爵、ムアコル侯爵、ネイベット侯爵、ゾフキロが立ち上がり頭を下げた。それを見たボーラン男爵は慌てて立ち上がり、さらに夫人と子息とサビマナに急いで促した。夫人はヨロヨロと立ち上がる。キョロキョロとするサビマナをボーラン男爵子息が頭を押さえて下げさせた。


 レンエールは、この四ヶ月勉強したはずなのにここでスッと立ち上がることも頭を下げることもわからないサビマナに、正直、がっかりする。


 レンエールはサビマナへの不満は顔に出さずに、他の者全員が立ち上がり頭を下げたことを確認して、最後にゆっくりめに立ち上がり頭を垂れた。

 両陛下が立ち上がったことが空気で伺えた。


「ボーラン一家がつつがなく暮らせるよう差配いたせ」


「「「かしこまりました」」」


 レンエールとバザジール公爵とネイベット侯爵が返事をした。ボーラン男爵一家は、国王陛下が『男爵』と付けなかったことには気が付かなかった。

 両陛下が扉から出ると頭を上げ再び席についた。


 ムアコル侯爵とゾフキロが立ち上がる。


「我々もいない方がいいようですね」


「いや、サビマナの判断によってはゾフキロにも関わることになりますよ」


 ネイベット侯爵は心配そうに聞いた。


「ええ。ですが、それによってゾフキロの心が揺らぐわけではないと思うのです」


 ゾフキロはムアコル侯爵に頷いた。ゾフキロにとって辺境伯領へ行くことは決定事項であり、そこへサビマナが一緒に行くのかだけであり、これ以上強要はしないつもりであった。

 とはいえ、ムアコル侯爵は前日までの会議に参加しているので、バザジール公爵やネイベット侯爵がどのような話をするのかは知っている。そして、恐らくそのようになる……そのようにならなければボーラン一家の未来はない。


「そうですか。では、結果はご連絡します」


「よろしくお願いします。

私は先程の詐欺の調査に参ります」


 ムアコル侯爵とゾフキロは退室した。

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