35/121
境界の山1
ツツピーツツピー。
「さあ目の前に見えるのが登山道入り口だよ」
「まあ、いよいよですのね、わくわく」
「忘れ物は無いね?」
「ええ、宿屋の主人が持たせてくださったキノコサンドイッチは抜かりなく」
「まあくのいちAは他のものは忘れても食料だけは絶対に忘れないよね」
「まあ」
「照れているけれど褒めたつもりではないよ」
「まあ」
「非常食の飴はポケットに入れた?」
「ええこの通り」
「それから飲み物はすぐに取り出せる場所に入れてあるかい?」
「はい、今朝汲んだ湧水をリュックの上へつめて」
「うんうん」
「そして最後に」
「最後に?」
「胸に抱いた希望もそっとつめこみました」
「勘弁して」
「まあ」




