第60話 涙と微笑みのサヨナラ
最終回まであと、2話
呆然としている僕に縁が話しかけてきた。
「権太! 写真撮るらしいぞ。」
僕は縁の声が聞こえていなかったが、フラフラと歩き縁の隣に並んだ。
撮影が終わったあともずっと笹野さんを僕は目で追っていた。
何で?
とりあえず笹野さんと話がしたい。
笹野さんが、1人になって会場から出ていく。
今がチャンスだ。
「笹野さん」
「何だ? 橘くん」
笹野さんは、冷酷な顔をしている。
「こないだのあれはなんだったんですか? あの時から今猿社長と付き合っていたのですか? 」
辛い、辛すぎる。でも知りたい。僕は二股されていたのか?
「誠とは昨日からだ。あの時のは事故だ」
笹野さんが淡々と言う。二股はされていなかったのか……。
「事故ってどういうことですか? 」
僕達両想いだと思ったのに。僕は肩を震わせながら話す。キスが事故ってどういうこと?
「橘くんが転けて偶然当たったんだよ」
笹野さん……いや、そんな感じじゃなかったじゃないか!
「僕のことはなんとも思ってないんですか? 」
僕はもう必死だった。
「ああ、なんとも思っていないよ。もういいだろう」
笹野さん、なぜ、なぜ、なぜ涙を流しながら言うんですか?
僕のことなんとも思っていないんでしょう?
笹野さんは背中を向けて去っていく。
僕は昔のことを思い出していた。
~高校時代~
最近蔵子さんは怪我のせいで吹奏楽部では裏方ばかりやってる。
最近の蔵子さんは笑顔が少なく無表情が多い。
蔵子さんはエンジェルスマイルを見れていないのは寂しい。
ほかの人とは普通に話すのに僕には一言二言しか言わない。
最近冷たいのは僕のせいで怪我をしたからなのか。
僕は放課後蔵子さんと話をすることにした。
「蔵子さん! 」
僕は誰もいない教室に1人いた蔵子さんを見つけた。
「何ですか? 」
相変わらず蔵子さんは無表情だ。
「こないだの怪我のことを怒ってるんですか? 僕のせいで落ちたから」
僕は蔵子さんの冷たい視線に負けずに言った。
「あれは事故で私の不注意です。橘くんが気にすることではないです」
蔵子さんは表情を変えずに、淡々と言う。
「じゃあなんで最近僕だけに冷たいんですか? 」
もう胸が苦しい。辛い、辛すぎる。いつもの蔵子さんはどこに行ったのだろうか?
この人は蔵子さんとは別人なんじゃないかと思った。
「それは橘くんの気のせいです。要件はそれだけですか? 私は忙しいのでこれで」
蔵子さんは僕の返事を待つことなく教室から出ていった。
蔵子さんと1か月ほどほとんど関わることはなくなった。
しかしまだ僕に追い打ちをかけることがあった。
ある日学校に行くとザワザワと教室が騒がしい。
「聞いたか? 不知火と小豆沢さん付き合っているらしいぞ」
え…………?どういうことだ?
僕はすぐさま不知火のところに向かった
「不知火! 小豆沢さんと付き合ってるのか? 」
血相を変えてきた僕に、不知火は驚いたようだ。
そんなこと気にならないぐらい僕は頭に血が上っていた。
「ああ、そうだよ! 1ヶ月前からな。」
1ヶ月前と言うと丁度蔵子さんの様子が変になった時だ。
「不知火が一方的に勘違いしてるだけじゃないか?」
うそだろ?僕は不知火の言葉が信じられなかった。
だって僕と笑いあって映画見てキスしてまた一緒にシュガーパックスに行くって言ったばかりじゃないか!
不知火が嘘を吹聴してるに違いない。
「そんなに信じられないなら蔵子さん本人に聞いたらいいだろう? 」
不知火は自信満々に言った。
放課後僕は誰もいない教室に、また1人でいた蔵子さんを見つけ、話を聞くことにした。
「蔵子さん! 」
僕を見て、まるで来ることがわかってたように蔵子さんは驚かなかった。
「また橘くんですか……」
蔵子さんは一言だけ呟いた。
「不知火と付き合ってるって本当ですか? 」
僕がそう言うと、蔵子さんはなぜか笑いだした。
「本当です」
え……蔵子さんのその言葉に僕は身体中に寒気が走った。
「僕とデートした時のことは全部嘘だったんですか?」
僕はもう泣きそうだった。
「嘘ですよ。私は橘くんが思っているほど優しくていい女性ではないよ」
蔵子さんは笑いながら言った。
「最低ですね。僕のことはどう思ってたんですか? 」
僕は信じられなくて蔵子さんに思わず聞いてみた。
「大嫌いです」
そこまで言わなくても僕は死にたいほど辛くなった。
「蔵子さんは死にたくなった事ありますか? 」
蔵子さんが無表情だったのが急に驚いたような表情をした。
「私はないよ。あるわけないでしょう」
なぜか蔵子さんはうろたえている。
「僕はあります」
それを言って開いている窓の方に近づくと蔵子は慌てて僕を止めた。
「何考えているの! 私みたいな最低の女のために死のうだなんて! もう死にたいなんて言わないで! 」
普段温厚な蔵子さんが冷静さを失いめちゃくちゃ怒っている。
「何で大嫌いな男のために怒るんですか? ここ1階ですよ! 落ちても怪我すらしませんよ。」
僕がそう言うと、蔵子さんはようやく落ち着いたようだ
「誰でもあの状況なら止めるはずです。さよなら」
蔵子さんは微笑みながら去っていった。
そして1か月後、風の噂で不知火と別れたらしいと聞いた。
1年の3学期に蔵子さんは何処かわからない所に転校して行ったのだ
~同窓会~
僕はすべて思い出した。あの時と全く同じだ。
「蔵子さんの彼氏はいつまで持つかな?」
誰も聞いていないのに不知火がポツリと呟いた。
「どういう意味だよ?!不知火」
僕は苛立ちながらなんとなく不知火の言葉が、引っかかったので質問した。
「蔵子さんはモテるから当然ストーカーもいる」
まわりくどい不知火の言い方に僕はイライラしてい た。蔵子さんはモテるのは分かっている。
「高校時代、彼女は脅迫されていた」
不知火が驚くべきことを言った。どういうことだ!?
読んでくださりありがとうございます!(≧▽≦)




