引きこもりの王弟エルフ&暴言の皇子様
皆様、寒暖の差が激しいので、体調お気をつけくださいね。ぐぅ、花粉症で目が霞む!
「ナルエル、お前には多国共同開催の懇親会に参加してもら「嫌です」」
「拒否権はない。出てもらうぞ」
「嫌です。必要ありません。いくら兄上のお言葉でも行かないったら行きません」
「いい加減にしないか!研究塔の一室に引きこもったきり、社交には出てこないではないか」
喧嘩をしているのは、サミング国国王と『引きこもりの王弟エルフ』ナルエルです。
「はぁ~、お前、いい年どころの話では無いのだぞ。300歳越えてるんだぞ。自分で婚約者を見つけられないなら、こういう場に行ってもらう」
ムッツリした顔で黙りこむナルエルに言葉を重ねる国王。
「皆、勝手に期待して、勝手に失望して、私のことを馬鹿にするじゃないか…」
ポツン、と言葉を漏らすナルエル。
(王族なのに、何であんな不細工な容姿?)
(人間の血って怖いわね。あんな顔で王族に産まれたら、私だったら生きてられないわ!)
過去の想い出が甦る。
「お前が言いたいのはよく分かる。この国は顔の美醜の基準が他国よりも厳しい。今までお前が嫌な思いをしてきたのも知っている。だが、他国はうちとは違う。ナルエル、お前は他国では普通なんだ!」
「兄上は良いですよ。両親のいいとこ取りで、輝く金髪に紺碧の瞳、神が造り上げたと言われるほどの完璧な顔じゃありませんか!」
「そ、そうか?」
照れる兄を横目に見て恨めしげに語る。
「それに比べて私は、側妃の人間の母と同じ灰色の瞳、母方の祖母と同じ茶髪、顔の作りは凡庸そのもの。あまりにも特徴のない顔だから一度目を離したら分からなくなるそうですよ」
ナルエルの話に、国王が顔を引きつらせる。
「そんなこと誰に言われたんだ!失礼にも程があるだろう?!」
「これでもマシな方の悪口ですよ。とにかく私は行きませんから。兄上には子供もいるし、後継者は問題無いのですから、私が無理に結婚する必要も無いでしょう」
「確かに必要はない。だけど、後継者問題を気にする必要はないという事は、お前は誰でも好きな女性を選べるという事だ。この国で迎えても良し。お前が婿入りしても良し。俺はお前に幸せになって欲しい」
「……無理ですよ。私はコンプレックスの塊です。こんな私を誰が好きになってくれるんですか?」
情けない顔をした弟を見た国王が、優しく頭を撫で笑いながら言う。
「きっと大丈夫。今回の懇親会はどうやら癖のある面白そうな出席者が多いようだ。もし、伴侶を見つけられなくても、友人は見つけられるかもしれないぞ。今回は私の顔を立てて出席してくれないか?」
「その言い方はズルいですね…」
「後は、引きこもってばかりで女性慣れしていないお前のためにこれを用意させた!」
ズルズルと重たそうなカバンを引きずり持ってくると、パカンと開け、中にたくさん詰めてある本の中からいくつか取り出す。
『貴方に夢中!人族にモテる10の法則!』
『お兄ちゃん、大好き!獣人っ子を貴方の○○にする手練手管』
『肉食女子を落とす草食男子のあざとい仕掛け』
『Mへの階段』
『夜のあっはん、うっふん、アレコレ指南』等々…
「な、なな何ですかこれ?!」
「うむ、実はな…」
王は手を組んで目を瞑り、語り始めた。
「お前が女性にモテるにはどうしたらいいか、王妃、宰相、大臣、近衛、文官、侍女、衛兵、お前の同僚の魔術師など王宮中に片っ端から聞いて相談した!議会でも超相談した」
「ふへぇ?!王宮中に聞いたんですか!どおりでここのところ、やたらと生温い視線を感じると思った!!」
「そして、皆がそれぞれ推しの本をくれたのだ。少し趣が違うものが有る気もするが気にするな。特にオススメは王妃の『ワンコ属性の貴方は愛され体質!』。さぁ!これを読んで、お前も恋愛マスターだ!」
「王宮、居たたまれねぇ~!!!」
(※ナルエルが引きこもっている研究棟は王宮の一角にあります)
『引きこもりの王弟エルフ』出席決定!
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ここはアルタイル王国ベガルータ皇子の部屋。側近と皇子がお話しています。
「ベガルータ皇子、懇親会への出発準備は整っております。いつでも出れますよ」
「あ、あぁ、分かった」
(久しぶりにサリアナ嬢に会えるな)
ウキウキしている皇子様を見て、側近が冷たい目で釘をさす。
「お願いしますから、女性に暴言は吐かないで下さいね。またサリアナ嬢から教育的指導を受けますよ」
「分かっている!あれから、そんなことしていないだろう。今回は頑張るつもりなんだ」
「そうですか?この間の夜会で女性に『香水の瓶をひっくり返したのか?臭い』や『こんなに頭に生花を付けて虫来るぞ』などデリカシーの欠片も無いことを言ったのは記憶に新しいですが?」
「あれは本当に香水臭かったんだ!お前も嗅いだら分かる!鼻がもげるぞ。それに生花に本当に青虫が居たからな!」
「例え、鼻がもげようが、身体中虫にたかられようが、我慢をして女性に恥をかかせないで下さいよ。その方達、泣いて帰りましたからね。本当に臭かったですけどね。花も付け過ぎでマリモみたいでしたけどね。それに何を頑張るんですか?」
ポッと頬を赤くして、皇子がモジモジしながら言う。
「いや、だから私の伴侶としてサリアナ嬢をだな…ゴニョゴニョ」
(乙女か!アンタは乙女か!絶対無理そう。前回だって皇子がアプローチしてたのに、サリアナ嬢には気づかれずにスルーされてたからな。『暴言の皇子様』なんて言われてるくせに、変なところで押しが弱いんだから…)
側近がこんな失礼な事を考えているとは思わない皇子は、決意を新たにサリアナにアプローチすることを心に誓った!
もう少しで『暴言の皇子様』も合流します。
読んでいただいてありがとうございます(^ー^)