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第六話 「水泳教室」

 「あ!そろそろ行こう。」

 壮太はそう言うと、立ち上がって袋を背負った。

 「どこいくの?」

 由奈が訊いた。

 「今日、休日だけど学校のプール開いてるって先生言ってたじゃん。それにほら、俺もみんなもプールセット持って来てるぞ。」

 壮太の言うとおり、みんな秘密基地に来る前に用意しておいたようだ。

 「由奈は行かないのか?」

 



ぼくらの

     ヒミツ基地

                         第六話 「水泳教室」


 「え・・・あたし、いいよ。行かなくて・・。」

 由奈は手を横に振りながら言った。

 「ん?・・・・まさかおまえ泳げないんだろ?!俺が教えてやるから来いって・・・。」

 壮太は、由奈の手を握り、強引にプールに連れて行こうとしている。

 「あれ?・・・でも由奈たしかおよげ・・・」

 何か言おうとしたせっちゃんに旬がそっと口を塞いだ。

 「何も言うな。」

 「にゃんどぇ?」

 口が塞がっているせいで、せっちゃんの滑舌が悪くなった。どうやら「なんで?」と聞きたかったらしい。

 「・・・・・このほうがおもしろい。」

 旬はいつもの無表情ポーカーフェイスでそう言った。




 「んじゃ、今から由奈のために水泳教室を開くぞ。もちろん、コーチは俺だ。」

 ピコーン

 壮太の言っていることもおかまいなしに、由奈はゲームボーイをやり始めた。

 「まずは、水に慣れることが基本だよな。・・・・つか、聞けよ!!」

 やっと壮太がツッコミを入れた。

 「あ、コンパンが進化しちゃう。BBBBbb・・・。」

 「マジで聞けよ!!」

 ボタンを連打する由奈に対し、だんだん壮太に苛立ちが見え始めた。

 「大体、何でおまえ水着じゃねぇんだよ!」

 「壮太が家にも寄らせてくれないで、ここに来たから水着持って来れなかったんじゃん。」

 「うっ・・・。そ、そういえば、もう夏なのになんでおまえ長袖、長ズボンなんだよ?!暑苦しいぞ!」

 壮太は言い返せないので話を切り替えることにした。

 「そいえば、由奈、最近ミニスカ履かないな。去年は季節関係なく冬でも履いてたのに。」

 ヤスも指摘した。

 「ねぇ、なんで?」

 せっちゃんも理由を知りたいようだ。

 「・・・・・そんなの決まってるじゃない。日焼けしないようによ!」

 由奈の発言の仕方は、苛立って叫んだようにも見えるが、強がっているようにも見えた。

 「日焼けしたくなかったらこんなとこに来なきゃいいじゃん・・・。」

 「だから、あんたがここに連れてきたんでしょ!」

 壮太は天然なのかわざとなのか、由奈を怒らせるような発言ばかりをしてくる。

 「てゆか、あたし泳げるし!!」

 「へ?」

 「そうだよ〜。由奈去年の水泳大会1位だったもん。」

 由奈の発言にせっちゃんがフォローを加えた。

 「マジ?」

 コクッ

 壮太は旬とヤスの方を振り返ると、二人ともうなずいた。

 「・・・・・。」

 プールには他の生徒たちの楽しそうな声が響いているのに、壮太たちのところにだけは、異様な静寂が漂っていた。


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