Blood Forest
姉は純心と共に森の中を歩む。
二人分の足音が森の中で浸透する。
今この道にいるのは俺とミソラだけで、他の奴がいる気配はない。
あの時は倒れていて周りを見てはいなかったが、恐らく俺が助けられた時も、このような所だったのだろう。
「……にしてもなぁ」
「?」
俺の呟きにミソラが振り返る。
実は村を出発してから気になっている事があった。凄く気になっていた。
「……そのローブ、派手じゃねえか?」
「そうですか?」
「真っ白過ぎんだろ……」
俺が気になっていたのは、ミソラが羽織っているローブだった。
俺の真っ黒なローブとは対照的に、全身真っ白で、少し赤い花が刺繍されているだけのシンプルなデザインである。
しかし正直に言うと、派手だ。
それに俺が羽織っているローブが真っ黒なので、さらにそれが映えてしまう。
てか、誰が用意したんだこのローブ。俺はミソラから貰ったんだが、ミソラは誰から貰ったのだろう。
「んー……別に派手じゃないと思いますがね。おばあちゃんの趣味かどうかはわかりませんが」
「このローブ、ナーヨさんが用意したのか?」
「用意したというか、たぶん作ったと思います。僕もエリカさんと同様に、少し日光が苦手なもので……それを見かねたおばあちゃんが、ローブを用意してくれたので、ずっとローブを羽織ってるんですよ」
「あーだから朝の時はローブ羽織ってたのか……」
いつもローブを羽織っていたからまさかとは思っていたが、やはり俺と同じようなものか。
しかしミソラの方が軽そうなので、羨ましい。それに今ミソラはフードを被っていない。俺は脱ぐだけでも気持ち悪くなるのに、なんか悔しくなる。
堪らずそっぽを向いた。
「あ、エリカさん!?べ、別に僕はちょっと苦手な程度でして、だから森の影くらいならこうやってフードを脱げるっていうか!?」
「別にフォローしなくていいよ…」
もはやミソラの必死なフォローにも反応が薄くなる始末である。しょうがないじゃないか。だって俺もこの日光に当たると死にかける現象は全然心当たりねえんだもん。光なら結構浴びてる……と思う。
今は森の影があるから気持ち悪さや痛みは軽くなってると思う。だから別に脱いでもいいんだが、あの感覚を味わいたくないので、軽くなっても絶対に脱がんと誓った。
さて、その話は一度置いといて。
森は道なりだった為、俺でもどの道に行けばいいのかわかる程だった。
「……そういえばミソラ」
「はい?」
俺の声にミソラは体ごと振り返る。
「モンスターってのは、どんななんだ?」
「モンスターですか……」
これもずっと気になっていたことだ。この際だから聞こうと思ったが。
ミソラは体を戻して、モンスターについて話し始めた。
「モンスターは、僕達人間を見つけたら直ぐ様襲ってくるんです。殺し方も残虐で、ちょっと気分悪くなるかもしれないですけど……」
「まぁそこまでは求めてないからな。飛ばしていいぞ」
「はい。モンスターには色々な特徴があるんです。小型のモンスターもいれば大型のモンスターもいます。噂によれば、山よりも大きいモンスターを見かけたと聞いたことがありますが。小型のモンスターは攻撃力が低いものが多いですけど、稀に地面を抉るほどの攻撃力を持つ小型モンスターが生まれるので、注意しておいてください。大型モンスターは、攻撃力が低いものなんて皆無に近いです。全ての大型モンスターは攻撃力が高い。防御力も機動性も、全て高い大型モンスターもいます」
「へー。この森にも大型モンスターとかいんの?」
「そりゃいますよ。言うなれば、いつ村を襲ってもおかしくない状態なのに、一向に村を襲う気配がないんですよね。まぁそれで助かってるんですが」
「お前はモンスターと戦ったことあんの?」
「何回か森には行っていますが、モンスターには一回だけ遭遇したことがあります。白い毛並みで、額に禍々しい宝石が埋め込まれている、僕よりも大きい狼を。あれは体が固まりました」
「ほー。じゃあ俺達の目の前にいる、白い毛並みで額に禍々しい宝石が埋め込まれている狼は、お前が遭った狼で間違いないのか?」
「そうそう今まさに僕達の目の前にいるーーーーーーーーへ?」
あれ、気づいてなかったのかこいつ。
こいつが話している間に、あっちからのそのそとやってきたんだが。
その狼はグルルと、涎を垂らして唸っている。狼が動く度に、額に埋め込まれている宝石が反射してちょっと目が痛い。
というか、さっきからミソラが固まっている。どストライクなのは反応でわかっているが、あの狼の何処に恐怖を抱けばいいんだよ。
「ーーーーーや、やばいですよエリカさぁん!?」
「あ?何が」
「あいつ!あいつですよ僕が遭ったの!も、ももも森の中に入りましょう!?」
「は?いや、お前の魔法で遅めればいいだろ。そんでお前が一突きで仕留めれば直ぐに終わるだろ?」
何を焦っているんだ。お前の魔法を使えば行けるというのに。あの騎士達のようにやればいいのに、何でそうしないんだ。
しかしミソラはここで衝撃の事実を言い放つ。
「ーーー僕の魔法は、モンスターには効かないんですよぉ!!」
「よし逃げるぞ!!」
ミソラの衝撃の事実を聞いて、俺は直ぐ様背を向けた。
いや、ミソラそういう大事なことは事前に言って。俺お前が何とかしてくれるって思ってたから!お前の魔法モンスターでも効くだろって普通に思ってたから!
……ちょっと待て。今俺がこのまま走ったら、村に着いてしまう。
そしてさらに村にあのモンスターが入って最悪の場合……。
森の中に入ったら迷う可能性もあるし、時間もなくなる。それに闇雲に森の中を逃げ回っても、もしかしたらモンスターは嗅覚が強いモンスターで、直ぐにバレるのでは?
……選択肢は一つしかない。
「ごめん今の撤回。ここで仕留めるぞ」
「……え、えぇ!?」
俺の決断にミソラが素っ頓狂な声を上げた。仕方ないじゃないか。こうでもしないと村に危険が及ぶかもしれんし第一逃げれないかもしれないから、安全を確保する為にはこれが一番の方法なんだよ!戦闘狂みたいで悪かったな!
「おいミソラ、なんか切れるもの持ってたら貸せ。俺がやる」
「あっ……た、短剣なら……」
ミソラがゴソゴソと探っている間に、俺は相手の動向を探る。
あの狼は今も唸り声を発していて、こちらの動きを観察している。
そして一歩一歩、こちらに近づいている。
まずは何処から狙う。足を狙って立てなくするか?それとも一気に口を攻撃するか、体を切り刻むか、後は何かーーーー。
『グギャアアアアアアアアア!!』
「……え?うおおおおおおああああああああああああああああ!?!?」
俺が思考している時、突然狼が襲ってきた。
俺とミソラは間一髪で避けれたが、狼はさらに攻撃をーーーーしてこなかった。
「あ……?」
またこっちを観察してる?なんだこの狼。さっきのは威嚇だったのか?でもそれが逆に不気味だ。
「エ、エリカさん!短剣を!」
「あ!さんきゅーーーーー」
『グオオオアアアアア!!!』
「ぎゃああああああああああああ!?!?」
「エリカさん!?」
俺が短剣を受け取ろうとした時、また狼が襲ってきた。今度はこっちに。
また間一髪で逃げることが出来たが、あまりにもこいつタイミングが合いすぎる!まるで俺が短剣を受け取るのを阻止しようとしてるみたいじゃないか!
……ん?短剣を受け取るのを阻止?
「……おいミソラ」
「は、はい!?」
俺は狼から目線を逸らさぬよう、ミソラを呼ぶ。
俺はあることの辿り着いたかもしれない。それを確認する為に、俺はミソラに言う。
「短剣寄越せ」
「え?あ、はーーーー」
『グアアアアアアアアアアアア!!』
「ふぉあ!?」
「やっぱりかぁ!?」
ミソラが短剣を俺に渡そうとすると、あの狼はまたまた攻撃してきた。
やっぱりだ。今ので確信が持てた。あいつ、短剣が俺に渡るのを阻止してやがる!モンスターってのは、知性があるモンスターもいるのか!?それともただ危険信号が鳴っただけで動いているのか!?
「もうなんなんだよあのモンスターぁ!」
「おいミソラァ!あいつに知性はあるのかぁ!?」
「ち、知性!?」
一応ミソラに聞いてみるが、パニクっているあいつは俺の言葉にさらにパニックになったような感じがする。落ち着けよおい!俺はただあのモンスターに知性があるかどうか聞いてるだけだろ!?
ミソラは短剣の柄を握りしめて、涙目で俺に叫んだ。
「し、知りません!ぼ、僕そんなに詳しくないのでええええええ!!」
「役立たずが!じゃあモンスターに共通の弱点はあるかァ!?」
「ほ、殆どのモンスターは心臓部分が弱点ですがっ、必ずしもそこが弱点とはああああああああああああああああああああッ!!」
「よっしゃあ当たって砕けろ行くぞおおおおおおお!?」
もう聞いてもダメだと悟った俺は、短剣を受け取らずにそのまま生身で特攻し始めた。
俺が攻撃を開始した事に少し驚いた狼だったが、直ぐ様体制を立て直して俺に襲いかかってくる。
「んぐっ!?」
狼は俺の足を狙ってきた。
体を捻ることで、何とかかすり傷程度で収まったが、狼が引っ掻いた地面は少しだけ抉れていた。
おいおい、あんなの食らったら俺の足は一瞬で再起不能だぞ……!?
「くっそ!おいミソラ!お前も戦え!俺一人じゃ結構キツい!」
「わ、わかってますけど、ちょっと待って!?」
ミソラはアタフタと右往左往していて、正直使い物にならない。
その短剣で戦えばいいだろ!魔法使えないんだろ!と叫びたいところだが、今の俺は狼の猛攻を食らっているので、なかなかミソラの元に行けない。
しかもこの狼、俺の身の丈よりも大きいから、一瞬でも油断すれば大怪我間違いなしである。
ふざけるなよ!今俺は死ぬ時じゃねえんだ!あいつら一発殴ったら俺殺してもいいから!
『ガルルルルルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
「いッ!?」
狼の猛攻を避けている時、狼は突然スピードを上げ、俺を押し倒した。
その衝撃で、俺の肩は一瞬で悲鳴を上げる。
「い、がぁ!?」
メキメキと、狼の力が上がる事に、俺の肩はさらに痛みを訴え、悲鳴ではなく絶叫を上げる。
やばい、潰される。
もう肩は駄目かもしれない、と痛みに耐えているその時だった。
「【CRASH】!」
その声の直後に、バゴォン!と、狼の体が吹っ飛んでいった。
『キャウン!?』という悲鳴を発しながら吹っ飛んでいった狼を、俺は目を丸くして眺めていた。
「あっ……効いた」
そして飛ばした張本人のミソラは、何故か攻撃できたことに驚いている。
俺はまだ痛い肩と、日に当たってじりじりとする腕をローブで隠しながら、ミソラに言った。
「てめぇ魔法使えるんなら最初から使えよこのアホンダラ!おかげで俺の肩が潰される所だったじゃねえか!?」
否、叫んだ。
ミソラはビクリと肩を震わせ、何度も土下座を構してくる。
「ご、ごめんなさいエリカさん!ま、まさか効くとは思わなかったんですぅ!前は僕の魔法が効かなくて退散してしまったのでぇ!?」
「あー!もう土下座はいいから短剣寄越せ!今なら渡せるだろ!?」
「は、はいぃ!!」
ミソラの短剣を半ば奪うように受け取り、足をよろよろにしながらも立とうとする狼の前に立つ。
肩と痛みは先程とは嘘のかのように、もう痛みは殆ど無くなっていた。
狼は俺の姿に気づくと、さっきの威勢が全てミソラの攻撃で消失したかのように、急にビクリと目尻を落とす。
そんな狼に、俺は満面の笑みで答え、短剣を構えてこう言い放った。
「歯ぁ食いしばれ」
結果的に言うと、正直やり過ぎた。しかし反省はしていない。
今の狼の状態を言うと大変グロテスクになるので控えめに言おう。色々なものが出ています。ええ。
しかしそれはじわじわと粒子となって消えつつあるので、別に気にしなくてもいい。
……あ、短剣血で汚れちゃった。まぁいいか。
「エ、エリカさん……」
心無しかミソラの声が震えている気がするが、まぁ こんなグロテスクな死体見たら怖がるよな。こいつがどんなに死体に慣れているのかは知らんが。
……この血塗れの短剣をそのまま返すわけにはいかないよな……こういう時のために、これは暫く持っとくか。
その為にミソラに許可を取るため、何故か顔を青くしておるミソラに声をかける。
「なぁミソラ」
「……はい」
「この短剣、さすがにこのまんまじゃ返すのは忍びねえから、俺がこのまま持っとるわ。いいか?」
「……大丈夫です」
「……なぁ、お前顔色悪いぞ?大丈夫か?この死体がそれ程気持ち悪かったか?ならすまねえな」
今、狼の死体は完全に消え去っているが、ミソラにとっては脳内に狼の死体がちらついているのだろう。
うぬん、ミソラ死体に慣れてなかったか。外に結構出てるから意外に動物の死体とかは慣れてると思ったが。
……まだ俯いているミソラに、もう一度声をかける。
その直前だった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?」
「おふぅ!?」
突然、ミソラが頭を抱えて叫びだした。
突然の事に変な声を上げた俺を他所に、ミソラは四つん這いになって叫んでいる。
「僕はなんて事を!なんて事をぉ!?何で女性に全て任せてしまうんだ!しかもエリカさんは肩を潰されようとしてたのに僕はそれを怯えて眺めていたなんてくそくそくそぉ!!僕の【CRASH】が効くっていち早く気づいていればエリカさんに傷をつけられるはずがなかったのにぃ!!いや、僕が盾になればエリカさんは楽に戦闘出来たんじゃ?楽にモンスターを一突きに出来たんじゃ……!?うわああああああああ僕の馬鹿ああああ!!こんなんじゃ世の女性を守る事なんて出来ないこの宝の持ち腐れの美貌も何の意味も無しだああああああああ!!待てよ、もっと僕がモンスターに詳しかったら、また楽に行けたんじゃ……!?あの狼のモンスターの弱点を知っていれば、エリカさんに苦労を負わせずに、もしかしたら僕一人だけでも行けたんじゃ?わぁ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!こんなんじゃあいつらに一発食らわすことも出来ないしエリカさんに見限られたし俺はおしまいだぁ……!いっその事俺を不細工の上を行くクソな顔にしてくれええええええええ!!」
「おい、落ち着け。そこまで追い詰める程じゃねえよ。おいミソラ」
「わあああああああああエリカさああああああああん!!この役立たずの俺を何回でもストレス発散してもいいですから!てかもうストレス発散機として使ってもいいですから!どうか俺の顔を切り刻んで不細工にしてくださああああああああい!?」
「ぎゃああああああああ!ドMはお断りだああああああああああああ!!てか顔切り刻む程じゃねえからぁ!あ、もしかして途中で言った役立たずが原因になってる!?ごめんあれは話の流れって思って!?」
「役立たずでごめんなさああああああああああああああああいいいいいいい!!」
「俺がダメだって思った途端自害すんのやめろおおおおおおおおおおおおお!?!?」
簡潔に説明しよう。
大変だった。モンスターより。
まずミソラのマシンガントークが発動し、自分は役立たずという言葉に大ダメージを受けたミソラは、まだ持っていた短剣を俺に押し付けて切り刻ませようとしたり、俺が嫌だと言えば自分で顔を切り裂こうとするし、俺はそれを必死に止めて結構な時間を食ってしまった。
ミソラはさっきの状態に酷く落ち込んでいる。もはや負のオーラがこちらに漂っているがわかるくらいに落ち込んでいる。
やめてくれ、これから殴り込みに行くのに俺の熱意を意気消沈にさせないでくれ。
「ごめんなさい……僕こういうことがあると取り乱してしまうので……」
「まぁ……心配、してくれたんだろ?それはありが…」
「やっぱり俺のこの美貌を生かす場所を探した方が……!?」
「もうそれはいいからてめえの急所蹴るぞおら」
「ごめんなさい」
さすがに男だから急所は嫌だろうな。俺も嫌だよ。
一段落着いたところで、結構な距離を歩いたと思うが、まだ森は抜けれない。
こんな遠いのクリスマス王国……いや違うクレマチス王国……結構辛いんですけど。てかあいつらモンスターと戦っているのだろうか。この道を通るのだとすれば、モンスターとの戦闘は避けられないはずだが。
「おいミソラァ、まだ王国には着かねえのかぁ?」
「まだまだですね。歩きだと一日が終わる時までかかる距離ですので」
「一日ぃ!?よくあいつら来れるな!?」
「まぁ、他の村より僕達の村が近いですからね……それにあいつらは馬に乗っていますし、時間も早まりますよ……転けてモンスターに襲われればいいのに」
「おい、黒いとこ出てる。黒いとこ出てる」
俺がこう言うも、ミソラはグチグチグチグチとあいつらに悪口を零しながら、ぐんぐんと前に進む。
さっきはあれだけ落ち込んでいたのに、あいつらの事を考えるとこんなにも早くなるのかよ。これが憎む気持ちの力ってやつか。
俺も遅れるわけには行かないので、ミソラとの間を遠ざけないように、ミソラと同じペースで歩き進める。
その時だった。
俺達が横切ろうとした草むらから、ガサガサと音が立った。
そしてその中から、俺達の前に何かが飛び出してくる。
『グアアアアアアアアア!!』
『キュアアアアアアアアア!!』
『オオオオオオオオオオオ!!』
飛び出してきたのは、三匹の狼だった。この狼も、先程の狼のように額に禍々しい宝石のようなものが埋め込まれている。
しかし、さっきの狼より明らかに小さい。
「あの狼の小型バージョンですね……エリカさんは下がっていてください」
「いや、俺もやる」
ミソラが俺を下がらせようとするが、俺はそれを無理矢理押す。
驚いているミソラを他所に、まだ血塗れの短剣を構え、俺はあいつらを見据えた。
『グウアアアアアアアアア!!』
一匹がジグザグに進みながら、俺らに飛びついて襲ってきた。
「ッ【CRASH】!」
もう魔法が通じる事を知ったミソラは、まず先手に魔法を打ち込む。
『キャイン!?』と悲鳴を上げ、吹っ飛んだ狼の着地点に、俺は滑り込みで回り。
「食らえやッ!!」
その狼を一突きにした。
もはや絶叫に近い声を上げながら、狼の体はゆっくりと粒子となっていく。
俺はそれを一瞥し、突き刺さったままの狼の死体を放り投げ、未だに警戒している狼二匹の方へ向き直った。
「さーて、その道通りてえから、さっさと退いてもらいますかねぇ」
「ふつつかながらも、援護します」
その時は、右手にベッタリと付いている二匹の血が、さらに俺を昂らせるような、そんな気がしたが、そんなのを気にかける暇もなく、俺達はモンスターを狩りに戦闘を開始した。
ちなみに、本来の目的である王族達に殴り込みにしに行くはちゃんと覚えている。
ミソラは女性が自分のせいで危険な目にあったり、女性が頑張ってるのに自分が何もしていなかったり、助けれる場面なのにミスしてしまったりしたら取り乱します。