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プロローグ1
魔王は椅子に腰かけます。
「今宵のご用件はどういったことでしょうか魔王さん」
「うん、王女のお父様に頼まれて誘拐しにきた」
「まあ」
「旅に出よう」
「まあ、父様は何も」
「あれっ夕飯の席で話したと言っていたけど」
「……」
「……」
「あのね」
「うん」
「今夜はわたくしの大好物である豚のシチューでしたの」
「うん」
「大好物を会話の片手間に口へ運ぶだなんて無粋じゃありません?」
「つまり話を聞いていなかったと」
「父様が悪い」
「迷いが無い」