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幸せにありがとう  作者: 小雪杏
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第二章 ビーチ再び!


「我が名はスフレ・ヘカンツェル、天使の見習い一の魔法の遣い手として天界第一学園を主席で卒つる者」

「いきなりなに言ってんだあのバカ!」


 吐き気に耐え、地面に突っ伏してしている俺を見捨て、スフレは海に向かってぶつぶつとつぶやいている。


「余りに強大であるが故、地に這い蹲る事しか出来ない其方よ、汝、終焉を見定める覚悟はあるか?」

「間違えてるもんにいろいろややこしいもん吹っ掛けんなよ! 大体、お前、天使じゃなくて堕天――」

「『エクスプロー――』」

「やらせねぇよ!」

「へにゃ」


 いきなり訳の分からないことをやりだしたスフレのおでこに、俺のはじいた貝殻がヒットする。


「い、いきなりなにするのよ! 痛いじゃない!」

「いきなりはこっちの台詞だ! お前はまたこの前のアレみたいに、この綺麗な景色を魔法でぶち壊す気か!」


 と、この前の残骸であろうボロボロになった島を指さして言う。

 あの悪夢を忘れそうな頃合いというのにまた、スフレに連れられてやってきた。 

 しかも、この前の残骸は残ったまま。 


 いつまでもあんなのが残っていたらこの、綺麗な景色は台無しだ。早急にどうにかしてもらいたい。

 先ほどのようにスフレを叱ってもらおうとシュゼを探し辺りを見回す。――と。


「どっわああああああぁぁあああ、な、なんだそいつ」


 驚きのあまり声帯が普段と違った動きをしたためか、明らかに変な声がでた。

 明らかに先の原因であろうシュゼは、驚いて肩をすくめ体をよじり怯えている。

 シュゼの反応を見て、少し心を落ち着かせてから改めて問う。


「な、なあシュゼ……そいつは一体なんだ?」


 シュゼとスフレは俺の挙動に疑問を抱いている。

 そう思われるのは当然だ。今の俺は、脳髄を舐められているような恐怖を感じているからだ。背筋が凍るなんて簡単な表現では済ませられないほどの強烈な恐怖だ。


「マロンがどかしたの?」


 スフレが言った言葉には聞き覚えがある。シュゼと出会ったとき一緒に自己紹介をされた使い魔の名前だ。

 ――だが、その様子は向こうで見たまん丸くて愛らしい容姿ではない。その姿はまさに――。


 ――ドラゴンだ。


 丸く小さかった体系は、鋭い突起と赤黒く硬い鱗に覆われ。四本脚に背中から大きな翼を生やし、クルリと丸く愛くるしかった目は狂気にも似た鋭い視線を向けていた。


 鋭い棘を生やした太く長い尾は、主を守るかの如くシュゼを覆い包み外敵からの接触の一切を断ち切っていた。


 ドラゴンだ……ゲームや漫画の創造でしかない架空の生物が目の前に現れたことと、余りにもの恐怖とで顔を引き攣らせて笑う事しか出来ない。


 恐怖で体が縛られているとスフレがドラゴンに近寄り頭を撫でて落ち着かせていた。


「だ、だいじょうぶなのか……触っても?」

「ええ、この子は人懐っこいですからね。それに、まだ子供ですし」


 スフレの行動から一瞬、恐怖から救われたものの抜けた恐怖を埋める感情はやって来ない。それでもなんとか記憶を辿り状況を整理する。


「は……? 子供? そんなにでかいのに?」


 デカいのなんの、スクールバス一台分はありそうな大きさだ。


「はい。ドラゴンの寿命は数千年から数万年とされており、一族で大切に受け繋いでいくものなのですが……この前も言った……けど…………シュゼは双子の悪魔でして……普通であれば、今まで大切に受け繋がれてきたドラゴンを使い魔として契約するのですが……シュゼは妹に当たるので……一族のドラゴンは姉の方に引き渡されることとなり、新しく契約させられたのがこの子なのです」


 ぐすりと、可愛い顔を涙で濡らしたスフレをあやすように頭を撫でているシュゼを見てまた一つ疑問が浮かんだ。


 (双子か……シュゼがこんなだから、お姉さんの方も似た感じかな? いや、もしくはその逆ってのも考えられるな)


 そんな、くだらない事を考えているとふと、違和感に気が付いた。


「なあ、スフレお前のその恰好は一体なんだ?」とぼ

「へ? これ? 水着」


 へ? と、惚けるスフレにまたも文句を言う。


「いつ、何処で、誰の金で買った?」


 段々と声色を叱るから怒るに変えていくとスフレは、力なしに座り込みガタガタと震え始め、口を開き始めた。


「えぇ……と…………わ、私のお金で……つ、通販で……」

「嘘コケ、お前バイトもしなきゃ小遣いもやってねぇだろ! どうせまた、俺の金を使って勝手に買い物したんだろ! この前みたいに天界からの仕送りだとか言って誤魔化してただろ」

「うぅぅ~こ、今回はみんなの分も買ったから~そ、それに天界からの仕送りは本当なんだから! わ、私だってちゃんと勉強したいんです~」


 こいつ全然反省してやがらねぇ。例の買っておいたのであろう俺とシュゼの分の水着をひらひらと差し出し、必死に抗議をするスフレ。


 天界からの仕送りというのは本当の事なのだが、あの量はやり過ぎだ。スフレの実家から届いた仕送りはほとんどが魔法の書物や道具と言ったもので、内容だけ見れば特に問題もなかったのだが、本当に問題なのはその量と送料だった。

 魔法の書物などは部屋の全収納スペースに入りきらない程の量で、今も部屋の隅や床に山積みになっている。


 そして、更なる問題は送料だ。天界からの輸送料が半端なく高いのだ。

まあ、無理もない荷物は次元を超えてやってくるのだから。


 などと、スフレに対してしかるべき事は山ほどあるが、到底ここでは埒が明かない。

 そんなことを言い訳に、スフレを開放し、折角なのであいつの買った水着を着て遊ぶこととなった。


   




 青い空、白い砂浜、寄せて返す波、眩しい太陽、そして、海で遊ぶ水着姿のお嬢様二方。なぜ、今こうしているのか考えるもすぐに止めてしまう。平和であることには間違いないのだが、少し違うような気もする。


 砂浜にシートを引き、ビーチパラソルの影を利用し熱い日差しから逃れる。浅瀬で遊ぶお嬢様方の高い声に耳を傾けながら、疲れを癒す。


 ここまで聞けば、ただの海水浴に来た一行に過ぎないのだが、やはり、

 

 ――少し違う。


 良く見渡せば、俺の隣には、猛獣が吠えているような寝息を吐くバカでかいドラゴンが丸まり身を寄せているし。海で遊ぶお嬢様の内一人は、現実では、稀に見るような白い髪を生やしている。


 ――やはり、どこかおかしい。


 こんな状況では、ロクに現実逃避も出来ないと、どうでもいいようなことを考えていると、先ほどまで騒いでいた二人が静かになっているのに気が付き、少し状況を見届けることにした。

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