第54話 両想いの確信
やっと恋の、展開が進んできました
歩いて数分。
ついに笹野さんに、来てもらってしまった。
僕の部屋に……。
「僕が適当に服を買ってきますので待っててください。Mサイズでいいですね?」
僕は緊張して手が震えた。
「そうだな。悪いな。橘くん」
笹野さんが座布団に座った。
ぼくは近くの服屋さんの『しまさら』に向かった。
下着は流石に買ったら怒られるな。
周りの目もあるしな。
女性の服ってたくさん種類があるんだなあ。
「これはどうじゃ」
権蔵は肩出しの胸元が空いたキャミソールにミニスカのマネキンを指さす。
「これは怒られるぞ」
笹野さんのこの格好もちょっと見てみたい気がするけど……。
そんな格好で街中を歩かせたくないしな。
笹野さんはいつも黒っぽいスーツかTシャツばかりだからどれがいいんだろう?
どれも同じに見える。
僕が頭を悩ませていると権蔵がニヤニヤとしながら言ってきた。
「権太が好きな格好にしたらどうじゃ? 」
うーん。僕が好きな格好か。
目の前のマネキンの清楚そうなシルクの白いワンピースが目に入った。
「これにしよう」
僕は白いワンピースのMを買って部屋に戻った。
「お待たせしました」
僕は笹野さんの顔を見ずに、買って来た洋服が入った紙袋を渡した 。
「早かったな。ありがとう」
カサカサと音が聞こえる。笹野さんが紙袋を開けているようだ。
「え!?」
笹野さんは僕が買ってきた服を見て驚いている。
「着替えるなら洗面所にどうぞ。鍵もかかりますので」
僕は下を向いて洗面所を指さした。
「ああ。ありがとう。着替えるよ」
笹野さんは洗面所に入ってドアを閉めた。
チーーーバサッファッサー
着替える音が聞こえて艶かしい。
「権太! 笹野は鍵かけてないぞ。覗くなら今じゃ」
権蔵は僕にひそひそと言ってきた。
いやいやいや。それはダメだろう!
「何言ってんだ! ダメに決まってるだろう」
僕は一蹴した。
でも鍵がかかると言ったのになぜ笹野さんは鍵をかけなかったんだろう?
もしかして覗いてもいいってことかな?
僕は落ち着かず部屋をうろうろしている。
権蔵が静かにドアを念力で1センチほど開けた。
「ぎゃあ」
権蔵が痛がっている。ちなみに僕は何もしていない。
「まったく油断も隙もない」
笹野さんがお守りを手に持って洗面所から出てきた。
「僕は止めたんですよ」
僕は聞かれてもいないのに言い訳をした。
「知っている。あれだけ大声で言えばな」
笹野さんが白のワンピースを着ている。
清楚に見えるけど胸元のシルエットが強調されセクシーだ。
いつも黒い服ばかり着ているから気づかなかったけど白がすごく似合う。可愛い!
10数年前の小豆沢蔵子さんだった頃みたいだ。
笹野さんに僕は見とれていた。
「橘くん? どうした? 」
笹野さんは不思議そうに僕を見る。
ピーーー
「なんでもないです」
僕がそう言った時に、なんか遠くからピーと音がする
窓の外から音がするらしい。
「なんじゃ? 」
権蔵は興味津々に窓を覗く。
僕は窓側に強く引っ張られた。
「おい!引っ張るな」
その拍子に笹野さんとぶつかってしまった
「だ、大丈夫ですか?」
僕は、笹野さんに覆いかぶさるように倒れ込んでいた。
「す、すみません! 」
僕は笹野さんに謝ってすぐどこうとした。
まだ、権蔵は外の様子に釘付けだ。
笹野さんは僕と目が合うと、ニコッとして僕の唇にキスをした。
えっ……キスをした? キスってなんだっけ?
だれがだれに!?
笹野さんが? 僕に?
もしや……笹野さんは僕のこと好きなのかな?
好きでもなければキスしないよな!?
笹野さんは真面目だし
部屋には2人きり……
も、も、も、もしかして笹野さんは大人のそういうことを望んでいるのかな?
僕達も結構な大人だし……
僕もやっと魔法使いから脱出できる……
据え膳食わぬは男の恥と言うし……
僕は笹野さんの胸部あたりを手で触った。
「ちょっと……」
笹野さんは恥ずかしそうに言う。
ドキドキするなあ……。
「見られてるよ」
笹野さんが静かに言う。
「部屋には他に誰もいませんよ」
僕が笹野さんをぎゅっと抱きしめる。
「だ・か・ら・権蔵が見てるって! 」
僕は笹野さんに突き飛ばされた。
げっ!権蔵のことをすっかりと忘れていた。
「どうぞ。わしは続けてもらって構わんよ」
権蔵がニヤニヤとしながら僕らを見ている。
「いつから見てた? 」
もしかして最初から見られていた?
「権太が据え膳食わぬは男の恥と思い始めたぐらいからかのう。大丈夫じゃ! わしは見ないから続けて」
権蔵は両手を顔にあてているが、指の隙間からガッツリ見ている。
思春期の男子か!
いや僕が思春期の時はこんなことしなかったな……
「じゃあ、私は帰るよ。いろいろとありがとう」
笹野さんは顔色一つ変えずに起き上がり立ち上がった。
「駅まで送っていきます! 」
僕はこのまま帰られると恥ずかしいので名誉挽回のために申し出た。
「……大丈夫だよ」
笹野さんは遠慮しているようだ。
「帰り道わからないでしょう? 送りますよ! 」
僕は前のめりで言った。
「そこまで言うなら」
笹野さんは僕のゴリ押しで折れたようだ。
「……」
「……」
しばらく2人とも無言だった。
僕は笹野さんの手を、そっと握った。
笹野さんは軽く拒んだけど僕がぎゅっと握ると笹野さんもぎゅっと握り返してきた。
もう僕達は両想いなんだなと確信した。
ちょうど裏通りに来た。
「危ない! 」
笹野さんは僕の手を引っ張った。
上から植木鉢が落ちてきた。
破片が1枚僕の近くまで飛んできた。
笹野さんはその破片を手で振り払ったが、その時に手のひらを切ってしまったようだ。1センチほどの怪我をしている。
「大丈夫ですか!? 血が出てますよ!!! 」
僕は心配して笹野さんの手のひらを見た。
笹野さんは冷静にカバンから絆創膏を出して手のひらに貼った。
「これぐらい平気だ」
笹野さんは上を見ながら淡々と答えた。
なんか僕、最近笹野さんに助けられているなあ。
というより僕が危ない目に遭い過ぎなのかもしれない。運がないのかな。
「ありがとう。ここまでくれば大丈夫だ」
笹野さんは僕のことを見ずにスタスタと歩き始めた。
「ここは男が女子を守らんと行かんじゃろう!」
権蔵が溜息をつきながら言った。
ズキンと頭が痛み、僕は昔のことを思い出していた。
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