第32話 あの人を探せ!
「また探し直しか……」
僕はため息をついた。
「何を言っておる? 連絡先を交換したじゃろうが」
権蔵は僕に対してため息をついた。
「ああ、そうか! 笹野さんに連絡すればいいんだ」
僕は思わず口走っていた。
連絡先交換したのすっかり忘れていたな……しかもkonstagramも分かってるし……
「ありすが連絡先を? ありすはあんまり連絡先を教えないんだけどな」
榎本さんが驚いている。
「今猿社長が連絡先交換しろって言ったからですよ!
あっ榎本さんレドエンのライブ行かないんですか?」
僕が榎本さんにこないだの今猿社長の誕生日のことを説明した。
榎本さんは笹野さんの対応に納得いってないようだが、如月さんはずっとニコニコとしている。
「ライブの日は急な仕事が入ったので! 気にせず行ってください! 」
榎本さんが笑いながら言うと、僕はこれ以上頭を下げられないってくらい頭を下げた。
~翌日会社にて~
しかし、連絡先やSNSを知っていてもなんて言えばいいのだろうか?
権蔵が僕と笹野さんが結婚しないと未練が消えないので……付き合ってください? 結婚してください?
でも、笹野さんは権蔵が見えているし……僕より権蔵については詳しそうだしなあ。
権蔵について教えて下さい? でもこないだはこれ以上は教えてくれないって言ってたしなあ。
「おい! 権太! 」
権蔵が僕に呼びかける。しかし、僕はぼんやりとしていた。
笹野さんは何で甘いもの苦手なのに、僕のお土産に喜んだんだろう?
僕が連絡しなかったらこのまま会えないのかなあ。
─ドン
急に僕のディスクに誰かが壁ドンならぬ机ドンしてきた。
「上司が初日の挨拶してるのに考え事か? 」
僕はその上司の顔を見た時にびっくりした。
笹野ありす…!
「ど、どうして? 笹野さんが? 」
僕は事態が飲み込めなかった。
「さっき説明しただろう? 前課長が定年退職されてその代わりに私が今日から課長に就任したと! 」
笹野さんが僕を睨む。あっヤバい……聞いてなかった……
「ワシはちゃんと注意したぞ」
権蔵はドヤ顔で言った。
なんとか謝らないと……言い訳……言い訳
「申し訳ございません!今日の大仕事について考えてました」
僕はそう言って笹野さんに頭を下げる。
よりによって笹野さんが直属の上司かよ……
結婚相手も抵抗あるけど上司なんて最悪だな……
僕なんて12年働いていても、未だに平社員なのに……笹野さんは1日で課長ってすごいな……
「素晴らしい! 仕事のことをいつも考えているとは」
急に笹野さんが僕を褒め出す。
怒られるかと思った……
「仕事熱心の橘さんにはこの仕事を任せよう」
そう言って笹野さんは、僕のディスクに山ほどの書類を置いた。
「明日まで頼むよ」
そう言って、笹野さんが自分のディスクに戻る。
やられた……仕事を押し付けられた……
これは聞いていなかった罰か……
明日までになんて鬼だな……できるわけないだろ!
~しばらくして~
笹野さんが時々怖い顔でこっちを見ている……
サボらないか監視されてるな……
笹野さんはディスクから離れ、どこかへ出かけたようだ……
「やっと一息つけるよ~」
僕はディスクに倒れ込んだ。
「橘! 手伝ってやろうか? 」
高梨先輩が救いの手を差し伸べてくれる。
「高梨先輩!助かります!」
良かった……これで明日までに終わる……高梨先輩が3分の1ぐらいの書類を自分のディスクに移す。
「高梨先輩! ダメっすよ! ぼんやりしてた罰なんすから」
桂が高梨先輩が置いた書類を僕のディスクに戻す。なんか高梨先輩が取った分より多く返ってきたみたいだが……
「桂! いつから笹野さんとグルになった? 」
僕は恨めしく桂を見た。
「笹野課長は最初は怖い人だなって思いましたけど社員に気配りしてくれてしっかりしてるから仕事がしやすくなったすよ」
桂が笹野さんのことを褒めだした。
なに? 笹野さんは僕以外には優しいんだな。
「笹野さんに僕は嫌われてるのかな……?別に嫌われてもいいけど」
僕がヒソヒソと桂と高梨先輩に言う。
「嫌われてていいわけなかろうが! ワシの未練なんとかせんかい! 」
権蔵が僕の頭をどつきながら叫ぶ。
ちなみに全然痛くないが……
「えっ? どういうこと? 笹野課長と権蔵がどう関係あるの? 」
高梨先輩は権蔵の発言を聞き流さなかった。
「笹野ありすは橘権太の初恋の人じゃ! 」
権蔵は大声で叫ぶ。
「静かにしろ! 笹野さんに聞こえるだろうが! 」
僕は慌てて権蔵に言った。
というか僕の初恋の人を権蔵にカミングアウトされてしまった。帰ったら権蔵に激マズ青汁饅頭食わせてやる!
「なに? 笹野課長が橘の初恋の人? もっと聞かせろよ」
高梨先輩は目を輝かせて言った。
「もしかして、権蔵の初恋の人の生まれ変わりと関係あるっすか?」
桂も興味津々だ……
笹野さんが自分のディスクに戻ってきた。
「お昼休みに、パン買ってきてやるから聞かせろよ」
高梨先輩がそう言って自分の仕事に戻る。
「高梨先輩! 僕にも聞かせてくださいよ」
桂が高梨先輩にそう言うと自分の仕事に戻った。
~お昼休み~
僕は高梨先輩に買ってもらった焼きそばパンをかじりながら、ディスクで仕事をしていた。
もちろん代金はちゃんと高梨先輩に払った。
~権蔵が経緯を高梨先輩に説明中~
「ちょっと待て……頭がこんがらがってる。まとめると、これでいいか?」
☆権蔵が探していたのは笹野ありすだった
☆笹野ありすは小豆沢蔵子という名前だった。
☆小豆沢蔵子は橘の同級生で初恋の人
☆権蔵の目的は自分の初恋の人を探すのではなく橘の初恋の人を探すことだった。
☆権蔵は柊愛長で笹野課長と橘の生霊が取り憑いて記憶を失い、権蔵になった。
☆今猿社長は笹野課長の友人で片思いをしており橘に宣戦布告した
高梨先輩がメモ帳に殴り書きをする。
「ということは桃井さんは橘先輩と権蔵さんには関係ないんすね!! 」
桂が嬉しそうに言う。
「桂……桃井さんのこと好きなの?」
僕が桂の目を見ながら言った。




