第30話 初恋の人の正体
1章 初恋の人を探せ編 ~完~
2章 記憶を取り戻せ編に続きます!
「はあはあ」
僕はなんとか13時50分に披露宴会場に到着し受付を済ませると、席次表をもらった。
そして、自分の席の位置を確認し座った。
ふと、隣を見ると[小豆沢]という席札が見えた。
やはり、小豆沢さんはここに来るようだ。
僕は席札をよく見た、そして二度見した。
えっ? 嘘だろ……?
そこに書かれていた名前は……!
《小豆沢蔵子》
小豆沢光さんじゃない!
小豆沢蔵子……
僕は急な頭痛がしていろんなことを思い出した……
権蔵の初恋の人の生まれ変わりは[小豆沢光さん]ではなく、あの人だ!
「久しぶりだな。橘権太君」
その声の主は……
笹野ありすだった……
そう。僕は記憶を失っていたが、笹野ありすは昔『小豆沢 蔵子』という名前だった。
ひいらぎ高校の同級生で僕と同じ吹奏楽部だった。
お弁当やらシフォンケーキをいつも差し入れしてくれ、他にも部員のサポートが完璧だったことから
《マネージャー》と親しまれていた。
そして『小豆沢 蔵子』さんは……
《僕の初恋の人》だった……
でも……
なぜ権蔵の初恋の人の生まれ変わりが……
僕の初恋の人なのだろう?
「思い出したぞ! お主らが再会した時に強い生霊……が出て、ワシに取り憑いたのじゃ。それが条件じゃったから。そして、2人の名前を取り『権蔵』になったのじゃ
取り憑いていたのはワシではない! お主らじゃ! 」
権蔵が笹野さんの顔を見ながら言った。
再会した? そんなに早くに?
誰でもいいからどういうことか説明してくれよ……
「順を追って説明する。まず、私は高校1年の終わりに転校した。そして、私はアメリカに養子にもらわれ、苗字が変わりアメリカでの呼び名が『ありす』で、本名は笹野 蔵子だ。そして、アメリカ出会った友達が誠、めぐ、春男だ。居酒屋で偶然権太くんを見かけ、私は権太くんの会社が潰れないように誠に訴え、頑張った。
ここまではいいか? 」
笹野さんが淡々と話した。
そんなに前から……
笹野さんは、いたんですか?
笹野さん……いや蔵子さんの生霊だから、権蔵が僕の会社が潰れないことが分かったんだ……
「権太くんが事故にあった時、誠が運転していた。その隣に私が乗っていた。私が急に体調を壊し、心配した誠がよそ見した時に権太くんにぶつかりそうになり、ギリギリでなんとか止まったが、権太くんは派手に転び意識が朦朧としていた。私達は慌てて救急車を呼んだ。その時再会したと思われ、権蔵……本当の名前は……《柊 愛長》様が私の前に現れた。権蔵は私に自分の正体を明かさずに権太くんにヒントを出してくれと頼まれた。そして、権蔵は自分の記憶を消すと言った。こんな所かな」
「ワシはやっぱり『柊 愛長』じゃったんだな」
権蔵……いや。愛長は驚いて下を向いている。
「なぜ? 権蔵は蔵子さんをわざわざ僕に探すように仕向けたんだ? 」
僕は腕くみをして考えた。
「……それは……答えられない」
蔵子さんは、言いづらそうに言った。
「蔵子さんはなぜシフォンケーキやチョコレートを僕に? なぜ会社を倒産しないようにしたんですか? 」
僕はまだ理解できなかった。
「私は権太くんと仲良くなりたいのだ。そしてまだ権太くんは思い出してないことがあるんだ。」
蔵子さんが悲しそうな顔で言った。
「どうして昔は黒髪が綺麗で優しくておしとやかだったのにそんなに変わったんですか? 」
僕は頭がこんがらがっていて、失礼なことを訊いている所まで頭が回らなかった。
「私は小豆沢蔵子から笹野ありすに生まれ変わったからだ」
笹野さんが機械的に言った。
権蔵が言う生まれ変わりとはそういう意味だったのか……
「これ以上はいいだろう。結婚式に集中しよう」
それっきり蔵子さん……笹野さんはその話題には触れなくなった。
結婚式が終わり、僕は笹野さんを追いかけた。
まだ笹野さんには聞きたいことが山ほどある。
すると、今猿社長が笹野さんの迎えに来ていた。
「橘さん。お話しがあります。ちょっとこちらへ」
今猿社長は僕にコソッと言ってから車のキーを笹野さんに渡した。
「ありすは車で待ってろ」
「……分かった。権蔵が権太くんの方にいてくれて嬉しいよ」
そう言うと笹野さんは素早く今猿社長の車に乗った。
今猿社長が僕を休憩スペースに連れていく。
「ありすから聞きましたけど、やっと見つけたんですね……蔵子を……」
今猿社長が真面目な顔で言った。
「はい。今猿社長と如月さんは、笹野さんから聞いていたんですね」
如月さんが権蔵について知ってたのは、笹野さんから聞いていたんだ。
「僕は笹野ありすのことが本気で好きです」
今猿社長が僕に真剣な眼差しで言った。
「なぜ、僕にそんなことを?」
僕はきょとんとした。
愛の告白するなら本人に言ってくれ。
「宣戦布告です。ではまた会社で」
そう言うと今猿社長はスマートに去っていった。
今猿社長がいなくなってから僕は呟いた。
「顔だけのいけ好かない男だな」
「それ、ワシが言ったやつじゃ!」
権蔵がほら見たことかという顔で言った。
~帰宅~
僕は部屋に帰ってきた。
「権蔵……いや愛長の願いは叶えたと思うけど。初恋の人を見つけたし、笹野さんは『仲良くなりたい』って言ったし条件は揃っただろ? 」
僕は少し寂しくもあったが権蔵が言う初恋の人は見つけたしな。
「権蔵でいい。そうじゃな。褒美に大きな幸せをそなたに与えよう。ふんぬ!」
権蔵が何か唱えた。
大きな幸せって何だろう?
「変わったか? 」
権蔵が僕を見て言った。
「何も……変わってない」
僕は何も変わっていなかった。
「わからんだけでどこか変わっているかもしれん。ワシの未練はなくなった……さらばじゃ! ふんぬ! 」
権蔵がなにか唱えるが何も変わっていない。
「……」
「うーむ。やっぱり笹野ありすと結婚しないといけないようじゃ! 笹野ありすも仲良くしたいと言っただけでお主のことを『好き』とか『愛してる』とか言っておらんぞ! 」
権蔵がそう言って怒り出す。
「急に結婚とか条件変えるなよ! 」
僕は権蔵を見ながら言った。
最初は初恋の人を見つけて成就だっただろう?
まあ、成就はしてないか……
「大体お主は笹野ありすのことを今は好いておらんのではないか? 」
権蔵が困り顔で言った。
「やっぱりもう『過去の人』なんだよなあ。あんまり覚えてないし……」
僕はぽつりと呟いた。
小豆沢蔵子の記憶はほとんどないからなあ。
桃井さんが昔から僕を知ってるとはどういうことか?
小豆沢 光は何者か?
高梨先輩と笹野ありすには、なぜ権蔵が見えるのか?
なぜ権蔵は自分の記憶を消したのか?
権蔵の本当の未練と僕の初恋の人を探させた意味は?
なぜ僕だけ記憶がなかったのか?
笹野さんが言う思い出さないといけないこととは?
僕に与えられる大きな幸せとは?
なぜ小豆沢 蔵子は笹野ありすに生まれ変わる必要があったのか?
まだまだ謎が多過ぎる……
そして…
今はまだ笹野ありすのことは好きではない。
むしろ苦手だ。僕はそんな気持ちの人と結婚なんて出来るのだろうか?
『婚活』は運命の人が見つかるまでではなく『結婚』するまでが『婚活』のようだ。
読んでくださりありがとうございます!(^-^)




