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侯爵令嬢の婚約〈連載版〉  作者: 小鳥遊あかり
15/20

サリアナちゃんの冒険 ―ギルド編―

サリアナと師匠のザッカードのお話です。また、ちょい長めになります。


皆さん、この時期頑張って乗り切りましょうね。





私は侯爵令嬢サリアナです。6歳になりました。


今日はお父様が雇ってくれた護衛のプラチナ冒険者のザッカードさんと社会見学でギルドに来ています。



「はい、ギルドに到着、と」


「ししょー、ここがギルドですね。何か凄いです!怖そうな人が一杯です。小説のような揉め事が起きそうです。楽しそうです」


「そうだなー。まず、そんなのねぇな。受付するか。おーい、受付頼むわ、この子」


「はい、承知しました。…ザッカードさん、親戚のお子さんですか?可愛いですね。お嬢ちゃん、お名前は?」


「サリアナです。よろしくお願いします」



受付カウンターに一生懸命顔を出そうとサリアナがピョンピョン跳びはねている。



「はい、サリアナちゃんで登録、と。いいですか?まだ、貴女は小さいので、10歳を越えるまで一人で依頼を受けることは出来ません。それまでは、誰か大人に付き添ってもらってください」


「はい、分かりました」


「初めはアイアンクラスから始まり、シルバー、ゴールド、プラチナとランクが上がります。ザッカードさんは一番上のプラチナです」


「ししょー、凄いんですね!」


「まぁな、それほどでもあるぜ!」



ニシシ、と少し下品な笑い方をしながらガシガシとサリアナの頭を撫でる男がザッカードである。腕は立つが性格が少し残念である。



「サリアナ。依頼板を見に行くぞ」


「はい、ししょー」


「うーん、これでいいかな?」



レベル7の狼型の魔獣の群れの討伐依頼を剥がし、受付に持っていく。


「え?この依頼を受けるんですが?サリアナちゃんも一緒にいくんですよね?危ないですよ」


「お姉さん、この依頼そんなに危ないんですか?」


「依頼のレベルは10段階あります。一番簡単なのは1レベル。逆に難しいのは10レベルです。ザッカードさんだけなら心配しないんですが…」


「別に心配要らないぜ?サリアナは多分シルバークラス位の討伐依頼ならこなせるぜ?」


「え?シルバー?」


会話を聞いていた他の冒険者が口を挟む。


「おい、ザッカード。こんな小さなお嬢ちゃんにむちゃ振りすんなよ」


「サリアナー」


「はーい」


「このパンチング魔道具、全力でぶん殴れ、許可する」



ギルドの隅に置いてあるパンチ力を測る魔道具を親指で指し示す。



「了解です。ししょー」



魔道具の前に立ち、右腕をグルグル回して構える。



「せいっ!!」



かけ声と同時に右ストレートを繰りだし、魔道具に打ち込む!


ズドン!!!


重い音が響いた直後、ピピピ!という音が鳴り、目盛りが示される。



「「シルバークラスの最上位レベル~?!」」



ポカンとするギャラリー。



「ほら?平気だろ?!俺が教えてんだからよ。行くぞサリアナ」


「はーい!」



とててて、と走り去っていく子供とザッカードを見送るギルド内の冒険者。



「スゲーな。規格外にも程がないか?あんなチッコイのにな!でも、ザッカードで大丈夫か?あいつ、色々残念な奴だろ?」


「うん?平気だろ、多分、おそらく、きっと」



***********************



「ししょー、投げますよ~!」



サリアナがよいしょっと魔獣の後ろ足を掴んでぶんまわし、ザッカードに投げつける。そして、高速移動しては捕まえ、投げる。


その投げつけられた魔獣をザッカードが切り捨てる。それを魔獣が居なくなるまで繰り返していく。



「ははっ、動かなくていいから楽だな、これ。サリアナー頑張れよ~。群れがすぐに見つかって良かったぜ」



そんなことを続けていると、いつの間にか魔獣が全滅していた。



「次はバラすぞ、こっちに来い。討伐証明になる魔石を取り出すぞ~」


「はーい!」


「このタイプの魔獣は、食えないから売れる部分だけ取る。その後、埋めるか、焼却な。牙と、ほら、これが滋養強壮にいい睾丸だ。いわゆるタ○タマな」


「ししょー、私は可愛い子供です。下品な下ネタはご法度です」


「これはただの事実で下ネタではありませーん。残念!」


「ししょーにデリカシーを求めます!」


「そんなもの、焼いて埋めて捨てましたー」


「ぶー!」


「ほらほら、袋に入れろよ」


「…触るの絶対にイヤです」




そんなこんなでギルドに帰ってきた2人は、報酬を貰った。かなりの金額で、貰った金額は50万ガロン。すっと、ザッカードはサリアナに1万ガロンを分け与える。



「わぁ!ありがとうございます。ししょー!」



キャッキャッ喜んでいるサリアナを見ていた冒険者のマークが口を出す。


「え?いくらなんでもあげなさ過ぎじゃね?そんなに役にたたなかったの?」


「ちゃんと、ししょーに魔獣を投げつけました!」


「え?それも何かおかしいけど、クエストに貢献したんだよな?」


「何かな?マーク君。俺達の事に口を挟まないでもらおうか?」


「え?マジで言ってるのかな?この人。おーい、誰かギルドのお偉いさん呼んできて~」


「待て待て!呼ぶな、呼ぶな」



結局呼ばれて奥の部屋に連行された2人。



「ふぅ~、ザッカード君。なに?君、他人の報酬を横領してんの?」



不貞腐れて、椅子に半分ずっこけた状態で座るザッカードとキチンとお行儀良く座るサリアナに視線を行ったり来たりしながら話しかけてくるギルマス。



「ちげーから。今回はギルド報酬はこいつにあげなくてもいい、て言われてるのに、逆にあげたくらいだし」


「本当です。今日は見学に連れてきてもらって迷惑をかけるから、報酬はそのまま全額ししょーで納めてください、て家の者に云われて来ました」



ギルマスがため息をつく。



「まぁ、お互いが納得してるなら、こちらが口を出すことじゃないけどね」


「大丈夫です。ししょーの心得その1。『ししょーのお金はししょーの物。しかし、ししょーの借金は弟子も払う』です」



冷たくなっていくギルマスの眼差し。



「あんた、弟子に何を教え込んでるの?」


「サリアナ、心得その3だぞ?」


「はい、了解です。『ししょーに都合の悪いことはしゃべらない』です」


「うん、心の中で復唱。口に出して言わなくてもよし!」


「はい!」



更に冷える視線。



「本当に何を教えてんの?侯爵家に一筆書くか。他の冒険者を紹介しますって」


「余計な事をするなよ?いいお客様なんだからな!侯爵家。週に3日行くだけでいい額の給与貰えるし、護衛とサリアナにちょっと教えるのと、敵ほぼいないのに護衛するだけだし、ギルドの依頼も受けていいし、高位の貴族の家のくせに何か雰囲気緩いし、メイド可愛い子居るし!」


「サリアナちゃん?ザッカードの心得。全部教えてくれる?」


「はい、承知しました。

その1、ししょーの金はししょーの物。しかし、ししょーの借金は弟子も払うこと。

その2、どこかにお出かけしたら、ししょーにお土産を買ってくること。

その3、ししょーに都合の悪いことはしゃべらないこと。

その4、ししょーがヨボヨボになった時に独り身なら、面倒みること。

その5、ししょーが困ってたら、侯爵家の全権力で助けること。

以上です!」


「…これ、侯爵様、知ってるの?」


「これは、私がししょーから体術を習うときにした、2人の間のお約束です!お父様は知りません」


ギルマスの問いにキッパリ言い切るサリアナ。


「清々しいくらい、全力で一生、侯爵家にしがみつく気満々の心得だな。しかも、さりげなく寂しがりな心得入れやがって!」


「どっか出かけて一人だけお土産貰えなかったら、寂しいだろ?」


「こどもか!大体おまえいい金額を毎回貰ってるんだから、金を貯めておけば、頼らなくったって楽勝で暮らしていけるだろう?」


「ふむ!何故か酒を飲みに行くと財布が空っぽになってんだよな!不思議だな!」


「それは、酒場にいる全員に酒を奢りまくるからだ!!」


「いや~、つい酒を飲むと楽しくてな~、止まんねーな~」


「サリアナちゃん、こいつ解雇しな、解雇。他のマトモな冒険者を紹介してあげるからね」


「ありがとうございます。でも、大丈夫です。侍女長が『酒、女、ギャンブルの3つにダメな男はダメですよ』と言ってたけど、ししょーはお酒の1つだけだから平気です。うちの侍女のサラにモジモジして話しかけられないくらいヘタレですから。ダメな子を見放したら、女が廃ります!」


「だ~!!!心得その3!」



グッと拳を握りしめるサリアナに、叫ぶザッカード。



「うん、サリアナちゃん、将来大丈夫かな?ダメな男は、時には見捨てようね?今がその時じゃないかな?」


「大丈夫です。拾ったら責任持ちます!」


「犬、猫じゃないからね?これ、大人の人間よ?」


「大丈夫!女は度胸!!」


「ヨッ!サリアナ!男前!!」


「お前は黙っとれ!」



サリアナとザッカードとギルマスの話し合い(別名:突っ込み漫才)はまだまだ続く。




そうして、腕はたつけどちょっと残念なザッカードとサリアナのお付き合いは一生続きます。

ちょっと残念な男の人、好きだわ~。

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― 新着の感想 ―
[一言] サリアナが結婚出来ないのはこのダメ師匠のせいだと思う。 サリアナ、結婚をしたいのなら師匠は捨てましょう。
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