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貿易港9
食べ物に貴賤はありませんが、主食と主菜と副菜はあります。
「その日からわたくしは、この世のすべての食を愛すると誓いました」
「いい話だなあ。……いや、いい話……なんだろうか?」
「食材はわたくしに食べられるためではなく、ただそこに存在しているだけ……それに何か意味をつけるのは人間の驕りです」
「哲学めいているねえ」
「わたくしはただそこに存在しているだけの食材を、ありがたくもおいしくいただく存在にすぎません」
「だいぶへりくだったねえ」
「食を愛するということはすなわち、礼節と感謝を持って、すべての食材を等しくおいしくいただくことなのです」
「うんうん、大事なことだよね」
「思えばかやくご飯をおかずに白いご飯を食べるちち様の姿は、食への愛を体現されていたのだと気が付きました」
「主食も副菜も無さすぎる」




