第5話 謎の大金
「条件がぴったりではないか! 我が愛しき初恋の人よ!! 」
権蔵が膝まづいて食堂のおばちゃんに投げキッスをする。
「初恋の人が見つかったということは……僕は食堂のおばちゃんと……?」
僕はショックで独り言を呟いていた。
「恋愛しないとな!」
権蔵が真顔で言った。
うーん。僕のテリトリーは20歳~37歳なんだが…
年の差40歳で親は許してくれるだろうか?結婚してたってことは成人したお子さんもいるだろうし、父親って認めてくれるかな。
「何を、真剣に考えておる。安心せい。生まれ変わりではない」
権蔵がニヤリと笑う。ちょっとホッとしてしまった。
食堂のおばちゃんごめんなさい。
全国の熟女の方、熟女好きの方ごめんなさい。
「12年間働いているから女子社員は全員把握していたんじゃなかったのか?漏らしているではないか!」
権蔵が僕に詰め寄る。
「ごほん。これで全員だ。」
僕は咳払いをして誤魔化した。
仕事が終わり、帰り道に僕は権蔵と話していた。
「どうやって初恋の人を探そうか…」
僕はため息をつきながら帰り道を歩く。
「やはり婚活じゃな」
権蔵が意気揚々と言う。
「婚活かあ……」
僕はスマホで[婚活]と調べてみた。
合コン、婚活パーティーだと4、5000円、結婚相談所だと20万円の所もある。
「婚活も金がかかる。僕にお金の余裕はない」
部屋に帰ると黒い鞄が置いてあり開けると大金が…どうしよう。
「母ちゃんに電話してみよう!」
部屋に入れるのは母ちゃんか大家さんしかいない。
大家さんが家賃の取り立てに来ることはあってもお金を置いていくとは思えなかったからだ。
スマホを取り出し、母ちゃんに電話する。
プルルルルルルプルルルルルル
「はい、もしもし」
母ちゃんはすぐに電話に出た。
「もしもし僕だけど、部屋にカバンが置いてあって400万円ぐらいあるんだけど、心当たりない?」
すると母ちゃんに即答された。
「ああ、あれね。私が置いたの」
僕は状況が理解出来ずにいた。
「え?」
僕がそう言うと、母ちゃんは話を続けた。
「こないだ事故起こしたでしょう?運転してた人に電話したら大丈夫だって言ったのに治療費くれたのよ」
本当に慰謝料をもらっていたのか…
「派手に転んだだけなのに?いい人だなあ」
怪我もしてないのにこんな大金くれるなんて…
「おふくろさんやるなあ」
権蔵が、にやにやしている。
「でも危ないからあんたの口座に振り込んでもらったわよ。」
母ちゃんが、慌てて言った。
「じゃあ部屋に置いてあるのは?」
僕は疑問をぶつけた。
「実感があるようにおもちゃのお札を入れといたわよ」
カバンの中をよく見ると本物のお札にそっくりのおもちゃだった。
「母ちゃん~!危なく使う所だったろう!」
なんだかんだで出処が分かった。知らないで使っていたら捕まっていたよ。
「とりあえず、金はできたな」
権蔵はもう断る理由はないだろうと言わんばかりに言った。
「やるしかないか」
僕は婚活をすることに決めたのだった。
~翌日~
朝会社に行くとインフルエンザで1週間休んでいた高梨先輩がいた。名前は高梨光雄。高梨先輩は37歳独身である。
高梨先輩は背が高くいつも赤い眼鏡をしている。髪型は茶髪でふわっとした短髪だ。顔は一重だがカッコイイ。頼れる先輩だ。
「おはようございます。高梨先輩。
体調はいかがですか?」
僕が朝の挨拶を丁寧にした。
「おう。完全に治ったぞ」
高梨先輩が元気いっぱいに答える。
「こいつは誰じゃ?」
権蔵が高梨先輩を指を指す
「俺はたちばなの高校のOBでこの会社の先輩だ!お前こそ誰だ?」
高梨先輩が権蔵に向かって話す。
「すみません!高梨先輩…こいつ常識がなくて…ってこいつのこと見えるんですか?」
僕は高梨先輩が権蔵が見えることに、驚いた。
「見えるって?」
高梨先輩が不思議そうな顔をしている。
「わしは侍じゃ…痛い!」
権蔵が余計なことを言いそうなので、お守りで黙らせた
「ここじゃまずいので、昼休み屋上で説明します!」
僕はひそひそと高梨先輩にそう言った。
「まあ事情があんだろ。わかったよ」
高梨先輩はなにか察したようだ。
「ありがとうございます」
僕は高梨先輩にお辞儀して仕事に取り掛かった。
~昼休み
まず高梨先輩に話をする前に食堂でパンか何か買っていこう。
しばらくお弁当は食べたくない…
「昨日のケーキとやらを尋ねたらどうじゃ?」
権蔵がハッと思い出したように言う。
「確かに謎が多いな。」
もらった時は気にならなかったが、色々謎が多い。
「おばちゃ~ん。昨日のケーキはおばちゃんが作ったんですか?」
僕はコソッと食堂のおばちゃんに訊いてみた。
「いや、私が作ったんじゃないよ…」
食堂のおばちゃんは首を横に振る。
「もしやその作り主が生まれ変わり…」
権蔵はやっと明確な手掛かりができて、嬉しそうだ。僕は食い気味に食堂のおばちゃんに質問した。
「おばちゃん!作った人を教えてくれますか?!」
僕は少し期待した
いよいよ手掛かりGETか!
「…ホームベーカリーだよ。材料入れただけ。」
食堂のおばちゃんはもったいつけて、淡々と言った。
「えっ?」
権蔵と僕は同じリアクションをしていた。
「ホームベーカリーとは誰じゃ?」
権蔵が僕に尋ねた。
「ようするに人ではなく機械が作ったんだよ。」
権蔵の初恋の人の手作りと同じ味を、偶然にもホームベーカリーが作ったらしい。
唯一の手掛かりが…
「なんと!そんなものがあるのか…」
権蔵は驚いていた。
何で権蔵は[婚活]は知ってるのにホームベーカリーは知らないんだ…
僕はパンを1つ買って、高梨先輩のいる屋上に向かった。