はじまりの森5
魔王と王女は森を進みます。
「ときに忍者Aさん」
「なんだいくのいちA」
「道はこれで合っているんですか?」
「ははは、いやだなくのいちA、ここははじまりの森だよ?ただの一本道なんだから迷うはずはないよ」
「けれど先ほどから、んっ、木の枝が顔に当たるのですけれど」
「まあ、一本道にはそういう場所もあるさ」
「あるのでしょうか」
「うんうん、あるある」
「あるのでしょうか」
「うんうん、そういえばちょうちょを追って一度道を外れたような気がするけど平気だよ」
「ええ、その後ちゃんと戻りましたものね」
「そういえばカエルを深追いした気がするけど、それもきっと平気だ」
「カエルは見失ってしまいましたね」
「そうだねえ」
「カエルと一緒に帰り道も見失ってしまった気がするのですけれど、気のせいでしょうか」
「きっと気のせいだよ、だってほら見てごらん、俺たちの目の前に伸びるこの立派なけもの道」
「けもの道」
「あっ」
「あえてこう呼びますね、魔王さん」
「なんだい王女」
「ときには自らの過ちを認めることも必要なことだと、わたくしに教えてくださったのは魔王さんです」
「……そうだね王女、では言おうか」
「ええ」
「王女、俺たちは」
「はい」
「…道に、迷った」
「まあ、とんだ役立たずですのね」
「やめて」




