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幸せにありがとう  作者: 小雪杏
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第一章 天使のスフレちゃん


 狭いアパートの一室に食卓テーブルを挟んで二人の男女が話し合っていた……いや、女のほうは人と言っていいのだろうか。ま、そんなことはおいといて


「では、はじめは修行のことから説明いたしましょう」


 スフレは、何処から持ってきたのか分からない家庭教師? みたく赤渕のメガネと指示棒を身に着け説明をはじめた。


「修行というものは、一人前の天使になるための過程の一つです。最近の流行りとして人間界に降り、主を支えつつ天界から送られてくる課題や、日々の日常の中に起こる困難などを乗り越え、天使としても人としてもバランスのよい人材を作り上げるのが目的です」


 話の中にいくつか疑問が生じ質問を言う。


「はい! 質問。流行りってことは、他の場所でも修行をするのか?」

 

 スフレはその質問にうなずき。


「はい、原則修行を終えるまで天界に帰ることは許されていません。ですが、修行を行う場所は任意で決められるようになっております。……候補の一例をあげましょうか。今、私がいるこの人間界のほかに、エルフの創造主マキナ・トロキスの暮らすヘスティー・ロロフ、ケットシーの暮らすファジィ・ダルテなどがあります」


 途中まで、なんとなく理解はできたが後半はさっぱりだ。


 ふーん、と感心する素振りを見せ次の質問をする。


「天界からの課題ってのは、具体的にどういったものなんだ?」

「そうですね、多くは修行の趣旨でもある、主を導く、救う、などといったものが多いでしょうかね。他には、魔法の習得や技術向上なんかもあります」


 魔法……? 

 

 さっきのあれか、どう見てもあれは破壊活動だろ。

 他にどういった魔法が存在するのかは知らないが、あれの技術や威力を磨くのだけは、勘弁してもらいたい。


「じゃあ、最後に。天使としても人としても良い人材を揃えるためって、お前ら何かと敵対してんのか?」


 あぁ……と、顔を引きつらせてスフレは目を逸らし。


「えぇっと……天界と魔界のどちらがより優れているかを競い合うことになった結果、他種族の視点から評価してもらおうと……どこかの偉いお方がお決めになさって……それで、今まで境界線のなかった天界と魔界の間に大きな門が建てられ関係がギスギスしている状態です……」


 なんだか聞いていて切なくなってきた。親の転勤で転校する子供の気分といったところか。


 悲しそうにうつむくスフレを見て、気になったことを一つ試してみる。


「そう言ったら、悪魔の説明の時に、稀に反する者がーとか言ってなかったか? あれって具体的にどういったものなんだ?」


 悪魔の話になると急に落ち込むスフレに更なる探りを入れる。


「悪魔っていうのは、基本的に一人っ子なのですが、稀に双子として生まれてくることがあるんです。理由の解明は、されておりませんが……双子の悪魔には、他の悪魔にはないものを持っているとされており、周からは異物扱いされる子が多いようです……」


この探りはあたりだったようだ。


「私の親友がその立場に置かれていて、分裂される前に通っていた学園では、どちらの種族からも無視され、いない存在ものと扱われていて……いつも人気のない校舎の隅でお弁当を食べていました。」


 ぐすん、と鼻をすすり目に涙をためたスフレは続けて。


「分離されてからまだ、一度もあっていないのですごく心配です……」


 もう、十分だ。俺は、スフレの頭を撫で落ち着かせる。


「なんていうか、お前って優しいやつなんだな!」


 そう言った俺をきょとんと見つめ泣いている。


「だって、お前は校舎の隅で一人寂しくお弁当を食べるやつに、友達になろうって手を差し伸べたんだろ? それって、スゲーことじゃん!」


 泣き虫な天使を見て、天使とはこういったものなんだとひとまずの理解を深めた。




 午前二時――。壁にかけてある時計を確認する。


「そろそろ眠いな……」と、体を伸ばしながら言うとスフレが涙を拭い、ひょいっと立ち上がってベッドの前に歩いていくと。


 手をかざし――。


「リメイク」と、小さな声で呟いた――。

 すると、みるみるうちに剥がれたシーツや、丸められた布団が綺麗に整えられた。


 俺はその動きに感激と感心の声を上げた。


「うおおぉぉぉぉ、すげえぇぇ!」


 先ほど見せつけられたものと違いこれは、俺が思い描いていた魔法そのものだった。


「それでは、お休みなさいませ」


 深々と頭を下げるスフレの目にはまだ、涙が残っている。ちと、やりすぎたかな。

 俺が寝ようとベッドに入ろうとすると、茫然と立ちすくんでいるスフレと目が合った。


「お前は、寝ないのか?」

「今日は一人でいいです、また明日ご一緒させてくださいませ」

 

 ニコリと微笑む目には――。


 そう言い残すとスフレは転移魔法をつかった。

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