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来訪者

永倉の来店


(ただ、その姿を前に)


(私は動けなくなっていたー)


「何者だ?」

「ーっ」


(新選組、副長 土方歳三ー)

(この人が鬼の副長と言われたあのー)


「何者だと聞いている」

「あ、、、、、、」

「「紫」っすよ!その子が」

「!」

まるで助け舟を出すかのように、新八が遠くから声を上げる。


「「紫」、、、、、」

その名前を聞き、眉間のシワがさらに深く刻まれる。


「お前が総司が懇意にしているっていう遊女か」

言葉とは裏腹に向けられた声や目は苛立ちに似た感情を秘めている。


「とんだ物好きもいたもんだ。門から出て、こんな戦場に男を追いかけてくるなんざ」


「あ、あの、、、、、」

「帰れ」

「ーっ!」

ただはっきりとそう告げられ、言おうとした言葉は飲み込まれる。


「ここは女の来るような場所じゃない」

「、、、、、、、、、。」

「帰れ」

「は、い、、、、、、」


逆らえば殺されるー。

そんな感情が紫の全身を包んだ。


未練がましく、池田屋の中を覗くも

そこはただ血なまぐさい暗闇が広がるだけで、探す人の姿はなかったー。


(沖田さん、、、、、、、)



ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーー


それから数日がたったー。


「浅野屋でごぜえす」

「ああ。いらっしゃい」

「うちに上がったお客人がをお呼びでして」

「へえ、どちらでござんしょう」

「紫、、、というておりましたなー」

「!!!!」


「紫、、いうことは」

「へえ。新選組の方でございます」

「!!!!」


(沖田さんっ!!!!)

「紫!」

「へえ」

「はよ道中の支度して浅野屋に向かうんじゃ」

「はい!!おおきに」



(久しぶりに、沖田さんに)

(沖田さんに会える!)


「失礼致します」

(沖田さんっ)


シャッ


「よお!久しぶりだな」

「ーっ!?」


「永倉はん?」

「おお。俺のこと覚えてくれてたのかー!嬉しいなー!ははは」

「どうしてこちらに?」

「まあとりあえず一杯やろうや」

「へえ」


ーーーーーーーーー


「それにしても立派になったもんだ。あの嬢ちゃんが花魁とはねー」

「まだ天神ですが」

「いやはや。わからんもんだなー」

「、、、、、。」

「あ、そうだ。俺は総司に頼まれてきたんだ」

「頼まれて?」

「あいつ今ここに来れる状態じゃないからな」

「ーっ!そんなに酷いんですか?」

「?」

(しまった、、、、)

「血吐いたことか?ああ。それはまあ大丈夫そうだ」

(永倉新八は知っていたという記述も残っていた)

「、、、、、。」

「それよりも土方さんに止められてるって言うのがデカいだろうなー」

(土方さん、、、、)

(新選組鬼の副長と呼ばれた男、、、)


(間違いない)

(私が池田屋、そして屯所を訪れた時に現れた人、、、、)

(五稜郭戦争の遺品として残された写真と酷似していた)


(私が沖田さんを求めることは、土方歳三、新選組を敵に回すということなのだろうか)


「まあ最近新選組もあのあとから忙しくなってきてな。近藤さんも土方さんも一番組の力を借りたいんだろうよ」

「、、、へえ。そうどすか」

(そうだよね)

(池田屋事件を筆頭に幕府滅亡まで新選組は名を轟かせていくんだから)


「それで、俺が来たってわけだ」

「!」


「はは。そんな警戒すんなよ。別になにもしねえよ。」

「!」

「まあかなりのべっぴんだし?手を出したくないといえば嘘になるが」

「ーっ!」

「そんなことしようもんなら俺が総司にクビ落とされちまう」

「!」

「俺が来たのは独占欲の塊みたいなあいつが自分がいない間に紫ちゃんが別の野郎と関係持ってないか見てこいって頼まれたからだよ」

「、、、、、、。」

(あー所謂監視っていうやつね)


「まあ見た感じそんなことなさそうだな?」

「へえ、おかげさんで。沖田はんのおかげでわっちは今貧乏どす」

「ははは。そう言うなよ!そうかと思って落としにきてやったんだからさー」

「、、、、おおきに」

(本当優しくて面白い人)

(新選組って人斬り集団、恐いイメージしかなかったけど)

(こういう人がいたんだ、、、、)


「!今日は原田はんとはご一緒じゃございませんのんな?」

「ああ。左之か!」


「あいつは今三条大橋の警護に行ってる」

「!」

(三条大橋、、、、)

「最近京も物騒になってきたからな〜。新選組も警護や巡察やで慌ただしい。嬉しいこったがなー」

(三条制札事件、、、?)

(西暦1866年)

(慶応2年)

(そこまで歴史が進んでいるの?)


「そうどすか。それは大変どすなー」

「お!」

「?」

「その簪いいな。よく似合ってるわ」

「おおきに」

「総司にもらったんか?」

「!」


「やっぱりそうか。ははは。総司も隅におけん男だな。あんなに花町嫌がってたくせに。よほど紫ちゃんはあいつのお気に入りみたいだ」

「そんな、、、、」

(そんなこと、、、)

「あらしまへん」


「そうかぁ?総司からよく紫ちゃんの話を聞くけどな」

「えっ?」

(どんなこと、、、、)

「変なこと、おっしゃってはりません?」

「変なこと?うーん、」

「、、、、、。」

ドキドキ

「固いとか頑固だとかよく言ってる」

ピシ

「、、、、╬」

(どーせ私は頑固ですー)


「ははは。あいつは意地が悪いからな。まあ気にすんな」

「へえ。もう慣れもうした」

「ははは。でもな、言うてることは散々だが、あいつはいつも楽しそうに、凄い幸せそうにお前の話をしている」

「!」

「今までも女関係がなかったわけじゃない。まあ性格は難ありだが、顔も剣の腕もたつしなー」

「、、、、、。」

「羨ましいぐれえに女には不自由してなかった。特に年上の姉さんが多かったな」

「、、、、、。」

「でもあいつは笑顔で交わしてはいつも1人悲しげな顔をしてた。故郷が恋しいのかよくわかんねえがよ」

「!」

(沖田さんは確か、、、、)

(早くに両親を亡くして)

(そのあと、、、、)


「でもお前と出会ってあいつは変わった。満ち足りた顔をしてやがる。まあ会えねえ分最近はしょぼくれてやがるがな」

「!」

「本当に感謝してるんだぜ、お前には。総司が真に大切な人を見つけたってことだからな」

「ーっ!」

「まあ意地悪はあいつの愛情表現だと思ってやれよ」

「ーっ!はいっ!」


「お、おい!泣くなよ?」

「ううっ」


(沖田さんっ、、、)


『そんなに僕に会いたかったの?』


(私はあなたに会いたいですっ)

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