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侯爵令嬢の婚約〈連載版〉  作者: 小鳥遊あかり
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婚約解消

内容は変わりませんが、短編シリーズより色々手直ししました。


お父様のセリフを少しだけマイルドにしてみました。後にまた修正を入れるかもしれません。


あぁ、そうだったのね…。


いつも不思議に思っていましたの。


あれだけ優しく私を扱い、綺麗だと囁きながらも、彼の瞳の奥に宿る冷たさに…。



『アーネスト様、愛していますわ』


『メリッサ、私もだ。君だけを愛してる。私が結婚しても側に居てくれ』



今、レストランの扉が少し開いている個室から漏れ聞こえてくる声は、私の婚約者のもの。


私は侯爵家の一人娘。彼は伯爵家の次男。領地経営で多額の借金を背負った伯爵家を支援しているのは我が侯爵家。


我が家の支援が無ければ彼の家は立ちゆかないため、私との婚約解消など言い出せないのでしょう。


だからこそ秘密の逢瀬なのは分かりますが、せめて私も連れてこられた事もあるこのレストランで、こんなことはしないでいただきたかったわ…。


私は手を握り締め、体を震わせながら何も言わずにその場を立ち去った…。



***********************



「お父様、私がアーネスト様との婚約を解消したら、伯爵家への支援は取りやめますか?」


「何を言っている。婚約解消などと言う話がなぜ出てくる?お前たちは嫌いあってるわけではないだろう」



さすが貴族的な割りきり方『好きあってる』と言わないところがポイントですわね。



「あそこの領地は優良な場所だ。3年前の災害が無ければ黒字経営だったろう。今、手を引けば援助した分は回収出来ずじまいだ。継続して援助をし、黒字になってから利息をつけて返済をしてもらうつもりだ」


「では、私が婚約解消をしてもあちらの領民が困ることは何もありませんわね」


「まぁな、それでなぜ解消したい?」



ふぅ、とため息をつき、今日あったことを話す。



「愛人がいるなど貴族では珍しいことではあるまい」



眉間にシワを寄せつつ、私を見つめる。



「私も高位貴族の一員ですので、そういった覚悟はございますわ。ですが、まだ結婚ではなく、婚約ですのよ。信頼関係を築くべきときではありませんの?彼は信頼を築く前に裏切っていたのですわよ?」



紅茶を一口飲んで潤し、カップを戻す。


すると、お父様がテーブルの上から茶器を片付けさせる。



「……それで、本音は?」



拳を叩き込む。パッカーン!といい音をたててテーブルが真っぷたつに割れた。メイドが、あ~あまたか、という顔をして遠い目をしている。



「ムカつくんですわ!!『結婚しても私の側に』ですって?オホホ、私を含めた3人でボードゲームでもするのかしら?人数多い方が楽しいですものね、考えただけで…あら?楽しい!」


「…お、落ち着け。こめかみに浮かんできてる血管が半端ないぞ。切れるぞ」


「私は落ち着いておりますわ。アーネスト様と女性の逢瀬の部屋に踏み込まなかったんですのよ?自分でもビックリ、良く耐えましたわ、私、グッジョブ!踏み込んだが最後、あのレストランは終わりでしたもの(物理的に)。あの店には罪はないですからね」


「そ、そうか」


「さて、お父様…。アーネスト様に女性がいたのをご存知でしたの?」



にこやかに貴族らしい微笑みを浮かべ、扇子を広げつつ問いかけるが、ミシミシと手の中の扇子が徐々に形を変えていく。



「…あぁ、奴は顔も能力もそこそこ。性格もそんなに癖がない。家柄も良く、年齢も釣り合っている。何より、ぶっ飛んだじゃじゃ馬娘のお前と婚約を受け入れた勇者だった。女付きだったが…」


「私のどこがぶっ飛んだじゃじゃ馬ですの?」



きょとんとした顔で問いかける間にも扇子が耐えきれずに砕けた。



「一番初めの5歳の時の婚約者を池に叩き落としたのは誰だ!次の10歳の時の婚約者は○玉をけりあげたろうが!その他諸々やらかしとるわ!」


「まぁ、嫌ですわお父様。5歳の時の残念なお子様は私の顔に蛙を投げ付けてきましたの。10歳の時は私の髪をいきなり切り落とされましたのよ?ヤられたらやり返す。倍返しは基本!受けて立たねば女が廃りますわ!」


「受けるな!女性はそんな受け方せん!」



お父様がこめかみを揉んでいますわね。頭が痛いのでしょうかね?寝不足?



「婚約は解消ですわね。話し合いに向かわなくては!お父様、すぐにお手紙を出してくださいな。ちょっと可愛らしくアーネスト様の顔を撫でてしまうかもしれませんが、大丈夫ですわよね?」


「やめてくれー、殴るなー。あぁ、また婚約解消。終りか?うちの侯爵家の本家筋の血は続かないのか?養子?養子を貰うしかないのか?」



彼女の後ろには破壊されたテーブル、扇子があり、メイドが片付けている。侯爵様は目を虚ろにしてブツブツ呟やいている。ついでにメイドも小さく呟いている。


(お嬢様、また腕をあげられたのですね。)


まさかの驚きの感想である。そんなカオスの中、彼女は叫ぶ。



「次ですわ。次!必ずマイダーリンを捜して幸せになってみせますわ!目指せ、スパダリゲットだぜ!ですわ」




容姿端麗、血筋はピカ一、だけどちょっと残念な侯爵令嬢の婚約者探しはここから始まる。

誤字脱字、感想、ポイント、参考になります。ありがとうございます( ̄▽ ̄)ゞ。


お父様、実はツンデレならぬツンツン設定です。

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