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はじまりの森1
チュンチュン。
「さ、目の前に見えるのがはじまりの森だよ」
「まあ、わくわくします」
「俺もこの森を抜けるのは初めてだからわくわくするよ」
「まあ、忍者Aさんも初めてなんですの?」
「いつもは上空を飛ぶだけだからね、森の中の事は知らないんだ」
「まあ、とんだ役立たずですのね」
「今とても辛辣な言葉が聞こえたんだけど気のせいだろうか」
「まあつい口がすべって」
「くのいちAとは長い付き合いだけれど、一緒に旅をすることで初めて知ることがまだまだあるんだと知ったよ」
「ええ、わたくしもです」
「正直で素直な子だと思っていたんだけれど、その素直さが時にはこんなにも鋭利な刃物になるだなんて知らなかった」
「わたくしは忍者Aさんがご職業に似合わずこんなにも繊細な方だということを知りませんでした」
「いいんだ、俺が役立たずなのは事実だから」
「まあ、そんな」
「行こうかくのいちA、俺は役立たずでもくのいちAの盾になることぐらいはできるよ」
「まあ忍者Aさん、卑屈を演じられるとそれはそれで面倒くさいですよ」
「泣いていいかな」
 




