第四話 「野球帽」
「う〜〜〜ん・・・なんかいつもと違う・・・。」
由奈がせっちゃんを見て何か悩んでいる。
「ん?・・・どうした??」
そこへ壮太がやってきた。
「ああ、壮太。いや、ちょっとせっちゃんがいつもとどこかが違ってるように見えるんだけど、そのどこかが分からないのよ・・・。」
「はあ?」
壮太がじろじろとせっちゃんを見渡した。
「・・・・・・気のせいだろ。」
「そんなことないわよ。どっかが・・・どっかが違うのよ。」
二人はせっちゃんの服、顔、靴までじろじろと見るが悩んでばかりだ。
トコトコトコ・・・
そこへ今度は旬がやってきた。そして、せっちゃんの目の前まで来た。
「・・・・・キャップ。」
ぼくらの
ヒミツ基地
第四話 「野球帽」
「ああ!!!ホントだ!いつもならヘルメットなのに、今日は野球帽になってる!!」
「しかも逆に被ってる!!なんで?!!」
壮太も由奈も驚きが隠せないらしい。
チョイ チョイ
ヤスの手が基地の外から手招きをしている。壮太たちは、せっちゃん一人だけを残し、ヤスの方へ集まった。
「なんで、野球帽になってんだ?・・・ボソッ」
「それがさ〜・・・・かくかくしかじか・・・ボソッ」
ひそひそ話でせっちゃんには聞こえないようにしている。
「はあ?」
野球帽になった理由をヤスから聞いたがいまいち分からないようだ。
「だから〜、サトシがモンスターボール使うときに逆に被るじゃん。それにポケモンの新しい金と銀だっけ?あの主人公もだし、コナンもやってたとか言って昨日いきなり帽子買いに行かされて・・・ボソッ」
「つまり、キャラクターの影響ってことね・・・ボソッ」
由奈が呆れている。
「でもな〜、野球帽に気付くとスッゲェ違和感あるよな〜・・・ボソッ」
壮太がチラッとせっちゃんを見る。
「だろ〜。それに俺的にはヘルメットの方がかわいいと思うんだよ!」
「・・・・・・・。」
みんなちょっと引いている。
「ブラコ・・・」
バッ
「つ、つまりはヘルメットをまた被ってもらえるようにすればいいのよね!」
旬が何か言おうとしたが、由奈が手で口を慌てて塞いだ。
「キャラクターで野球帽を被るようになったんだから、ヘルメットを被ったキャラクターを見せればいいはず!!」
由奈は意外とノリノリだ。
「ってことで!ヘルメットと言えばロックマンのメットールでしょう!!」
イラストをせっちゃんに見せながら言った。
「ザコキャラじゃん。」
ガビーーーン
せっちゃんの発言に由奈に衝撃が走り、落ち込んでしまった。せっちゃんには悪気はないのだろうが、由奈は相当ショックを受けてしまったらしい。
「イラスト自作までしてがんばったのに・・・」
「自作だったんだ。」
「メットールこんなにかわいいのに・・・うぅ・・・」
「メットール好きだったんだ。」
「ええい!それならデジモンのソラで・・・!!!」
いきなり由奈は立ち直り、叫んだ。
「ソラ、女じゃん。」
ガガガーーーーーン
今度は由奈の頭に大岩が落ちてきたような衝撃が走った。
「た、たしかにさぁ・・・ソラはおんなのこだけどさぁ・・・こうさぁ・・・なんかさぁ・・・」
崩れるように倒れながら、由奈はぶつくさと何か呟いている。
「そうだ!野球帽よりヘルメットの方が頑丈で安全性の高いところを見せれば!!」
壮太が提案した。
「・・・・・・。」
「いいか、仙人?もしもだ!もしも金属バットが空から降ってきたとしたら・・・」
絶対にないと思う。とみんな思いながらも壮太の話を聞いている。
「ヘルメットだと・・・」
ガンッ
そう言うと、壮太は地べたに置いたヘルメットに金属バットを自分の肩の位置から落とした。
「ほら、このとおり!傷一つないし、凹んでもいない。野球帽だとどうなると思う?」
ビシッ
壮太はせっちゃんに向かって指差した。
「さあ?」
せっちゃんは首をかしげている。
「では、実験してみよう!」
壮太はせっちゃんの帽子を取り上げ、地べたに置いた。
ベシャッ
丸みを帯びていた野球帽は、見事にも凹み、ある意味悲惨にも見えた。
「・・・・・ぅ・うぅ・・・うわああぁぁぁん!!壮太が壊したあああぁぁぁ!!!!」
せっちゃんが泣き始めてしまった。
「え、いや、ちょっと待って!凹んだだけで元に戻せるから!!」
いきなりのせっちゃんの号泣に壮太はあたふたしながら帽子を拾い、凹みを直した。
「結局、まだ野球帽のままだね・・・せっちゃん。」
せっちゃんは野球帽が気に入ったみたいだ。
「・・・・・。」
トコトコトコ・・・
せっちゃんの方へ旬が歩いていった。
「・・・・・・・・・ボソッ」
何かをせっちゃんに話しているようだが、壮太たちのところまでは聞こえなかった。
フルフルフル
なんだか涙が零れそうな顔をしてせっちゃんは首を横に振っている。
カポッ
「!!!」
せっちゃんが野球帽ではなく、ヘルメットを被った。
「旬、一体どんなマジック使ったんだよ!」
せっちゃんと旬のところへ、壮太たちは駆け寄ってきた。
「・・・・マッキー。」
「そっちのマジックじゃなくて魔法の方だと思うよ。」
由奈が助言した。
「・・・ヘルメットの安全性。」
「それなら壮太もしたじゃない。」
「あと・・・」
「あと?」
「今年の夏に起こること。」
旬とせっちゃん以外みんな頭がちんぷんかんぷんだ。
でも、せっちゃんがヘルメットを被ってくれるようになったのでみんな一安心した。
そして、今年が一九九九年で『恐怖の大王』が来ることをみんな思い出したのは、もっと後のことだった。