57/121
はじめの街道6
魔クジラ少年が自分が魔クジラでは無いと気が付く日は唐突にやってきます。
「あれは俺が三万歳になって間もない頃のことだった」
「まあ、なんてドラマチックな語り出し」
「いつものようにマー母さんとイワシの群れを追いかけていると、引越し中の魔クジラの家族に偶然出会ってしまったんだ」
「まあ、イワシは梅煮でしょうかオイル漬けでしょうか」
「しまったついくのいちAの注意が逸れるようなことを」
「それとも塩漬け……」
「とりあえず基本的に魚はすべて丸のみだったとだけ教えておくね、話をもとに戻してもいいかなくのいちA」
「あら、失礼しました、どうぞ」
「ありがとう、それで出会った魔クジラの家族には幼い子供がいたんだけれどね」
「まあ、子供」
「子供というのはどんな種族でも無邪気さゆえの残酷さを持っているものでね、その子は俺を見てこう言ったんだ。こいつ、変だ、と」
「まあ……そのショックで白目を」
「だから白目は生まれつきだってば」
「まあ」
「ちなみにくのいちA、このやりとりは天丼の規定回数である三回目だよ」
「まあ」




