第56話 ファーストキッスと地獄!
修羅場ります!(><)
僕は約束の時間の1時間前からやってきて待っていた。30分ぐらいしたら蔵子さんが黒髪をなびかせて走ってきた。
シルクかな? 清楚系の、白いワンピースを着ていた。
なんとも綺麗で可愛い……!!!!
「待った? 」
蔵子さんがにこりと言った。
「いや今来たところです」
僕は照れて言った。
なんというベタな会話をしてるなあ。僕達は。
「少し早いけどお昼にする? 」
蔵子さんがニコニコと話しかけてきた。
「何がいいですか? 」
僕はそう言って頭の中で色々考えた。
焼肉……高校生だとまだ早いか……ハンバーガーかな?
ほかの同級生に会いたくないし……
ラーメンかな……うーんまだ時間的にやってないか。
「なんでもいいよ! 」
蔵子さんがにこやかに言う。
結局僕はチェーン店の和食レストランにした。
お店の窓側の席に座ったけど目の前に蔵子さんがいるだけで僕は緊張して何も考えられない。
「何にするか決めた? 」
蔵子さんがメニューを僕に見せる。
しまった……メニュー何も考えてなかった。
「小豆沢さんは!?」
僕はうわずった声で言った。
「蔵子でいいよ! かけそばにしようかな」
蔵子さんはメニューのかけそばを指さしながら言った。
「僕も同じので」
僕はお店の人を呼んで注文した。
「……」
どうしよう。何を話せばいいだろう?
「あ、小豆沢さんじゃなくて……蔵子さんはそば好きなんですか? 」
僕がそう言うと小豆沢さんは照れくさそうに言う。
「好きだよ」
僕はその言葉と蔵子さんの表情に胸がドキドキした。
その後お店を出たあと(支払いは割り勘)、映画館に行き、チケットとポップコーンを買った。
そこでポップコーンを取る時に手が触れてドキッとしたりとか手を握ったりとかカップル的展開は一切なく蔵子さんは映画に集中していた。
僕は蔵子さんが気になって、映画に集中出来なかった。
蔵子さんは映画の最後のシーンではハンカチ片手に泣いていた。
確かに感動的なシーンではあるけど泣くところだろうか?
疑問に思いながら映画が終わった。
帰り道、まだ蔵子さんが泣いている。
「いい……映画だったね~」
蔵子さんが映画を褒めだした。
「そ、そうですね」
僕はいい映画だと思うがここまで泣ける蔵子さんの感性に驚いていた。
目の前に新しく出来たばかりのシュガーパックスがあった。店頭の旗に3か月後から『スペシャルココア発売! 』と書かれていた。飲んでみたいな。僕はじっと旗を見ていた。
「どうしたの?」
もう既に泣き止んだ蔵子さんがにこやかに言った
「シュガーパックスに3か月後にスペシャルココア出るみたいですよ。いつか飲んでみたいなあ」
男のくせに甘いものが好きだなんて……とか蔵子さんに思われなかっただろうか?
「いいね! 私も飲んでみたい」
蔵子さんは、テンション高めに言った。
「飲みに行きましょう。2人で……」
僕は言ってしまってから気づいた。
ハッ! まるでデートに誘っているみたいじゃないか!
「うん。いつか2人で行こうね」
蔵子さんがニッコリと天使のスマイルで僕を悩殺した。
やったあ! これは完全に脈アリかも!
そろそろ蔵子さんが乗るバスの停留所に着きそうだ。
歩いている道には誰もいなくシーンとしている。なんか話さないとな。
「今日は楽しかったありがとう! 映画券もらったからなんかお礼しないとね」
蔵子さんがエンジェルスマイルで言った。
いやいや。デートしてもらっただけで十分ですよ!
と思っていたが、脈があるかもと思った僕はすっかり、舞い上がり浮かれて調子に乗っていた。
「じゃあお礼にほっぺにキスなんて……なーんて」
あっやばい……調子に乗りすぎた。
「それはちょっと……」
蔵子さんは真面目な顔で答えた。
わー。かなりドン引きしてるじゃん。終わったな。
と思ったら蔵子さんが不意打ちで僕の唇にキスをした。
あわわ。ふぁ、ファーストキッス!
「じゃあまた学校でね! 」
蔵子さんはそう言って、誰もいないバス停の方に走っていった。
頭がふわふわ状態で、カーブミラーを見ると顔を真っ赤にしている僕が映っていた。
僕はそのまま歩道橋を歩いていた。
そして降ろうとした時に何かが割れるような音がした。何故か歩道橋の階段を降りた先の右端に置いてあったツボが割れたらしい。
がやがやと野次馬がよってくる。
『ドン! 』
僕は強い力で誰かに押された。ふと後ろを振り返るといたのは……
「蔵子さん!?」
自分でも分からないうちに避けていて、落ちるのは回避出来た。
だけど、僕は為す術もなく、蔵子さんは真っ逆さまに歩道橋の階段から落ちて行った。
蔵子さんの手から血が流れ、蔵子さんは動かない。
歩道橋の下は大騒ぎになった。
僕はしばらく呆然とした。
なぜ蔵子さんは僕を押したのか?
「救急車を呼ばなきゃ」
僕は慌てて携帯を取り出し、数字ボタンの119を押そうとしたら後ろから声をかけられた。
「もう救急車は呼んだ。それより見てたぞ」
後ろにいたのは不知火だった。
僕を睨みつけていた。
救急車が来て蔵子さんは運ばれて行った。
「そうか。ありがとう。何を見てたんだ? 」
僕は表情を崩さずに不知火に言った。
「なんでお前にお礼言われないといけないんだ? 小豆沢さんが落ちそうな時自分だけ助かろうとしたよな? 」
不知火がそう言うと、僕は何も言えなかった。
確かに何も出来なかった。
気づいた時には蔵子さんは、真っ逆さまに落ちていた。
「普通男が女を守らないとダメだろうが! 」
不知火が僕の胸ぐらを掴む。
「不知火こそ! 見てたなら助ければよかっただろ! 」
そこで警察の人が来て、僕達の喧嘩は止められた。
色々警官の人に話をしたが結局事故ということになった。
蔵子さんの打ち身はたいしたことなく、腕の手術を終えたので明日から3日間入院すればいいらしい。
しかし、トランペットを前のように吹くのは難しいらしい。
蔵子さんがいないその3日間は地獄だった。
靴箱には罵詈雑言が書かれていた紙が山ほど入れられており、僕が座る椅子には画鋲が置いてあり、うっかり座ってしまい切れ痔になった。
大事にしたくないのでこっそり早退した。
3日後に見かねた縁が怒っていた。
「俺がなんとかしてやる! 」
すると、次の日からは自然にいじめはなくなった。
本当に縁がなんとかしたんだな。すごいな。
本当にありがたい。持つべきものは友だな。
蔵子さんがやっと学校に来た。なんだか顔色が悪い。
「蔵子さんおはよう! もう体は大丈夫? 」
僕は心配で蔵子さんに駆け寄った。
蔵子さんは僕を突き落とそうとする人ではない。
そう自分に言い聞かせながら蔵子さんに話しかけた。
「あ、はい」
無表情で目を合わさずそれだけ言って、蔵子さんは立ち去って行った。
えっ? それだけ? 急によそよそしくなった。
やっぱり僕が助けなかったことを怒っているのだろうか?
僕はこれを思い出す度、胸が痛いがまだ序章に過ぎないことはまだ知らなかった。
読んでくださりありがとうございます




