ふもとの村2
魔王と王女は宿を見つけます。
「喜んでくのいちA、この先の宿屋に腕のいい料理人がいるらしいよ」
「まあ、そんな、えーと、豚小屋が」
「思いつかないのなら無理にボケなくてもいいんだよ」
「ブタ箱が」
「まるで意味が違ってきちゃうからそれはアウトだなあ」
「まあ」
「だいたいどこで覚えたのそんな言葉、俺は教えた覚えはないよ」
「あら、どこで聞いたのでしたかしら、たしか兄様が」
「兄様が」
「廊下の隅でご友人に、『もう一度ブタ箱に戻りたいのか』と話しかけているところを見たことがありまして」
「もう一度ブタ箱に戻りたいのか」
「あと、『何のためにブタ箱から拾い上げてやったと思ってんだ』とも」
「あのそれもしかしてお兄様に口止めされてることだったりしないかな」
「まあ、そう言われるとそうだったかもしれませんね」
「どうしよう俺がっつり聞いちゃったんだけどすごい怖い」
「まあ忍者Aさんったら、兄様はここには居ませんから大丈夫ですよきっと」
「きっとと付け加えるあたりとても不安なんだけど、とりあえずそう信じておかないと前に進めない気がするからそう信じておくことにするよ、うん」
「まあ忍者Aさんったら兄様のご友人と同じような顔色を」
「あとその友人の安否を知りたいけれど知らない方がいい気もするから聞かないでおくことにするよ」
「まあ」
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魔王と王女は宿にたどり着きます。
「今夜は傍にいてほしいんだ」
「まあ」
「だから今夜も2人で1室とろう」
「はい、構いませんよ」




