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第7話 興味があるものには拘りたい

「ね、行って大正解だったでしょ?」

「まぁ、そうだね」


 昼ご飯を食べ終わった私たちは、会話をしながらショッピングモール内を歩く。

 勝ち誇っているアズの姿はあまり腑に落ちないけど、行ってみて良かったのは事実だった。

 パンもコーヒーも美味しかったし、店員さんも親切だった。また来たいと思えるくらいに、良い店だったと思う。。

 ちなみに代金はアズの奢り。1500円という私の昼食にしては高い料金になったけど、30分の遅刻がチャラになると思えば、軽い方だ。


「あ、次は2階のブディックを見て回るんだけど……いい?」


 そんな事を考えてると、アズが話題を切り替えてきた。

 ……唐突だね。まあアズとの会話で、話題が急に変わるなんていつものことなんだけど。


「別にいいよ。じゃあ、私はその間、三階の本屋に行ってるから――」

「ちょーっと、待とうか」


 三階に昇ろうとエスカレーターに向かう、私の肩に手を乗せて止めてくる。

 何だろう? いつもと違った行動に思わずびっくりした。というのも、アズが服屋とかに行く時、私は別行動をするというのがルールだから。

 理由は単純明白で、私が服に興味が無い。だから他のところで時間を潰す。それを初めて出かけた時に、本人に言ったら不服そうに文句を言われたけど……今となっては妥協したのか、すっかり見慣れた光景となっていた。そのはずなのに。


「今日のショッピング、何のために愛ちゃんを誘ったと思ってるの!」

「何のためって……そりゃ、買い物をするためでしょ」

「それもあるけど、一番の目的は――可愛い愛ちゃんのための服を買うためなんだよ! その名も『愛ちゃんファッション向上計画』!!」

「はぁ……?」


 何なの、その安直かつセンスのない名前は。


「というわけで、今日に限ってはウチと一緒に来てもらうよ!」

「いやよ。面倒くさいし……って何で、変な笑みを浮かべて近づいてくるの!?」

「愛ちゃん、覚悟を決めようねぇ」

「う、嘘でしょ?」


 私の消え薄れそうな声に対し、アズは不敵な笑いを浮かべながら答えた。




「……うぅっ、ぐすっ。アズに汚された」

「ひ、人聞きの悪いこと言わないで~! ウチは愛ちゃんのためにやったんだよ!」


 やっと最後の服屋から出られた時には午後の四時になっていた。かれこれ二時間近く私はアズの着せ替え人形を演じていたらしい。

 今の私の手にはけっこうな数の服が入った紙袋が三つ。半年分の服は買った気がする。

 それにしても、こんなに服を買ったおかげで財布が痛い。アズが選んできた服が多すぎたというのもあるけど、その服の数々がどれも私の好みだったことも関係している。……私の趣味、どこで知ったんだろう。


「でも似合ってたから良いと思うよ! 今度から大学にもそれを着ていけば?」

「そうするよ」


 どこか恥ずかしさがこみ上げてきて、つい無愛想に答えてしまう私。

 でも、ちょっとだけ本音を言うと、今回のアズのおせっかいは嬉しかった。私だけだと良い服を選ぶなんて出来そうになかったから。……本人には絶対に伝えないけどね。


「いや~、色んな服着てる愛ちゃん可愛かったなぁ」

「……そういうのいいから」


 それにしても、どうしてアズは恥ずかしげもなく私のことを可愛いって言えるのだろう。……そんなんじゃないのに。こんな根暗で女の子らしくない私、どこが可愛いというのか。


「あ、そういやさ、愛ちゃんはこの後本屋に行くの?」

「そうする予定。……だけど、その前にちょっと違う場所に行くけど」

「りょ~かい!」


 アズからの返事を受けて、さっき地図で確認した目的地へそそくさと向かう。

 着いたのは2階にある大きめのインテリアショップ。といっても、机やベッドといった大きいものではなく、小物入れとか部屋を彩る程度の小さめのものを取り扱うお店だ。

 

「インテリアか~、いいじゃん! 愛ちゃんも女の子してるね!」

「……うるさいな」


 人懐っこそうな笑顔で告げてくるアズに、棘のある言い方で返す。流石の私も一欠片くらいの女子としての性はある。……まあ興味を持ち始めたきっかけは、アズの雑誌をこっそり借りた時に見つけた、『女子のインテリア特集』なんだけど。

 自分の部屋も極端に殺風景ではなかったけれど、やっぱり雑誌にあるような部屋の彩りは素直に羨ましく、自分もそうしたいと思ったのだった。


「へぇ~。けっこう種類多いんだね~」


 アズが言うように、商品棚には数え切れないほど似たような商品が並べられていた。

 な、悩むな……。どれも素晴らしいものばかりだし。


「えっ、でも、これ……。ご、ゴミ箱1つで1500円って。ちょっと高くない?」

「何よ。こういうおしゃれなのにお金を使えって言ったのアズでしょ」

「それはそうだけどさ……。何もゴミ箱なんかにお金をかけろとは言ってないよ!? こんなの百均でいくらでも売ってるんだし!」


 なんかとはなんだ、なんかとは。あと百均にあるようなゴミ箱と一緒にしないでほしい。大きさもデザインも、置いた時の部屋の統一感もまるで違う。材質だって十色だ。暖かみのある木のものと触感の良い布のもの、どちらも捨てがたい。

 だけど、二つ買うわけにはいかないし、選ぶ必要はどうしても出てきてしまう。


「うーん、よし」


 決めた。明るい木の色をしたゴミ箱にしよう。日当たりの良い私の部屋に合いそうだ。


「あ、終わった?」

「うん。でも次は収納ケースを見に行くから。で、その次は部屋に飾る観葉植物を――」

「愛ちゃんって普段は無気力っぽいのに、拘ると凄いよねぇ」


 それはそうかもしれない。何かにハマると、今日の私みたいに長い時間考え込んでしまう癖は昔からあった。特に小学生の時はひどくて、本を読んでいたらいつの間にか深夜……ということもあって、親から怒られた記憶がある。


「ま、拘ることは良いことだよね! あとさ……」

「ん? どうしたの、アズ」

「買うのは良いけどさ、持ち帰る時どうするの? 服もあるのに」

「えっ? ……あっ」


 はっ、となって、自身の手からぶら下がっている――服の入った紙袋に気づく。

 そういやそうだった。これがあったら、荷物が増えすぎて買えそうになかった。

 そう困り果てた時、得意げに笑みを浮かべるアズの姿が目に入ってきた。


「……アズ、一つだけ持っててくれない?」

「しょうがないなぁ! ウチに任せなさ~い!」


 しょうがない。普段は駄目駄目なのに、こういうときだけは気が利く友人だ。

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