表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/47

24 男爵家の借金

「ボーラン男爵っ! いったいどうしたのだ?」


 レンエールのわざとらしい優しい声かけに、文官は声をつまらせて笑いを堪えた。

 土下座で絨毯に頭を擦り付けているボーラン男爵はそれには気が付かない。


「そ、それをされたら、私は……こ、殺されます……」


「何っ! 誰に殺されると言うのだっ! 義理の父親となるボーラン男爵を殺すなど、私が許さないぞっ!」


 ボーラン男爵は絨毯に押し付けている頭を左右に何度も何度も振る。文官は絨毯の摩擦で痛いのではないかと案じた。


「ボーラン男爵。きちんと説明していただかねば何もわかりませんよ」


 ネイベット侯爵の落ち着いた声音はボーラン男爵にはさぞかし親身に聞こえたであろう。


『お二人共、役者だぁ』


 文官は愁いと温かみを持つ二人の目を見た。それを偽りのものだと知っているのだ。今、ボーラン男爵が頭をあげても、二人の心理を勘違いするだろうと容易に予想ができるほどだった。


 ボーラン男爵は震えながら頭を少しあげ、チラリと二人を交互に見た。額は赤くなっている。二人は『大丈夫だよぉ』というように首肯する。

 案の定、二人の役者に騙され、罪を認めることにしたようだ。目に薄っすらと涙を溜めた。


「すみません! すみません! すみません! む、娘が王子妃になりそうだと、い、言ってしまいましたぁ」


 再び頭を絨毯に擦り付けた。


「なっ!! 本当かっ?! …………陛下の命なのだぞ……」


「それはマズイですねぇ。さすがに庇い立てのしようがないかもしれない……」


 二人は困惑しているようにしか見えない。文官はもう何も言わず何も考えず二人に任せることにした。いわゆる指示待ちである。


「陛下はまだ知らないのだろう?」


 レンエールはネイベット侯爵にわざと確認する。


「そうですね。

ボーラン男爵。どなたにそれを言ったのですか?」


 ボーラン男爵はカタカタとずっと震えている。


「お、お金を借りた方々ですぅ」


「えっ!! まさかっ! 相手はそれを理由に貸してくれたということですかっ?」


「そ、そうだと思いますぅ……」


「…………だとすると…………殿下の婚約に変化なしと伝えると、問い合わせが来るな。そうなってしまえば、陛下に隠し立てはできないだろう」


 レンエールは目を瞑り思案顔で神妙に頷く。


「ならば返済してしまえば、勘違いだったで済むのではないですか?

あっ! ですが、街道整備などは換金のしようがありませんから、お金にはなりませんね」


 ネイベット侯爵は顎に手を当てて悩んだ顔をした。


「そ……それも……」


 ボーラン男爵は消え入りそうな声であった。


「まだ何かあるのか?」


 レンエールは殊更柔らかく聞いた。


「領地の開発は……そのぉ……屋敷しかしておりません……」


「……ボーラン男爵。屋敷は領地の開発とは別の物ですよ。屋敷の修繕は領地改革とは言いません。

ん??!! では、私が投資したお金はどうなさったのですか?」


 ネイベット侯爵がここでやっと冷たい口調に変更した。


「そ……それは……」


「ネイベット大臣。今は大臣の金については我慢してもらえぬか? それより、他家への借金について考えなくてはならない」


「わかりました。殿下がそうおっしゃるのでしたら」


 『二人で親身に対応』から『アメとムチ対応』へとシフトチェンジも阿吽の呼吸だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ