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はじまりの平原2
目が覚めたら獣の大群に囲まれていました。
「まお、忍者Aさん話が違います」
「俺の名前を言い直すぐらいには冷静だね」
「魔物は王たる忍者Aさんを襲わないのではなかったのですか」
「魔物の王たる俺も獣は統べていないからね」
「訴訟も辞さない覚悟」
「説明不足は否めないけど落ち着いて、裁判はもうたくさんだ」
「もうたくさんだ」
「魔女裁判に証人として何度呼ばれたことか、冤罪につぐ冤罪で俺はもう疲れた」
「まあ、お疲れ様です」
「ぼくもう眠いんだパトラッシュ」
「パトラッシュ」
「お前もつかれただろう」
「不思議と心地よいです」
「ふかふかしているものね」
「ふかふか」
「いまメエと鳴いたね」
「まあ」
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魔王と王女は羊の大群に運ばれていきます。どこまでも、どこまでも。
「空が青いね」
「ある晴れた昼下がりですね」
「市場へ続く道を進んでいるんだろうか」
「まあ」