最終回 取り憑き婚活
いよいよ最終回です!
もうトラックが目の前にきた。避けられない。
「危ない! 」
僕は誰かに突き飛ばされた。
今猿社長が僕をかばい突き飛ばしたのだ。
「任せろ! 」
権蔵がトラックを手から出す不思議な緑の光の力で抑えるがスピードは落ちきらず、今猿社長にぶつかってしまった。
騒ぎを聞きつけ何人かが来た。
そしたらトラックはどこかに走り去ってしまった。
僕は慌てて救急車を呼んだ。
僕はずっと今猿社長のそばにいた。
病院に着いたら、今猿社長は集中治療室に運ばれた。
今猿コンサルティングに電話したら、如月さんが出た。今猿社長の両親と春男さんは出張先から向かうそうで遅くなるようだ。
「今から向かうわ! ありすには電話した? 」
如月さんは僕よりしっかりしてるな。
「笹野さんには如月さんから電話してもらえますか」
まだ状況が飲み込めず、笹野さんと話がしたくなくて如月さんに頼んだ。
「わかったわ」
そう言って如月さんは電話を切った。
20分ほどしてから如月さんと笹野さんが来た。
「誠さんの容態は? どうしてこうなったの? 」
如月さんが僕に必死に質問した。
「今猿社長は今は集中治療室にいて意識不明です。暴走したトラックから僕をかばって……」
笹野さんはなにかに勘づいたような顔をしていた。
如月さんは泣き叫んだ。
「誠~!」
僕はどうしようもなくただ呆然と立っていた。
「落ち着け!めぐ。まだ生きてる」
笹野さんは如月さんを励ましてる。
「私は明日から誠が抜ける分の仕事についてと誠のご両親へのヘリの手配と警察に連絡する……あと……」
笹野さんは淡々とやるべきことを如月さんに説明していた。
「笹野さんは悲しくないんですか? なんでこんな時まで冷静なんですか? 」
僕は行き場のない怒りを笹野さんにぶつけてしまった。
「泣き叫びどうにかなるならいくらでもやる。でも泣き叫んでもどうにもならない! 今の私にはこれぐらいしかできることはないんだ! 」
笹野さんも怒りで震えていた。
笹野さんも感情を表に出さないだけで悲しくて悔しいんだ。
僕が何も言えずにいると、笹野さんは帰ってしまっ た。僕は笹野さんを追いかけた。
誰もいない廊下で笹野さんを見つけた。
「誠……バカ……お前も大事な人なんだ……いなくなるなよ……」
笹野さんは1人廊下で静かに泣いていた。
「なあ。権蔵……」
僕は笹野さんに見つからないように権蔵に話しかけた。
「なんじゃ……空気を読んでずっと黙ってたのに」
権蔵も泣いていた。
「今猿社長を権蔵の力で回復できないのか?」
僕は必死に権蔵にしがみついた。(壁だが)
「やってみるか……権太の恋敵を助けるのは気が引けるが言ってる場合ではないようじゃな。ただできるかどうか分からんぞ」
権蔵が肩をくるくる回しながら言った。
「やってみてくれ! 」
僕は必死だった。恋敵とはいえ今猿社長にはさんざんお世話になった。ここで死なれて欲しくない
「ふんぬ! 」
権蔵はまた緑の光を手から出していた
その光は集中治療室に向かっている
~1時間後~
医者が集中治療室から出てきた。
「驚きました。もうだめかと思いましたが脅威の回復力を見せ、出血も止まってかすり傷程度になってます。医学的にはあり得ません。もうすぐ目を覚ますでしょう」
医者がこの上ないぐらい驚いている。
如月さんと笹野さんの手配したヘリで来た春男さんと今猿さんの家族が喜んでいた。
「はあはあ」
僕と権蔵は膨大な力を使い、疲れきっていた。
権蔵とは表裏一体だから、僕とたぶん笹野さんのパワーも使うらしい。
「普通の病棟に移します」
看護婦さんが今猿社長を個室に運んだ。
その後僕は警察に事情聴取された。
入れ替わりに笹野さんが病院に行くと今猿社長は目を覚ましたらしい。
僕は翌日から会社に行ったが大騒ぎだった。
今猿社長がいない分は既に笹野さんが代理を立て仕事に支障はなかったが。
笹野さんも今猿社長を看病するため1週間会社を休むらしい
僕は空っぽの笹野さんのディスクを眺めていた。
~1週間後~
部屋に仕事から帰ると、ポストに荷物が届いていた。
差出人不明で開けるとネクタイだった。手紙も入っていた。
~手紙の内容~
『権太くんお誕生日おめでとう。たぶん同窓会の件から私を避けているのだろうか?話をしたかったが聞いてくれそうにないので手紙を書いた。
私は誰とも付き合ってはいない。
権太くんは覚えてないかもしれないが同窓会と同じようなことが高校時代にあった
私はきっと権太くんを何度も傷つけているだろう。本当に申し訳ない。
しかしそれは権太くんを守るためだった。
昔は無理だったが今は強くなった。
同窓会の時に気づいたのだ。
胸が張り裂けそうだ。
同じ過ちをもうしたくない。
私はずっと初めてあった時から権太くんのことが好きだ。忘れたことなど1度もなかった。
どんなことがあっても私は権太くんを守るからそばにいて欲しい。
私は最初出会った時から権太くんのことが好きだ
小豆沢蔵子』
蔵子さん……手紙を読んで涙が出た。僕が今猿さんや不知火と話したことは蔵子さんは知らない。
僕は何をつまらないことで意地を張っていたのだろうか。
僕だって蔵子さんのことが好きだ!
今なら言える。蔵子さんに『結婚しよう』と…
僕は走って駅まで行き、今猿社長がいる病院まで向かった。
笹野さんは今猿社長の病室にいた。
「こんな時間にお見舞いですか? 」
今猿社長が僕がドアを開けた時に言った。
僕は今猿社長のベットの隣の椅子に座っている蔵子さんの手を引っ張った。
「きゃー! 何をするんですか?あなたは誰ですか? 」
蔵子さんは僕の手を振りほどいた。
よく見ると一週間前まで茶髪だった蔵子さんの髪の毛が真っ黒になっている。
「いきなりごめんなさい。蔵子さんではないんですか? 」
僕は蔵子さんは双子もしれないと思った。
「私が小豆沢蔵子ですけど……」
えっ?小豆沢蔵子って言った? いつもなら『私は笹野ありすだ!』って怒るのに?なんか話し方も違う
僕はまだ全部の記憶を思い出してなかったことに気づいた。そして一番大事な記憶を今思い出したのだ。それは僕が忘るの儀式で言ったことだ
『蔵子さんが僕を忘れないでほしい。もし蔵子さんの隣に大事な人がいた時は僕のことは全部忘れてほしい……』
今頃忘るの儀式の影響が出たのか。
これからは0からのスタートになるようだ……
「すまない。僕の友人だ。これはドッキリだよ」
今猿社長が僕をフォローしてくれた。
ありがたい。
「そうなんです。ごめんなさい」
僕が今猿社長の話に合わせる。
「なんだ。そうだったんですね。」
蔵子さんがニッコリと微笑んだ。
そう。僕達が、初めて会った時のように。
「紹介するよ。友人で会社の部下の橘権太さんだ」
今猿社長は僕を蔵子さんに紹介した。
僕の方が蔵子さんと昔に出会っているのに。なんかちょっと悔しい。
「そしてこちら妻の蔵子だ。旧姓小豆沢蔵子だ」
えっ?今猿社長。今なんとおっしゃいましたか?
「私ったら昨日籍を入れたばかりだからうっかりさっきは小豆沢と言ってしまいました」
蔵子さんが今猿社長と見つめあって笑っている。
昨日籍を入れたばかりってどういうことだ?
「昨日籍を入れたって……本当ですか? 」
僕はまだ信じられなかった。いや、信じたくなかった
「本当だよ。これ婚姻届受理証明書」
今猿社長が1枚の紙を見せてくれた。
~婚姻届受理証明書~
夫 今猿 誠
昭和62年3月27日生
妻 小豆沢 蔵子
昭和62年10月10日生
右当事者の婚姻届は、証人 今猿 勝利及び小豆沢 智勲 連署の上 届け出られたところ,本職は審査の上、 平成30年7月26日これ 受理した。 よってここに法律上婚姻は成立 したこととなる。 右証明する。
※この文は本物と若干変えてあり、地域ごとに違います。
蔵子さんは運転免許証も見せてくれた。裏側には氏名と住所のは変更の旨が書いてあった。
た、たしかに本物だ。蔵子さんは僕のことを覚えておらずさらにもう人妻?
そこから僕はどうやって家に帰って行ったか覚えていない。権蔵が何か言っていたが聞こえなかった。
部屋に帰るとさっきの蔵子さんの手紙が机の上に置いてあった。
「蔵子にはわしの声が届かないようじゃ。権太がさっさとしないからじゃ! これからどうするんじゃ」
権蔵が慌てている。
「そうだな。全部僕のせいだ……」
僕は涙を1粒流していた。
僕は手紙とネクタイを抱きしめ床に崩れ落ちた。
「遅いよ……蔵子さん……いや……遅かったのは僕の方か…」
僕は声を上げて号泣していた。
「悪かった。権太が1番辛いのに。わしがずっと側にいてやるから」
権蔵がさっきとは一転僕に優しくなった。
僕は権蔵の初恋もどうにもできず、蔵子さんを脅迫した人もわからず、今猿社長を怪我させたトラックの行方もわからなかった。
そして権蔵の未練であるハッピーエンドを見せることすら叶わなかった。
高梨先輩も桂も婚活に成功したのに、僕だけが婚活に失敗したのだった。
取り憑き婚活は失敗した。
読んでくださり、ありがとうございました。
この続きは新連載『ああ、最強守護霊と彼女を奪還したいんだが』に続きます。




