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はじめの街道5
魔王はオオカミ少女ならぬ魔クジラ少年です。
「マー母さんと出会ったのは海を漂流して九千年が経った頃だったかな」
「九千年」
「魔族にとっての九千年は生後三日ぐらいだから心配しないで」
「三日」
「マー母さんは海面を漂っていた俺を拾って育ててくれたんだ」
「まあ、素敵なミンククジラさんなのですね」
「魔クジラだね」
「あら」
「マー母さんには、俺が三万歳になるころまで育ててもらってね」
「三万歳」
「マー母さんには生きるための基本的なことを教わったよ」
「たとえば、どういったことなのでしょう」
「そうだねえ、たとえば魔クジラ語」
「魔クジラ語」
「正直俺は三万歳になるまで魔クジラ語しか話せなかったから、自分は魔クジラなんだと思い込んでいたよ」
「まあ、忍者Aさんは魔クジラ少年だったのですね」




