未来人
「君、この時代の人間じゃないでしょ」
「ーっ!!!」
(なんで、、、、)
「な、何をおっしゃられているのか、、、」
「君が落としたあれ、どう見たってこの時代のものじゃない」
「!!!」
ぎゅっ
その言葉に手に汗が滲む。
「おバカな左之さんと新八さんは鏡かなんかだと思って気づいてなかったみたいだけどこの僕は騙せないよ」
「ーっ!」
(まずい、、、、)
「ねえ、君は何者?」
「、、、、、。」
しばしの沈黙が部屋の中を包み込む。
沖田は楽しそうに笑みを浮かべると答えを待っている。
もう逃げられない。
意を決したように紫は言葉をつむぎ始めた。
「それを知ってどうするつもりですか?土方さん、、、新撰組に伝えて私を捕縛しますか?」
「んー?それもいいけど。そんなことしなくても不躾なことをしたら僕がすぐ君を斬り殺すだけだから」
「ーっ」
簡単に出た「斬り殺す」という言葉に肝が冷える。
そしてそれと同時に睨みつけるような強い眼差しがおきたを捕らえた。
それを受け止め、ほくそ笑むと沖田は平然と尋ねた。
「君は僕が嫌い?」
「嫌いです」
「どうして?」
「、、、、。」
「、、、、。」
「どうしてあなたは、そう簡単に人が殺せるんですか?」
「じゃあ、なんで君は眠るの?ご飯を食べるの?息をするの?」
「ーっ!それは、生きるためです」
「それと一緒だよ。人を斬ることは僕らにとって生きることだ。斬らなければ生きていけない」
「!」
「ましてや僕は一番組組長。新撰組に仇なす者を斬るのが新撰組の刀である僕の仕事だ。たとえそれが仲間であってもね」
「ーっ!」
(新撰組の内部分裂。脱走した山南敬助を斬ったのも確か、、、、)
「なら私も今すぐ殺せばいいでしょ」
「別に君はまだ何もしてないでしょ?」
「何故私に関わってくるの?」
「うーん。なんで?君に興味を持ったからかな?」
「ーつ!」
「君こそなんでこんなところにいるの?」
「自分の時代に帰るための方法を探すためです」
「へえー。確かに色んな人が客としてくるここには情報が集まるだろうね。でも君、、」
「!」
ガバッ
そこまで言うと沖田は紫の肩を掴み、そのまま畳へと押し倒した。
「遊女の仕事かどんなものか本当にわかってる?」
ツゥー
沖田の息が首筋にかかる。
「ーっ!いや、離して!」
バッ
慌てて沖田を押し退ける紫。
「!」
「何するの!?」
ハァハァ
息を切らし、沖田を睨みつけるその瞳は赤く染まっている。
「何って、男が女に求めることなんて一つでしょ?」
「ーっ!?」
「その様子じゃ、やっぱりわかってなかったみたいだね」
「!」
「同衾」
「!!!」
その言葉に紫は思わず息を呑む。
「それも君たち遊女の仕事でしょ?」
(ーっ!そんなの、、、、)
遊女がどういうものなのか、わかってはいたが突然それを言葉として出され紫は戸惑いを隠せない。
「菊月さん、だっけ?彼女にまだ教わってないんだね。客に言われれば君達はそういうこともしなきゃいけなんだよ」
「、、、、、っ」
「だから僕が教えてあげるよ。左之さんや新八さんは知らないけど、そういうことを求めてる人が多いと思うよ?」
「、、、です」
「!」
「未来に、、帰るためです。それが仕事なら、私は、、その通りにするだけです」
「へえー。」
気丈なその姿にますます沖田は笑みを深めた。
そして
「ーっ」
再び紫を畳へと押し倒すと沖田は紫に組み敷くように覆いかぶさる。
「じゃあまず僕を満足させてみてよ」
「ーっ!なんでそうなるんですか!!」
「いいの?君の秘密を土方さん達に伝えて」
「ーっ!」
「君が言うことを聞くなら僕は君の秘密を誰にも話さない」
(なんて、、、、)
(なんて、、、、)
「卑怯な人、、、、」
「それが君のよく知る「沖田総司」でしょ?」