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今から数百年以上前の話だ。
かつてこの国は邪悪な魔王が率いる魔族によって滅亡の危機に瀕していた。国土は焼かれ、多くの人命が失われた。
誰もが諦めかけたその時、一人の青年が立ち上がった。
彼は自らの仲間とともに魔王を討ち果たし、平和を取り戻した。偉大なる英雄王の誕生である。
しかし彼の功績はそれだけに留まらなかった。むしろ魔王を打倒したその後の活動こそが彼の真の功績であると讃える歴史家もいる。
彼は新たに国を興し、法を、田畑を、街を魔王侵攻以前の状態へと、否、それ以上に栄えさせた。これこそ英雄王が賢王とも呼ばれる所以である。
さらに英雄王は新たなる脅威に備えることも怠らなかった。魔王出現以降各地に突然出現するダンジョンと、そこから現れる魔物である。これらに対抗するためには旧態依然の軍隊では足が遅く、一般人では対抗できる力がなかった。
故に求められたのは危機に迅速に対応できる小回りの利く戦力である。
英雄王は仲間と共にパーティーを組み、魔物を倒し、ダンジョンに潜り、宝を持ち帰る者たちをこう名付けた。
冒険者、と。
それ以来冒険者はこの国の自由の象徴であり、冒険者のパーティーは絆の象徴であり続けた。
しかし、いかなるパーティーであったとしても永遠に続く結束は無い。その事実を受け入れているものは少なかった。
この作品は章ごとに登場人物の一人に焦点を当てる群像劇になっています。店側の人物は狂言回しに近い役割を担います。