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正義

「はい」

「、、、、、、。」


トポポポポ

静は差し出された盡に目線をそらしたまま無言で酒を注ぐ。

沖田はその様子を見て軽く微笑むと

「相変わらずだね。」

「嫌なら来なきゃいいじゃないですか」

「来なかったら困るのは君でしょ?」

「あなたが余計なこと言うからでしょ?」

淡々と表情も変えず答える静に沖田はそのまま続けた。


「そんなに僕が嫌い?」

「嫌いです」

こともなげに即答する静に沖田は不敵に微笑みながら告げた。

「へぇー、じゃあ君は嫌いな人に抱かれるんだ?」

「ーっ!!それはあなたが勝手にっっ」

沖田の思ってもみない発言に静は顔を赤らめると沖田に向かって強く言い放つ。


「、、、、、。」

自分の言葉に表情を変え、自身をやっと見てくれた紫に沖田は笑みをこぼす。

「、、、、、。」

紫もそれがわかったのか赤い顔でそのまま沖田を睨みつけた。


「僕のどこが嫌い?」

「、、、そういうところ全部です」

紫は顔をそらすとそのまま告げた。


「へえー?」

(意地が悪くて、何を考えているのかわからない)

(そして、、、、)


「あなただけじゃない。私はあなた達、新選組も嫌いです。人を簡単に殺せるあなた達が、、嫌いです」

「、、、、、、。」

その言葉に思わず沖田の表情が曇る。



「この時代が殺さなきゃ殺される、そういう時代だってわかってます。」


『人を斬ることは僕にとって生きることだから』


「それが「生きること」だとしても、、、私は、、、嫌です」



「、、、、君の時代では大罪だから?」

「違います!それもあるけど、、、」

「、、、、、。」



『パパ、ママ行かないでぇええ』


「私の父と母は警察官でした」

「!」



ーーーーーーーーーーーー


「私の父と母は、警察、、、この時代でいうあなた達のように人々の安全を見守り、悪い人達を捕まえる仕事をしていました」

「!」

「父はよく言っていました」



〜回想〜


「ごしん、よう?」

「そう。この銃はもしもの時、家族、そして自分の身を守れるように身につけているものなんだ」

「?」

「今のお前にはまだ難しいかもしれないが、パパは出来ればこれは使いたくないと思っている」

「どうして?」


「たとえどんな悪いことをした人間だとしてもその人間の命を奪っていいはずがない。

それに、きっと生まれた時から悪い人なんていやしないと思うんだ。どこかで道を踏み外してしまった。だからパパはそんな人がやり直せる手助けをしてあげたいんだ」

「パパ、、、」


〜回想終了〜



「たとえ甘いと言われても、私にとって父は誇りで、憧れでした。」

「、、、、、、。」

「でもある大きなテロ事件が起きて、、、、」


バンバン!!!!



「父と母は犯人に殺されました」


『パパ!ママ!やだよおお!行かないでぇぇぇぇ』


「!」

「憎いと思った。犯人をこの手で殺してやりたいと思った。でも」

「、、、、、、。」

「パパの言葉を思い出したらそんなことできなかった。復讐に駆られたってパパとママは帰ってこない。喜んでなんてくれないって」


紫の瞳に熱とともに涙がたまり始める。

「、、、、、、。」


「でも許せない。殺人だけは。私からパパとママ、全てを奪った殺人だけは許せないんです!!」

「、、、、、、。」

「だからあなたがたが掲げる誠が正義だとしても、私は、、、私は、、、」


紫は溢れそうな涙をこらえ、掠れる声でたどたどしく呟く。


「嫌、、、、」


その時、

バッ

沖田は紫を自身に引き寄せるとそのまま強く抱き締めた。

「っ!?」

「、、、、、、。」

(何、、、、、?)


あまりのことに戸惑いを隠せない紫。


「っ、、、離して、、、、」

「、、、、、、。」

「離、、、、して」

ぎゅっ


しかし、力で適うはずもなく、紫を抱きしめる腕にはさらに力がこもる。


(嫌なはずなのに、、、、)

(大嫌いなはずなのに、、、)

(なんでこんなに溢れてくるんだろう、、、、)

(なんでこんなに、、、、)


「っ、ううっ」

「、、、、、。」

(温かいと思ってしまうんだろう、、、、)


「ーっ、うう、ああああ」

「、、、、、。」


堰き止めていた涙が、今まで溜めていた不安や思いが溢れ出した。



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


「スゥースゥー」

沖田の胸板に頬を寄せ、寝息を立てる紫。

その姿を苦笑を漏らしながら沖田が見つめていた。


「泣き疲れて、男の腕の中で眠るなんてどんだけ無防備なんだろうね。本当適う気がしないよ」

「ん、」

「あ、起きた?」

「ーっ!!!」

ガバッ

突然聞こえた声に慌てて紫は体を離す。


「ーっ」

(私、いつの間にか眠って、、、、)

「、、、、、。」


「さ、そろそろ僕も屯所に戻ろっかなー。いい加減に帰らないと土方さんあたりに怒られちゃうし」

「!」

「じゃあね」


「ーっ!沖田さんっ!」

「!?」

「その、、、ありがとう」

「!」

「着物、濡らしちゃって、、、、ごめんなさい」

「、、、、、。」


反応が返ってこない。

「?」

不思議に思いながら顔を上げると

「くくく」

「!?」

「あはは、参ったなぁ」


そこにはお腹を抱えて笑う沖田の姿があった。


「!」

「まさか君にお礼言われる日が来るなんて、、、くく」

「ちょっ、、、、」

(人がせっかく、、、、)


「はぁ、、、」

「?」

「僕は君の嫌いな人殺し、だよ?」

「!!!!」

「じゃね」


ピシャン

沖田はそう悪戯に微笑むとそのまま部屋を出ていった。


「あら、沖田はん。もうおかえりでっか?」

「うん」

「あ、また紫お見送りを、、、」

「ああ。いいって僕が言ってるから」

「せやけど、、、。それじゃ私がお見送りしますー」


別の遊女と玄関に向かう沖田の声を耳に

部屋の中でただ呆然と静は座り込んでいた。


「、、、、、、。」

(なんなのよ、本当、、、)

(意味がわからん、、、、)


『僕は君の嫌いな人殺しだよ?』

「、、、、、。」


(わかってるよ、、、、)


ぎゅっ


(そんなの)

(わかってる、、、、、、)



ーーーーーーーーー


屯所にて。


「♪♪」

左之「お前、今日はやけに上機嫌だな〜」

新八「なんかいいことでもあったのかー?」

「気持ちわりぃなーー」

新八「そういうてやんな、平助ー」


左之「だーーーー!!それにしてもお前俺の金使いすぎだ!!!」

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