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取り憑き婚活~すれ違い系ラブコメ~  作者: かなかな
2章 ~記憶を取り戻せ~
33/62

第33話 出会いは一目惚れ

「本気で好きっす! 誰にも渡したくないっす! 橘先輩は桃井さんのことどう思ってるんすか? 」

急に桂が真剣な顔で言い出した!


すごい熱意だな。今までこんな真剣な桂を見たことないな……

桃井さんのことは、特にいい人だと思うが他にはなんとも思ってないな。


ここは褒めてもけなしても怒られそうだな。


「普通にいい人だと思うよ! 友達として! 」

僕は普通の顔でサラリと言った。


「よかったっす」

桂が心底安心している。


「でも笹野課長は橘のこと好きなんじゃないか? チョコレートに『本命です』と書いたり、橘の名前と誕生日をkonstagramのIDにしたり」

高梨先輩が、突然驚くことを言い始めた。


「それは、権蔵との約束だからそうしたって言ってましたよ」

僕はありえないと思った。あの笹野さんが僕のことを好き?! いやいや。そんな訳がない!


「高梨先輩の言う通りっすよ! わざわざ橘先輩と同じ課に来るなんて絶対好きっすよ」

桂が言い張るが僕にはそう思えない。


急に頭が痛くなり何かが頭の中に浮かんできた。

今とは違い黒髪ロングストレートの高校時代の小豆沢蔵子(あずさわくらこ)……つまり今の笹野ありすを思い出した。


桜が舞っている……僕が高校1年の4月の頃だ。


~回想~

僕は学ランを来て、ひいらぎ高校に通っていた。

権太(ごんた)!部活どれにするか決めたか?」


僕と一緒に通っているのは親友の(えにし)だ。


「僕は吹奏楽部か軽音部にしようかな。音楽好きだし」

僕は部活一覧を見ながら縁に言った。


合唱部とかも魅力的だが、僕は歌うのは得意ではない。


「俺はウエートリフティング部と吹奏楽部迷ってた!権太が行くなら吹奏楽部のが楽しそうだな!」

縁はマッスルポーズをしながら言った。


「今日部活見学だから見に行こう! 」

僕は縁を吹奏楽部の部活見学に(さそ)った。


~部活見学~

結構たくさんの人達が部活見学に来ていた。

学科が違う人も多いな……

僕達は教室の椅子に学科順に座らされた。

その時僕は隣に座っていた女の子に目を奪われた。


制服をいじらずきちんと着ている。

真面目でおしとやかな女の子だった。

黒髪ロングストレートが綺麗で動く度になびいており、メイクも何もしていないのに整った顔立ちをしていてめっちゃ可愛い。

僕はその女の子の隣に座ることに緊張して椅子で転んでしまった。後ろにいた縁は驚いている。


周りはクスクス笑っている。恥ずかしい……


「大丈夫ですか? 腕怪我されてますよ」

よく見ると、腕を擦りむいてしまって血が出ていた。


「だ、大丈夫ですよ! 」

僕はその女の子に話しかけられたことにうろたえた。

その女の子はポーチから絆創膏をだして貼ってくれた。


「はい。私は普通科の小豆沢蔵子(あずさわくらこ)です! よろしくね」

小豆沢さんは女神のような笑顔で僕に自己紹介してくれた。


「あ、ありがとうございます!僕は普通科の橘権太(たちばなごんた)です」

僕は真っ赤になっていた。嬉しいやら恥ずかしいやらで。


「僕は普通科の葛城縁(くずきえにし)です」

縁がどさくさに紛れて言った。


「同じ学科ですね! 私は吹奏楽部に決めてるから、吹奏楽部に入ったらよろしくです」

小豆沢さんは天使のような笑顔で僕達に言った。

僕達はこのエンジェルスマイルにやられて吹奏楽部に入ったのだ。


これが小豆沢蔵子……つまり笹野ありすとの最初の出会いだ。僕は小豆沢蔵子に一目惚れしたのだ。


~会社~

「橘! 橘! 」

高梨先輩が僕を呼んでいる。


「今、笹野さんのことを思い出してました! 初めて会った時の笹野さんはおしとやかで優しくて綺麗で笑顔が可愛くて今とは全然違いました……今はまるで別人です……」

僕は昔の小豆沢蔵子のエンジェルスマイルを思い出して胸がときめいた。


しかし、今の笹野ありすにはその面影がない。

僕には同一人物だと受け入れられない……


「それに近づいては突き放す笹野さんの言動が僕には理解できないです」

僕はパソコンを打ち込みながら言った。


「笹野課長より橘の心を動かす方が大変だな」

高梨先輩がため息をついた。


「橘先輩! 笹野課長、本質はあまり変わってないと思いますよ。もっと笹野課長の本質を見てあげてください。」

桂が僕に必死に言う。


「分かったよ! 」

本質を見るって言っても笹野さんは本音を出さない人だから難しいな……


~その日の定時すぎ~

高梨先輩は光のような速さで帰って行った。

最近忘れていたが、高梨先輩は結婚する前の熱々リア充だった。


「橘先輩! お先っす」

桂もいそいそと帰って行った。


桂! 少しは先輩を(ねぎら)うとか(いたわ)るとか先輩を手伝うとか手伝うとか手伝うとかしないのか! まったく!

結局笹野さんと、2人っきりになった。


「……」

「……」

空気が凍りついている。寒すぎ……


「あの……笹野さん」

僕はいたたまれず笹野さんに声をかけた。


「何だ?」

笹野さんは書類から目を離し僕を見た。


「どうしてこの会社に来たんですか? 」

僕も負けずに笹野さんの目を見た。


「それは……」

笹野さんは僕から目をそらし言いよどんだ。


「ありす~初仕事はどうだ?」

今猿社長がタイミング良く(?)うちの課に来た。

桃井さんも一緒だ。


「橘さん今日残業するんですよね! 差し入れどうぞ! 何か栄養つけないといけません」

そう言ってカップラーメンや栄養ドリンクを桃井さんは差し入れてくれた。


「桃井さん! ありがとうございます! どこで、その情報を? 」

僕は不思議に思い桃井さんに尋ねた。


「桐谷さんと梅田さんが喋っていたのを聞いて」

桃井さんはそう言った。

もう!あの2人は一体僕のことをなんて噂したのやら...…


「ありす! 帰るぞ」

今猿社長が笹野さんに声をかける。


「でも上司として部下を置いて帰るわけには……」

笹野さんが断った。


僕が終わるまでいるつもりだったのか。

「橘くんも帰っていいぞ」

今猿社長が僕に気を利かしてくれた。


「いや、僕は1人でやりますから笹野課長は帰って下さい。差し入れももらいましたし」

なんか笹野さんに負けたみたいなので嫌だし、今猿社長と笹野さんと一緒に帰りたくなかった。


「そうか。お疲れ様」

笹野さんは、帰り支度をしだした。


「さっきの答えだがな。それは会社の利益の為だ……現に今猿コンサルティングも上向きになっている。元々前課長が定年になったら私が課長と決まっていて、引継ぎの為に何回も来ていた。私がここに来たのは単なる偶然だ」


そう言いながら笹野さんは、今猿社長と桃井さんと一緒に帰って行った。

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