はじまりの森4
魔王と王女はちょっとだけセンチメンタルです。
「魔王さんのお話を聞いて、少しだけ安心しました」
「安心?」
「ほっとしたと言いましょうか、父様がわたくしのためを思って魔王さんに誘拐を頼まれたのだと知って、わたくしは嬉しいのです」
「そっか」
「父様が誘拐を頼まれたということが嬉しいなんて、おかしな話ですけれどね」
「ふふ、そうだね」
「父様がそう考えていらっしゃるのなら、わたくしも父様の望み通りたくましくならなくてはいけませんね」
「俺からしてみたら王女はもう十分たくましいと思うけどね」
「このキノコを父様にも食べさせてあげたかったなどと言っている場合ではありません」
「ほらこうやって人の話を聞かないところとか」
「キノコをわたくしが独り占めする気概でいなければ」
「そういうことじゃないと思うな」
「今までおいしいものを見つけては父様と共有していましたけれど、それもやめましょう」
「お父様泣くよ?」
「おいしいものはわたくしのもの」
「聞いてる?」
「わたくしのものは」
「ものは」
「わたくしのもの」
「聞いたことのある暴君論だね」
「魔王さんには特別に分けてあげてもよいのですよ」
「ええと、うん、ありがとう」




