どんな世界を創ろうか
「おお」
空間の切れ目を通ると指令部のような長机にそれらしい椅子に色々と操作の出来そうな環境の整った部屋のドア前にいた。
「いらっしゃいませ、ソナ様」
へ?
目の前に突然、精霊のような羽が付いて飛んでいる銀髪の掌にのる程度の女の子が現れた。
「ソナって俺のことか?」
「はい、そうですが」
さも、当然と言うように答えた。
どうやら、この子は俺をソナと誤認しているらしい。
「俺はソナではないのだが?」
そう言うと、その妖精のような女の子は首をかしげてから、目をつぶった。
「神力情報の再解析を行います......データベースと一致。あなたはソナ様です」
データベースと一致しているということは、ソナに借りた神の力とやらが影響してしまっているようだ。
...いやまてよ、誤認させているという方が正しいのだろうか?
「もし、俺以外の奴が入ってきたらどうするんだ?」
「許可なく課題の肩代わりをする者、もしくは妨害が目的の者であれば即刻退場してもらいます」
やはり、ソナは誤認させるために力を貸したんだな。
そういえば居たな、課題をやりたくないからと悪知恵を働かして変な方向に頑張るやつ。
課題を出さないと怒られるもしくは内申に響くのは嫌だ、だけど課題はめんどくさい。
ソナの行動はそいつらと同じ類いの行動だったのだろう。
理解はできる。
まぁ、俺はそもそもやらない派だっんだけどな。
「そういえば、俺は何日ぶりにここに来たんだっけ?」
「最後にこられたのは176日前です」
間髪入れず、精霊は答えた。
残り期間がちょうど半年として183-176日で、一週間しか来てねぇじゃねぇか。
ほんとに、あいつは配られてすぐ投げ出したんだな。
なんか、小学生の頃、朝顔を成長段階で枯らしたのがデジャヴった。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
司令官が座ってそうな椅子に座り、聞いた。
たぶん、彼女は課題のサポーター的存在なのだろう。
「...教科書39ページを参照してください」
おっと、そうきたか。
しかし、そうだよな部外者の支援がダメなのに精霊がまんま教えてくれるわけがないか。
「教科書を無くしたんだ。初動だけでも教えてくれよ」
教科書はきっとあの山の中にあるのだろうけどソナの許可をとらず探すのは気が引けた...
今度、来たときに教科書や模擬戦争のことやらを洗いざらい吐いてもらおう。
「...精霊種のチャトが1度目の質問を受理しました。...正面に向かいコントロールパネルを表示させるよう意識させてください」
一度目?回数を数えているのか?それとも回数制限があるのか?
...もしかして、他にも説明書があったんじゃないか?
ソナ、無くしてないよな...?
回数についてはあとで聞くとして今は言われた通にしてみよう。
俺はwind○ws XPのコントロールパネルを思い浮かべる。
すると、視界の両端にいくつかの選択肢が現れた。
心なしか起動音も聞こえた気がした。
表示された選択肢を一つ一つ確認する。
・4000G
・世界情報構築
・世界情報表示
・履歴
・共有 ※(灰色)
・通知
・同期
4000G,灰色に成っているものは触れてもなにも起きなかった。
世界情報構築に触れる。
・環境構築
・モンスター構築
・新規構築
と並んでいた、G4000だけは右上に表示された続けている。
試しに環境構築を押してみると、
・大地
・空
・空気
・魔素
4つの項目があって、それぞにどのような状態、広さ、密度、濃さのようなパラメーターを弄れた。
そういえば今この世界はどうなってるんだ?
そこで、世界情報表示を確認しようとすると、指で触れる前にその項目があらわれた。
思うだけで選択ができるようだ。
手も動かさないでいいのか、便利だな。
椅子の上で態勢を崩し、いつもの授業中のように右腕を下にしてうつ伏せながら作業を続行した。
この世界の現在の状況はなにもない、いやひとつあった。地面?土の塊が空間にひとつあるだけで魔素も無ければ空気も太陽も何もなかった。
現在の世界の映像を視界の端に縮小して置いておき、ソナがいままでに何をしていたのか履歴を確認した。
177日前 重力:絶対座標軸-z軸の方向へ常に等加速度運動を開始。
177日前 地面: x0 y0 z0地点を中心に100メートルの立方体を破壊移動不能オブジェクトとして設置。
177日前 モンスター :スライムを創造。4体召喚。
その召喚した後のスライムがどうなったのかを履歴の映像で確認するとペッタペッタと各々移動して、20分後にはすべてのスライムが土の塊上から落下していた。
おいおい、プログラム勉強して第一章で投げ出す奴レベルのお粗末さだな...
というか逆に空気なしの状況で生きられたスライムの生命力すごいな。
それと、スライムのゴキブリ並の生命力は覚えておこう。
ソナはそれ以降何も行っておらず、半年後俺に押し付けたということか。
これはひどい...
犠牲となったスライムを憐れみつつどうするかを考えた。
神界の365日が2000年に値する世界、ということは神界の1日でこの世界は2000日つまり、6年半進むのか。
それって、微調整が完全にできないんじゃ...
ピロリロローン
通知が点滅していたので触れるとソナからのメールが届いていた。
調子はどう?できそう?やりなさい。
そういえば言ってなかったこと思い出して言っておくことにするわ。
1つ、その世界まだ名前を付けてないから付けといて。
2つ、4000Gってあるけどそれが初期に神が持っている存在の力の値。0になっても死なないけどそれを増やしていくのが目標。
4000は多いほうなんだぞ、平均は2000だからな。
3つ、同期は使うと構築している世界と部屋の時間を同じ速度にすることができるわ。
4つ、教科書は学校に忘れた。取りに行くことはできない...ごめんね!
5つ、模擬戦争の優勝でもらえる物の中に帰るための能力がある。私ができるのは呼び出すだけだからね。
6つ、返信不可。怒らないでね♪
By ソナ
こいつ...舐めくさった文章が送られてきた。
少なくてもソナの適当さが分かった。
呼び出すだけで帰せないって、おい。
怒っていてもマジで仕方ない気がする。
まぁ、いいか同期をすれば微調整と時間の問題は解決するだろう。
この世界の名前はどうしようか?
思い付かん...後からでもいいみたいだし、後で考えよう。
あとはこの世界の大地設定だ。
2つ案がある。
1つは地球平面説のような平面上のフィールドを用意して、端に寄せないように造る。
もう1つは地球の様に球体状にフィールドを用意する。
前者の利点は重力の設定はすでに終わっているということだ。
後者は設定し直さないといけないが少ない体積でフィールドを有効活用できる。
これは、やはり球体がいいかな。
重力の設定はチャトに聞こう。
次に、この世界の天体の法則も決めなければならない。
天動説か地動説か、だな。
でも、これは議論するまでもない地動説だ。
大量の熱をもつ危険すぎる太陽を動かしたくはない。
もし、計算ミスって創ったモンスター達に激突したら目も当てられない。
それと、地球のある世界と同じ方がまだ考えやすいと思う、最悪ソナに調べて来てもらえる...だよね?たぶん...きっと。
そういうわけで、この珠の世界は球体、地動説に決定した。
名前はまだない。