第44話 千夜と柊愛長様
高梨先輩と僕はひいらぎ高校の裏山に来ていた。
「ここも懐かしいなあ」
高梨先輩は楽しんでいるようだ。
しばらく進むと石碑があった。
「ここが、柊愛長の石碑ですね」
文字だけが書いてある160cmぐらいの高さの石碑だった。僕は石碑をしげしげと見て驚いた。
「柊愛長 1820年~1848年……えっ権蔵って28歳だったの? 僕より年下じゃないか! 」
権蔵は僕より絶対年上だと思ってたのに……
「思い出してきた。わしは19歳で結婚したぞ。妻は4人いた。婚活で見つけたのじゃ。」
権蔵は得意げに言った。
すごい……ハーレムかよ!婚活ってその時代にあったのか?!
「婚活と言う言葉が生まれたのは2007年ぐらいだぞ!今はお守りは売ってないんだな」
高梨先輩が周りを見渡す。
「あそこに小屋があるぞ」
権蔵が指をさしたところには築50年は経っていそうな木造の小屋が建っていた。
─コンコン
高梨先輩がドアをノックする。
「誰かいらっしゃいませんか? 」
「きっと空き家ですよ」
僕もドアをノックする。
─ガチャ ギィィ
誰かがドアを開けた。
「どなたですかな? めずらしい」
70歳ぐらいの腰の曲がった白髪の短髪で、紫色の着物を着たおばあさんが、出てきた。
「初めまして! 柊愛長様について知りたいのですが、ここに住まれているのですか?」
高梨先輩が丁重におばあさんに、尋ねた。
「そうです。私はここでお守りを売っていたんだけどね。最近は愛長様は願いを聞いてくれないみたいで訪ねる人も少なくなったよ。わざわざ来たのに残念だね……」
このおばあさんが、お守りを売っていたのか……
このおばあさんからお守りを買ったから柊のお守りが僕の手元にあるんだけど全然記憶にない。
「願いを聞いてくれなくなったのは、いつからですか? 」
高梨先輩はおばあさんに、質問した。
「去年の秋ぐらいからだねえ」
おばあさんは指で数えながら答えた。
あっ! 僕が権蔵と出会ったぐらいだ!
「おばあさんはいつからここに住んでるんですか? 」
僕が疑問を感じたので高梨先輩の背後から女性に話しかけた。
「誰がおばあさんじゃ! まだ若いわい! 」
僕の言葉に、おば……いや、女性が怒り出した。
「権太! 女性の年齢には気を付けんかい! 」
権蔵が僕にコソッと言った。
「あ! も、もしや貴方様は柊愛長様ではありませんか? 右腕を見せてください」
急に表情を変え、女性は権蔵の方に寄ってきた。
「え? 権蔵が見えるんですか? 」
高梨先輩が驚きながら女性に尋ねた。
「はっきりと見えます」
女性は権蔵に触ろうとするが通り抜けてしまう。
権蔵は黒のマントを後ろに回し紫色の洋服の右腕の袖をまくる。
権蔵の右腕には10cmぐらいの傷があった。
「やはり……愛長様ですね!」
急に女性は床に膝をつけ頭を下げ土下座し拝み出した。
「まさかお会いすることができるとは……ありがたやありがたや」
着物が汚れているのも気にせず女性は拝み続けている。
「まあ、頭をあげい。まさか、お主千夜か?」
権蔵は驚いているが、何か思い出したようだ。
「はい!西園寺千夜でございます。」
やっと頭をあげた女性は元気よく答えた。
「千夜か……50年振りじゃな。」
権蔵は西園寺さんを見て微笑んだ。
「はい!お懐かしゅうございます。まあ皆さん中にお入りください。」
西園寺さんは僕達を小屋の中に入れてくれた。
「権蔵。このおば……いや西園寺さんとはどういう知り合い?」
僕がこっそりと権蔵に聞いた。
「忘るの儀式で最初に願いを叶えた女性じゃ」
権蔵もこっそりと答えた。
「私は柊愛長様が大好きで困っていた時に石碑の前で祈っていたら愛長様の声がしたんです。学校の経営で悩んでいた所を救ってもらったんです。お守りは愛長様の発案です」
西園寺さんは僕達にお茶を出してくれた。
このお守りはそんな経緯で、出来たのか……
僕は『柊』と書かれたお守りを見た。
「愛長様。なぜこのような男の所においでで?」
このような男ってこのおばあさんも失礼だな。
「それが、ワシも記憶がなくてな……こいつらの想いがワシを動かしているんじゃ」
権蔵が僕を指さした。
こいつらとは僕と笹野さんのことだな。
「こいつらと申しますとこの男性2人ですかな? 」
西園寺さんは僕達をジロジロと見た。
「俺は違いますよ! 見えるだけですよ」
高梨先輩が慌てて否定した。
「もう1人はべらぼうに可愛い女性じゃ」
権蔵は笑いながら言った。
「……へー。この男がねえ」
僕は西園寺さんにジロジロと見られた。
なんか、すごい失礼なことを思われていることだけは分かる。
「いろいろと謎が多いのじゃ。千夜! 力を貸してくれるか?」
権蔵が西園寺さんに手を合わせて頼む。
「喜んでお手伝いします」
また西園寺さんは膝まづいて頭を下げる
~これまでの経緯を説明中~
「なるほど……おそらく高梨さんまで愛長様のことが見える理由は、ここで忘るの儀式をしたからでしょう」
「確かにしました! 」
高梨先輩が納得している。
なるほど……じゃあ小豆沢光さんも権蔵のことが見えるからここで、忘るの儀式をしたのかもしれないな。
「ほかのことは分かりません」
西園寺さんはハッキリと言った。
うーん。困ったなあ……
「何かほかに、わかることはありませんか?」
高梨先輩が西園寺さんに尋ねる。
「そうですなあ。柊愛長様の書物から分かることなどをお教えいたしましょう」
西園寺さんは何冊も分厚い本を本棚から出してきた。
いよいよ柊愛長の正体がわかる。
読んでくださりありがとうございます




