お友達と婚約者たち
短編シリーズ2作目をを少しだけ直してあります。
アーネスト君をちょっと腹黒にしました。
私は侯爵令嬢のサリアナと申しますの。
今日はお友達を招いてお茶会をしております。
侯爵令嬢のマーガレットに伯爵令嬢のレイチェル。学園を卒業した今もお付き合いをしている親友ですわ。
そしてなぜか2人の金魚のフン…げふんげふん、婚約者も一緒に来ております。チッ、女子会に割り込んでくるとは気のきかない男ですこと!これは決してラブラブな人達への嫉妬ではありませんのよ。
「嫌だなー、そんな露骨に嫌な顔をしなくてもいいじゃありませんか」
マーガレットの婚約者、伯爵家次男のマイクが話しかけてくる。
「あら嫌ですわ、マイク様。親友の婚約者を邪険にするわけございません。どうぞおくつろぎ下さいませ」
ニッコリと貴族らしい微笑みを浮かべて答える。
「あぁ、仕方ないよね。マイクと僕は嫌われているからさ」
レイチェルの婚約者、伯爵家長男のレナードがチェスの駒を指先で転がしながら会話に入り込んでくる。
「まぁ、どうしてそんな風に思われていますの?私、そのような態度をとったことありませんわ」
目を真ん丸にして驚く私を見て、一斉に4つのため息が聞こえる。
「サリアナ、貴女は目が正直すぎ。例えれば態度は令嬢、目は狩人。ギャップがありすぎて恐いですわ」
レイチェル、貴女かなり失礼よ?なぜ令嬢が狩人に例えられなければいけないのかしら?私は獣なんて狩らないわ。ギラギラなんてしていなくてよ。
「そんな正直な貴女が私は大好きだけど、私達の婚約者を苛めないでね」
「マーガレット、私も大好き!」
むぎゅっ、とマーガレットを抱きしめる。
「もう許してもらえないかな?僕達はあまりにもお子様過ぎたんだ。今は悪かったと思って反省しているよ」
頭をかきながら、マイクが謝ってくる。
そう、何を隠そうこの2人。以前は私の婚約者だったのですわ。マイクは私が5歳の時、レナードは10才の時に婚約解消しておりますの。
私と婚約解消してから態度が紳士に変身。人気急上昇で私の親友の婚約者になりました。
マイクは、自分の家に招待してお茶をいただいていた私の顔面に、蛙を投げ付けてきましたのよ!
その返礼として、池に叩き込んで差し上げましたわ。ほら、スッキリ!
「あの時はホラ、何でもいいから君の気を引きたかったんだよ。やり過ぎたと反省してる。あの1件から女の子は優しく扱わないとイケないと心に刻まれたよ(別名トラウマ)」
マイクが遠い目をして語る。
「うん、そうだよね。僕もサリアナ嬢の綺麗な髪の毛が欲しくて一房切ってしまったんだよね。今考えれば、女の子の髪を切るなんてとんでもないことをしちゃったと分かるけど。その代償は高かった…。女の子は大事にしないとイケないと心と身体に刻まれたよ(別名トラウマ)」
遠い目をしてレナードも語る。
ええ、そうね。あの時は速攻でレナードに金○攻撃で報復。大騒ぎになりましたもの。
「お2人とも、私に許して欲しければ素敵な殿方を紹介してくださいませ!今、フリーに戻りましたの」
「「「「え?また?今度は何があったの?」」」」
凄いですね。4人ともシンクロ率高過ぎですわ。まさに異口同音。
「私以外に女性が居ましたのよ。結婚後も関係を続けていくと約束をしていた所をたまたま聞いてしまいまして…。」
「「「「………………………」」」」
慌てたようにレイチェルが話す。
「で、でも、結婚前に分かって良かったじゃありませんか。不誠実な方と結婚しなくて済んだのですから」
「ええ、まぁね。元々こちらから婚約を打診したのですが、向こうはうちに借金もあって断れなかった、ということもあったようですわ。アーネスト様に同情もいたしますが、彼にも私と結婚すれば侯爵になれる、という打算が少なからずあったようですし…」
サクッとクッキーを噛る。甘い。
「それに、私も婚約解消後に知ったのですけれど、その女性とは5年も前から付き合っていたそうですわ。家からは平民の商人のお嬢さんということで反対されていて、それもあって伯爵家は私との婚約を喜んで受けましたの」
更にサクサク噛る。
「でも、やはりその女性とは離れられなくてつながっていたのですね。その女性からしたら、私が割り込んだ形ですわ」
「サリアナ…」
マーガレットが私の手を握る。
「心配しなくても大丈夫ですわ、マーガレット。しっかり話し合いをして、スッキリしましたから!」
「「ちなみにどのような話し合いをしたんだい?」」
男性陣かなぜかおそるおそる聞いてくる。
「もちろん!まず身体強化をかけた私が婚約者のアーネスト様の顔面にストレートをかましましたわ」
「「ヒエッ?!」」
「その後は粛々と婚約解消の話を進めましたわ。アーネスト様は鼻から大量出血、鼻骨が曲がっていたようなので話し合いは欠席でしたの。」
ふ~、とため息をつくと、再度話し始める。
「私、『私と結婚してからも関係を続けようとした方を今さら切り捨てたりしませんわよね?私、怒りますよ?』と、にこやかにお話をして(別名脅迫)ついでにアーネスト様の婚約をまとめて来ましたわ。伯爵様、私とは絶対に目を合わさず、首をカクカクしてお返事していましたの。失礼ですわよね?」
「サリアナはお人好しね。なんだかんだ言っても融資は継続、婚約解消してあげた上に、相手の女性の今後まで気遣うんだから!」
「でもね、レイチェル。納得いかないこともあるんです。アーネスト様、当事者として最後に話し合いに参加しないのは無責任ですわ。そう思われませんか?」
「「いやいやいや、出れないって!大量出血だよね?」」
まぁ、男性は同性に味方するのね。
「確か、サリアナ嬢は学園の武闘系の行事に優勝したことがあるくらい攻撃力があるよね?」
「あら、マーク様よくご存じですのね。えーと正式名称は忘れましたが、通称『バトル・ロワ○ヤル生き残るが正義』と生徒の間では言われている大会ですわ」
ヒクッと男性陣が引きつる。
「サリアナ、貴女そういえばあの大会の後、騎士団長様に声をかけられていませんでした?」
「ええ、あの大会の時は差し入れをありがとう、マーガレット。最後に戦ったのが騎士団長様の息子さんだったのでお話ししましたのよ。団長様には『貴女が侯爵令嬢でなければ勧誘(拉致)して騎士団にいれたのに!』と言われましたわ」
「その騎士団長の息子は君の婚約者にどうなんだい?」
相変わらず顔が引きつっているレナードが問いかけてくる。
「難しいですわね~。彼と最後に交わした会話が『いつかお前に土をつけてみせる!』ですから。完全にライバル認定されております。ここから恋愛に持っていくには王命でもいただかないと無理ではないでしょうか?」
「「「「そんな王命は絶対にこない!!」」」」
「困りましたわね~、どなたか良い方いらっしゃらないかしら…」
容姿端麗、血筋はピカ一、だけどかなり残念な侯爵令嬢サリアナは今日も出会いを捜す。しかし、その道のりは果てしなく遠い…。
初めて主人公の名前が出てきました。可愛がってくださいね。( ̄▽ ̄)ゞ