サリアナちゃんの冒険 ―寝返り編―
連載にして初めての新作話です。やっちまった。見捨てないで下さい(;>_<;)
頭をカラッポにしてご覧ください。
※普通の赤ちゃんはこんなこと出来ません。ご注意下さい。
侯爵令嬢サリアナちゃん、現在月齢7ヶ月。
母親のアリアナは産後の肥立ちが悪く、サリアナちゃんを産んですぐに儚くなってしまいました。皆は悲しみ、その分サリアナちゃんが元気に育つように祈りました。
その結果…元気になりすぎました!
「そっちに行ったぞ、回り込め!方向転換はまだ出来ないはずだ!」
「ふっ、これで今日の追いかけっこは終わりだ」
サリアナちゃん、月齢7ヶ月で片方向だけの寝返りがうてるようになりました。そして、そのまま転がりローリング走法をマスター。現在屋敷内を逃走中です。
片方向にしか転がれないため、方向転換が出来ないサリアナちゃんは、突き当たりの廊下やカーブに来ると使用人にゲットされていました。
「よし、来た!曲がり角にさしかかるぞ!」
ローリングしながら来たサリアナちゃん。曲がり角近くになってもスピードを落としません。
「ヤバイぞ!壁に激突する?!」
使用人たちが慌てた次の瞬間、サリアナちゃんは華麗なるドライビングテクニック、ドリフトを見せつけ、スピードを落とさずに転がり抜けていった。
「バカな…昨日まで曲がれなかったのになぜ急に?!誰か教えたのか?」
「そんな奴いな…い?あれ?もしかして…俺?」
「まさか心当たりがあるのか?!」
「昨日、雑誌の『あなたのドライビングテクニックが爆上がり!魔道車特集!』を裏庭で見てて、皆でドリフトの話をしてたんだよ。身振り手振りを交えながらさ」
「バカ野郎、それだ!!お嬢、どっかから裏庭を覗いてたな!追え!」
慌てて追いすがる使用人一行。今度はサリアナちゃん、突き当たりの廊下で止まっていた。
「お嬢~、いい子でちゅね~、お部屋に帰りまちょーね~」
ジリジリと距離を詰める使用人。サリアナちゃんは転がり姿勢からお座り姿勢に変わっていた。
「ア~ブ?」
お首をコテン、と傾げ、お口にふくふくしたお手てを持っていき、お目めをぱちぱちさせて見上げる。天使である。
「「がはっ!可愛えぇぇぇ!!」」
使用人たちが悶えた瞬間、隙をついてサリアナちゃんが転がり抜けた!
「しまった、抜けられた!今日は手強いぞ。おい、サスマタを持ってこい!」
本来サスマタとは、棒の先端にU字の形がついた不審者取り押え用の道具である。
しかし、侯爵家のサスマタはU字部分にクッションの綿がたくさん取り付けられ、シルクの布でグルグル巻きにされている安全仕様、全く痛くないサリアナちゃん捕獲専用、侯爵家渾身の一品である。(※児童虐待の意思は全くございません!)
「くっ、何処だ?」
キョロキョロ見回す使用人の目に飛び込んできたのは、廊下にかけられている大鏡の前に座り込み、短い体をクネクネしているサリアナちゃん。
「何してんだ?お嬢…」
「あれは…まさか!」
「おい何だよ、あれ?」
「先日、食堂で雑誌の『無自覚小悪魔爆誕!異性を虜にするしぐさ特集』を皆で身振り手振りを交えながら見ていたのよ…」
「お嬢…食堂も覗いてたな…」
大人の真似をしたいお年頃…いやお月頃のサリアナちゃん(月齢7ヶ月)。
ハッと使用人たちに気づいたサリアナちゃんはトップスピードで逃げ出す。
そのまま更に加速し、2階の階段の一番上からジャンプした!
「まずい!!」
伸ばすも届かない使用人の手!!
『ポスン!』
軽い音がして、階段下にいた冒険者らしき男がサリアナちゃんを受け止めている。
「おいおい何だよ?侯爵家ってのは赤ん坊がぶっ飛んで来るもんなのかよ?」
「「ありがとうございます!」」
使用人たちがサリアナちゃんを受け取ろうとするが、
「ア~ブ、ア~ブ」(乳母訳:や~だ、や~だ)
離れません。
そのままヨジヨジと男の頭に登り、男の登頂部にお腹部分を、右側頭部に頭を、左側頭部に足を向けてうつ伏せになり寝た。
「「「…………」」」
「おい、どうにかしろよ、これ…」
スピスピ気持ち良さそうに眠るサリアナちゃんを指差しながら、眉を下げて困った顔をする男。
この男、侯爵様に呼び出されたプラチナクラスの冒険者ザッカード。サリアナちゃんが産まれたことにより、屋敷の警護を増強するため声をかけられたのである。
そしてこの運命の出会い!身体強化の第一人者ザッカード!後々サリアナちゃんの才能を早くに見抜き、師事することになる。
容姿可愛く、血筋ピカ一の侯爵令嬢サリアナちゃん。まだ婚約者はいない…。
ジャンルは恋愛なんですけどね~、おかしいなー。なかなか恋愛にいきません。