舞踏会1
少しだけ恋愛っぽい?要素が入りました。
この話は女性を貶める表現があります。苦手な方は読むのを辞めてください。
私は侯爵令嬢サリアナですの。
今日は王宮にきております。王家主宰の舞踏会が開催されて招待されましたの。
今晩の招待客の中には有名な軍事国家アルタイル帝国より第二皇子ベガルータ=アルタイル様が参加されます。
以前、王太子で従兄弟のカルザン(愛称カール)に、私とアルタイル帝国の方は気が合うのではないかと言われたので、少しだけ楽しみにしていますの。ほんの少しだけですわよ?
さぁ、捕獲開始、いえ間違えましたわ。舞踏会が始まりますわ!
「やぁ、サリアナ嬢。今晩は。ご機嫌はいかがですか?」
親友のマーガレットとレイチェルの現婚約者、私の元婚約者のマイクとレナードですわ。
「今晩は、マイク様、レナード様。ええ、今夜はとても華やかな舞踏会で楽しんでおりますわ。マーガレットとレイチェルはどうしましたの?」
「さっそくスイーツを頂きに行っていますよ。貴女を探して伝えてくれ、と頼まれましたね。使われてます」
苦笑をしながらマークが話す。
「ありがとうございます。行ってみますわ」
会場からすぅ、と抜けるとマーガレットとレイチェルのところに行く。
「マーガレット、レイチェル、今晩は」
「サリアナ、今晩は。時間も惜しいのでさっそく本題です。あの方がベガルータ皇子殿下ですわ」
さすがマーガレット&レイチェルは情報が速いですわ。
さりげなく、レイチェルが扇子で指し示した方向を扇子で顔を隠しながら見る。
ガッシリとしたした体躯、真っ黒な髪に真っ青な目、少しいかつい輪郭の目付きの鋭いハンサムさんですわ。
「先程から令嬢方がダンスに誘って踊られていますが、皇子はかなりのダンス上級者レベルにもかかわらず、相手に合わせず強引に振り回してますわ。わざとなさってるのでしょう。あまりいい印象を持てませんわ」
「ふぅ~ん、女性に随分と失礼な方ですのね。…では、ちょっと行ってきますわ」
「サリアナ…大丈夫?」
心配そうにレイチェルが聞いてくる。
「そうよ。相手は他国の皇子よ。何かあっても何も言えないわ」
マーガレットも重ねて言ってくる。
「心配しなくても大丈夫。私はダンスを踊ってくるだけだもの」
ニッコリ笑って従兄弟のカールと話している皇子の元に行く。
「お話し中のところ失礼いたしますわ、カルザン王子殿下。今夜はご招待いただきありがとうございます。私もこちらの御方にご挨拶をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
チラリと皇子に視線を送る。
「あぁ、サリアナちょうど良かった。君にも紹介しようと思っていたんだ。ベガルータ皇子、こちらはサリアナ=グラナダス、侯爵家の令嬢で私の従姉妹になります」
「はじめまして御目にかかります。サリアナ=グラナダスと申します。どうぞお見知りおき下さいませ」
綺麗なカーテシーを披露して挨拶をする。それに対し少しムスッとした表情で皇子が答える。
「ベガルータ=アルタイルだ」
「ベガルータ皇子、よろしければ私の従姉妹とダンスを踊ってもらえないかな?」
「…あぁ」
皇子にエスコートされ、会場の中央に陣取ると、私にしか聞こえない音量で話す。
「最初に言っておくが俺は女は好きじゃない。香水臭いし、チャラチャラしていて話も合わん。女は子供を産むしか役に立たないだろう。ましてや他国の高位貴族の娘など色々面倒だ。カルザン王子が貴女をすすめてきても断るからな」
まぁ、この方何様でしょう?あら皇子様でしたわね。
チラッとカールを見ると大きく頷いたのが確認出来た。よし来た!学園時代のチーム『混ぜるな危険!!』の意思疎通力は健在ですわね。
良いですわ。他国の皇子と言えどもこの女性への侮辱は見過ごせません。受けてたちましょう。
サリアナに火が着いた!遠目でマーガレットとレイチェルはそれを確認し、あっちゃ~、という顔をしている。
「そうですか。私もベガルータ皇子殿下とは気が合うとは思えませんもの。こちらから申し込むことは絶対にございませんからご安心なさって下さいませ。ない申込みをどう断るのか不思議ですが、どうぞ心置きなく断って下さいな。オホホホ」
声を落とし、こちらも皇子にだけ聞こえるように話す。
「なっ!」
「香水くさい?私付けておりませんが?あぁ、ドレスにポプリの香りは移っているかも知れませんわね。チャラチャラ?それは何ですの?そのような令嬢は今日は一切貴方様に近づいておりませんでしょう?カルザン王子殿下が近寄る者は厳選しておりますもの」
ふふふ、と優雅に微笑みながらギラッ輝いた目で語る。
「このような事、まさかアルタイル帝国の第二皇子殿下がお分かりにならないわけございませんですわね。何も理解されず、他国の令嬢に、紳士にあるまじき失礼な態度など取るわけはございませんよね?まさかね。オホホホ(意訳:こんの感情直結脳筋が!)」
怒濤のこき下ろし節が炸裂する。固まった皇子が次の言葉を出す前にサリアナは楽団に曲を注文を出す。それは高等技術がないと踊れない難曲であった。
「…いい度胸をしている。そちらこそ躍りきれるのだろうな?」
「もちろんでございます」
2人の視線がバチバチ絡む。その雰囲気は色事の『い』の字もない!笑顔の2人のこめかみには血管が浮き出ている。舞踏会ではなく、武道会のようである。
曲が流れ、踊り始める2人。
「はっ、やるではないか」
「当然でございますわ」
しれっとした顔で答えるサリアナ。元々ダンスが超得意なサリアナが本気で身体強化も使って踊っている。パワーもスピードも常人とは桁違いな彼女は超一流の躍り手になる。
対して皇子も一流だが、サリアナのスピードとパワーに押されている。
「くそっ!!」
「あら、どうなさいましたの?汗が滝のように流れていますわよ。お加減でも悪いのでしたら、途中で止めましょうか?オホホ、ダンスも最後まで踊れないほどお体が弱いとは存じませんでしたわ。気が利かなくて申し訳ございません。どうか、チャラチャラした女の仕出かしたことと思って、怒らないで下さいませね~」
言葉でも容赦なく追いつめまくる。
ターン1つにしてもわざと大きくとり、スピードをあげてベガルータ皇子を翻弄し、ステップも数を増やして更にスピードをあげる。
ほぼ、苛めである。
ダンスが終わり、何も分かっていない周りからは素晴らしい踊りに拍手喝采が送られるが、皇子は弾む呼吸を整えるのに苦労している。
「さぁ、カルザン王子殿下の所に戻りましょうか?」
「……話がある。少し付き合ってもらおう」
そう言うと皇子はサリアナをエスコートして庭に続くテラスに導き、更に噴水の近くまで降りて行った。
5話目にしてサリアナの家名が出ました!…名前考えるの苦手です。
長くなったので話を分けました。