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幸せにありがとう  作者: 小雪杏
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第一章 お買い物2


「なあスフレ、俺とお前の関係ってどう説明するんだ?」


 ふとした疑問。恐らく誰か知り合いがこの家に上がり込んだ時、真っ先に疑われるだろう。そのため、ある程度説明が付くような筋合わせをしておきたい。


「あらかじめ主の血縁関係や家族構成などは、天界からの資料として配布されています。となると、妹や姉、もしくは幼馴染といったものに分類されることになりますね」


 妹や姉と言ってしまえば家族や友人にすぐにバレてしまう。


「となると、幼馴染か……中高大と長続きしてる友達も少ないし大丈夫か……」


 問題は容姿の説明だ。


「なあ、その髪と目はどうにかできないのか?」


 スフレはブンブンと首を横に振り、理由を説明する。


「無理ですね。見習いということも一つの理由なのですが、天使が人を騙すような行為を行ってはならないと、天界で決められております」


 あぁぁーと、頭を掻きむしり言い訳を考える。


「じゃあ、外国人の知り合いとかでいいいや」


 スフレを納得させ、誰に関係を聞かれても良いように筋を合わせる。


「それじゃ、外国人って訳だから人見知りで日本語が良くわからないってのでいいか?」

「はい、構いません。でしたら人前では内気な少女を演じた方がよろしいでしょうかね」


「そんなこと出来るのか?」

「はい、それくらいの事でしたら問題ございません」


 たくましく頷き笑顔で返すスフレに一つ提案を入れる。


「なあ、スフレ、お前ってもしかしなくても料理とか出来たりしないか?」


 そう聞くとスフレは腰に手を当て自慢げに。


「ええ、もしかしなくても出来ちゃいますよ!」


 おぉーと、感心する。


「じゃあ、早速今日頼めるか?」

「かまいませんよ! じゃー早速行きましょう!」

「え? 行くって何処に?」

「もちろん買い出しにですよ! どうせ、ろくに自炊もしてないから食材も調理器具もないんでしょろくに」


 全くその通りである。自炊すると、決めたものの大学やバイトの関係で時間がなくいつも適当にコンビニなどで済ませていた。


 スフレの煽りを聞いていると疑問が浮かんだ。


「そういった自炊や食の好みのこととかも、天界からの資料にあるのか?」

「いいえ、資料には主の事については詳しく記載されていません。そういった事を見つけ主を手助けするのもこの修行の一つの項目なんですよ! ああ、自炊していないことに気づいたのは、キッチンを覗かせて貰ったからですよ」


「へぇー、見ただけで分かるのか?」

「ええ、もちろん!」


 ニコリと微笑むスフレを見て料理のことは――任せ早速二人で買い出しに出かけた。




 再び先のデパートの今度は食品売り場にやって来た。

 休日のためかそれなりに人は多く、家族連れなども多く、遊園地などのテーマパークを予感させるような賑わいようであった。


「カートは俺が持つよ」

「あ、ありがとう……ございます」


 カートを引き、天使の導きに従う。


「そう言えば、キッチンを覗かせていただいた時に、包丁とまな板が無い事は確認させていただきましたが、お鍋やフライパンなどは……持ってます?」


「ない」


「れ、レードルやフライ返しなども……?」


「ない」


「しょ、しょっきは……」


「ない」


「そ、それなら、お、お箸なんかも?」


「ああ、それならあるぞ……一つだけだが」



「……こ、この際ですから全部まとめて買いましょうか……」


 空白の間に、少しため息のようなものが聞こえたような気がするが気にしないでおこう。




「それじゃぁ、まずは調理器具から見ていきましょうか……」


 ため息、不安混じりな顔を覗かすスフレに、了解の頷きを入れ、後についていく。


 確かに俺は、スフレに料理が出来ないと言った。まぁ、正しくは〝やらない〟なのだが。ただ、どうしてやらないのかと言うと、今のバイト先が飲食であることが深くかかわっていると自分なり思う。なんていうのだろう、バイトでやってるし良いかなと思いつい、家ではコンビニ弁当でもいいかなって思ってしまう。ま、ただ面倒なだけなのだが……。


 ついでに言うと、バイト先はこのデパートにある。店の前を通りかかると、つい心拍が上がってしまう。これは、みんなに共通しているのだろうか……。


 ま、そんなことはおいといて。独り言を連ねているうちに、調理器具の売り場に付いたようだ。


「ん~、どれがいいのかな……」


 フライパンと鍋を両方見つめるスフレ。


「今日は何がいいですか?」


 多分献立


「んー。そうだなぁ、今日は特に暑かったし涼しいものが良いな……そうめんは夜には合わないか…………冷製パスタ……とか?」

「へー、料理をやらない割には意外に良いチョイスですね」


 なにやら関心しているようだ。料理を〝やらない〟と言うのは間違っていないのだが……ばかにされたような気分だ……。 


「じゃあ、夜ご飯は冷製パスタで決まりですね! 嫌いな食べものや苦手なモノってありますか?」


 気遣いを入れてくるあたり情のやさしさを感じる。


「いや、特にないが強いてあげるとするなら……バナナと春菊、山椒辺りかな」

「なんか……似通がないですね」

「そんなもんだろ、バナナに限っては離乳の時から食べれなかったみたいだし」

「葉はともかく、山椒やバナナと言った、調味料や果物になると結構幅が狭まりそうですね……」


「七味とかならへーきだが、山椒だけの調味は苦手かな」


 どうでもよくない話をしつつ、スフレが鍋とフライパンをカートに入れていく。どっちも赤色がメインだが気にしない。


「次は包丁ですね」

「牛刀か三徳とペティで十分だろ、出刃は使う機会なさそうだし」


 独り言のように呟いていると、スフレが何かを見つけたのか歓喜の声を上げた。


「何ですかこれ!? とぉ、ともっ、智樹さん見て下さい、これ!」


 何やら呂律が回っていない。


「これ!」

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