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29 ゾフキロの気持ち

 レンエールの右手側の長机にいる宰相バザジール公爵が淡々と話を始めた。


「早速ではありますが、今回の誘拐未遂事件について国王陛下の裁決をお伝えいたします」


「宰相。いくらなんでも説明を省きすぎだ」


 レンエールは苦笑いしていた。


「そうですか? では、ボーラン男爵令嬢誘拐未遂事件ですが……」


「誘拐ってっ! サビマナがですかっ?!」


「ボーラン男爵。未遂ですよ。お嬢さんはお隣におりますでしょう」


 レンエールの隣に座る王宮総務大臣ネイベット侯爵がボーラン男爵を諭した。ここ数ヶ月でネイベット侯爵はボーラン男爵への対応に慣れている。


「大臣。それではゾフキロの不名誉となるだろう。もうよい」


 レンエールは自分の左手側のテーブルにつくボーラン一家へと体を向けた。


「サビマナは離宮からの帰りに偶然見つけたゾフキロに逃走を持ちかけた。そうとは知らない護衛たちはゾフキロを捕縛した。ゾフキロが捕縛されたまま王城に連れて来られたことは多くの者の目に止まってしまった」


 ゾフキロは俯いた。自分のせいで、父親と兄が騎士団からの退役を望んだことはすでに知らされていた。


「それに、ゾフキロがサビマナを探していたことは周知の事実だから、さらに『誘拐』という噂に拍車がかかってしまった。

だがな……」


 レンエールがレンエールの反対側のテーブルに座るゾフキロを悲しげに見た。ゾフキロの隣に座る騎士団長ムアコル侯爵は言葉を引き継いだ。


「殿下はゾフキロの汚名を雪ぐことを進言してくださった。しかし、それをすると王家が汚名を被ることになる。

臣下として、王家のために汚名を被ることは誉れだ。

それにゾフキロが殿下の想い人に懸想していたことは事実であるしな」


「はい」


 ゾフキロは小さく呟いて頷いた。


「王家にあだなすと思われたお前を貴族にしておくわけにはいかぬ。今日から平民となる」


 ゾフキロは覚悟をしていたようで反抗もせずに頷く。


「ボーラン嬢。貴女はお立場を考えずムアコル侯爵子息を誑かした。これは間違いようのない事実です。貴女もそう証言していますね」


 バザジール公爵の確認にボーラン男爵一家は驚き、サビマナを見た。サビマナは項垂れたまま動かなくなった。


「それは王家への裏切りです。貴女も本日より平民となります」


 サビマナは半泣きの顔でバザジール公爵を睨みつけた。


「だって、だって! あんな勉強しなくちゃいけないなんて知らなかったものっ! レンと結婚すれば贅沢ができるって思っただけよ。

なのに、レンがいなくなっちゃうしっ! ゾフィを見たら、私を助けに来たんだって思うでしょう!」


 この場で癇癪を起こしているような物言いと、宰相に対する口調と、人のニックネームを使うサビマナの様子に、ここ数ヶ月の学習成果は全く見られなかった。

 話を聞いていたボーラン男爵は恥ずかしさのあまり俯き、マナーを知らぬボーラン男爵夫人と兄でさえ、青い顔をしてサビマナを見ている。


「サビマナ。私も浅はかだったのだ。サビマナのせいだけとは言わない。

それに、サビマナがゾフキロに抱いた『助けに来てくれた』という感覚は全くの間違いというわけではないのだろう。

なぁ、ゾフキロ?」


 ゾフキロがレンエールを見ると、レンエールは『話して大丈夫だ』と首肯した。


「私は、サビマナを助けたいと思い、日々探していたのです。その気持ちは本当です」


 レンエールは優しくニッコリとした。

 ムアコル侯爵はゾフキロの肩に手を置く。


「国王陛下の命で、お前とボーラン嬢、いや、サビマナとの婚姻が成立した」


 ボーラン男爵一家は目を見開いた。

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