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活動と警官服

キーンコーンカーンコーン……


「ふぁ~あ……やっとおわった」


チャイムが鳴り、上代学園での一日の授業が終わりを告げる。

高等部1年5組の教室で、とある生徒、夏珪かけい 修一しゅういちはやっと終わったと机に座ったまま軽く伸びをし、机にかけていた鞄を取り出し、机の中の教科書類を片付ける。


「よっし、部活だ」

「今日の練習メニュー何だったかな」

「おい帰りにヌターバックス行こうぜ」


その間に、あるものは部活、あるものは帰りに寄り道をしようと話し合いをしながら教室を出ていく。

彼らが出て行ったあと、ようやく片づけが終わった修一は、教室から出る。

そして向かう先は、靴箱……ではなく、3棟あるうちの一つ、主に放課後は文化部に使われているC棟にあるとある教室である。

修一はとある理由で所属していた野球部をやめ、帰宅部になろうとしたところに中等部のとある4人組に、職業体験部という部活に無理やり所属させられてしまう。しかも唯一の高等部学生ということで部長という地位をあてがわれてしまい、必ず顔を出すように言われているのだ。

中等部に何をいいように使われているのだと思うかもしれないが、その中等部の学生の一人は防犯グッズを使用し犯罪を行うような危険人物、修一としても無闇に危険に身をさらしたくはないので、しぶしぶ従っているのだ。

初めて会った時の電撃的な出会い(そのままの意味)を思い出し、身震いをしながら修一が部室へ向かっていると、とある少女と出くわす。


「あ、修一さん、こんにちわ」

「っと、あぁ美代か……よっす、お前も今から部活か?」


長い黒髪を後ろで三つ編みにしている少女、名前は平沢ひらさわ 美代みよ。修一を拉致……もとい勧誘した中等部の学生のうちの一人だが、内気な性格からか、4人の中で一番の良心だと修一は認識している。

ちなみにお互いが名前呼びの理由だが、4人の中の代表がお互いを名前またはあだ名で呼ぶことを要求したためである。

そんな彼女にあいさつをされ、それを返しながら修一は美代にこれから部活かと問いかける。


「あ、はい。私は日直の仕事があったのでゆなちゃんたちが先にいってます」

「……そうか」

「修一さんもこれからですよね?よければ一緒に行きませんか?」

「あぁ……構わんぞ」


それから多少の会話をしながら二人はC棟にある部室へ向かった。

何事もなく部室の前へつき、そのままドアを開ける。部室の中には3人の少女がいた。


「あ、先輩、美代ちゃんも、まってましたよ」

「美代さん日直お疲れ様です……修一様はこんにちわ」

「……よっす」


順に、短めのツインテール、ストレート、ショートカットの黒髪少女たちが二人を迎える。

ツインテールの少女は君月きみづき 結菜ゆな。この4人の中の代表的存在である。

ストレートの少女は神原かんばら 美月みつき。防犯グッズ犯罪者はこの少女。

ショートカットの少女は東方ひがしかた 綾音あやね。……特筆するようなことはない。


「3人ともお待たせ」

「うっす」


二人は返事をして、部室の中心に置かれた机を囲む形で配置している椅子に座る。

ちなみに部室だが、中心に大きめの机があり、隅にはクローゼットのようなものが多数配置してある。さらにそのクローゼットの隣に、それぞれピンクと水色のカーテンが付けられた……服屋で見かける試着台のような台が二つ配置されている……色からして男性用と女性用なのだろう。女性用であろうピンクのカーテンが付いた台は男性のものよりも大きい。


二人にさきほどの3人を合わせた計5人は、机を取り囲み、それぞれ向かい合うような形で座る。

そして代表的立場である結菜が、声を上げる。ちなみに部長である修一に権限は一切ない。


「さて、それじゃ今週のテーマを発表します」

「(……今週はなにをやらされるんだか)」


……ここでこの部活、職業体験部の活動内容について説明しておこう。

職業体験部、それは世の中に存在している様々な職種、その制服等を着て、その職業と似たような行動をし、その職業を体験するという目的を持っている。……まぁ簡単に言えば、『コスプレして遊んじゃえ』という活動内容である。コスプレ研究会という名前の方が正しいと思うが、結菜たちは断固としてそれを認めない。

そして活動は、一週間ごとにテーマ、職業を決め、その制服を着て遊ぶ……もとい活動することになっている。修一が体験した中ではエプロンを着て料理などをしただけで他の週は主に女性陣がコスプレをしたので、まだそこまでの手痛い被害は受けていない。

しかしいつかは痛い目に遭うかもしれない。そんなことを思い、修一は身構える。

そんな修一の思いなど知らぬとばかりに、結菜は立ち上がり、後ろにあったクローゼットを開ける。


「今週のテーマは……これです!」


クローゼットの中にはとある服装のセットがあった。

それを見て、修一を含めた結菜以外の4人はなんのテーマかを察する。

それと同時に、結菜が宣言をする。


「今週のテーマはズバリ、警官です!」


そう、クローゼットの中にあった服装は、水色のシャツに紺色のズボン、ネクタイ……そして中心に金の刺繍がはいった帽子……つまり警官服だった。

そして、それは見たところ男物……つまり、


「……ついにきたか」

「お察しのとおりこれを着るのは先輩です。それで何をするのかですが……」


修一はもはや諦め、天井を見上げた。

それを見て結菜は気にせず続ける。


「やはり警官と言ったら犯人を足で追い詰めるのが仕事でしょう」


そんなのはほとんどドラマの中だけだろうと突っ込みたかったが、無駄な労力になるのは明らかだったのでしなかった。


「と、いうことで、今回の活動は私たちが犯人役をしますので先輩には私たちを捕まえてもらいます!捕まえたらこれを使ってくださいね」

「ちょっとまてぇ!?」


そして結菜が取り出したものは、労力を消費しても突っ込まずにはいられなかった。


「え?これがどうかしたんですか?」

「そんなもんどっから仕入れてきやがった!」


結菜が取り出したもの、それは、


「ただの手錠(・・)ですよ」

「ただので済むかぁ!」


細い鎖でつながれた二つの真っ黒な輪、手錠だった。

とてもではないが中学生が持てるようなものではない、どうしたのかと問いただせば、


「私が仕入れました」

「だろうなぁ!」


修一もわかっていたが、仕入れた者は美月だった。

スタンガンの件もそうだが、美月の家は神原コーポレーションという大企業の代表的立場であり、とても裕福である。なので手錠を仕入れることくらい造作もないだろう。

そして結菜は修一のツッコミが終わったと認識し、説明を続ける。


「捕まえた人はこの手錠を使ってあそこの手すりにつなげてください。それで、鍵を渡しますので犯人側が助けてあげてください。制限時間はそうですね……一般生徒の下校時間のチャイムが鳴るまで、今からちょうど1時間半です」

「……つまり?」


内心では理解しているが、間違いであってほしい修一は結菜に簡単な説明を求める。

結菜はそれにこたえ、要約した説明をいう。


「つまり、これから一時間半私たち4人対先輩のケイドロです!」


それを聞いた修一は再び天井を仰ぎ見る。


「……つまり俺は警官のコスプレして学園中を走り回るのか」

「そうでっす、それじゃ先輩が着替えたらスタートということで……その間に私たちは逃げます!では頑張ってください!」

「ふふふ、頑張ってくださいね?」

「……がんば」

「が、頑張ってください、私も頑張りますので」


そういって4人は出ていく。


「……天井が雨漏りしてるな」


修一は、顔を何らかの水で濡らしながら、そうつぶやいた。


ーーーーー


数十分後、


「待ちやがれぇええええええええっ!」

「わぁあ!?ちょっ、先輩!?ガチ過ぎませんかね!?」

「しるかおとなしくお縄につきやがれぇえええええええ!」

「それじゃ江戸時代ですよっ!?と、とにかくこないでぇ!?」


警官服に着替えた修一は、全力で、それはもう全力で、犯人を追い詰めていた。

修一は考えた。どうせ生徒に見られるくらいなら、できる限り手早く犯人を逮捕すればいい。

と、いうことで修一は元運動部故の身体能力をフルに生かし、犯人を追い詰めていた。

そして……


「おらっ!キリキリ歩けっ!」

「うぅ……まさかこんなに早く捕まるとは……やっぱり男の人にはかないませんね」


捕まえた結菜の手に手錠をかけ、修一は部室へと向かっていた。……さすがに引っ張っていくわけにはいかないので徒歩で。

そして部室へ着き、中へ入ると……


「ありゃりゃ……みっちゃんとあやちゃんもつかまっちゃったんですか」

「私、運動は苦手なんです」

「……無念、修一の執念に負けた」


手すりに手錠を掛けられた、美月と綾音の姿があった。手錠をかけられたといっても鍵は二人の手の届くところへ置いてあるため、外そうと思えば外せるわけだが。


「よっし、あとは美代だけだな」

「あーがんばってくださいねー」

「おとなげないですね」

「……非情」

「うっせー世の中弱肉強食だ」

「うわっ、この人げっすいです」

「最低ですね」

「……ゲスの極み」

「あーあーきこえなーい」


非難をぶつけてくる3人の言葉を避けるために修一は足早に部室から出て行った。

……その一部始終を見ていたものがいたことに気付かずに……。


「……よしと、部室に戻るぞ」

「は、はい……修一先輩、すごい気迫でしたね……怖かったです」

「あーいや……それについては申し訳ない」


ささっと美代を発見し、猛ダッシュして確保した後、二人は部室へと向かっていた。ちなみに最後の一人であり美代だったという理由のため、手錠はつけていない。

そして部室の近くまで来ると……二人は異変に気付く。


「……だれかいる?」

「だれでしょうか?」


そう、部室の前に誰かがいるのだ。

不審に思いながらも二人は近づき、その人物の姿を確認しようとする。

その人物も二人に気付いたようで、二人の方へと近づいていく。

その人物をみて、二人は唖然とする。

彼は、修一の方を見てこういった。


「あぁ、君も勘違いで呼ばれた警官か?」

「「……」」


二人に声をかけた人物の姿は、まさしく修一と同じ服装をしていた。

そして彼の後ろの部室の方では、立っている3人となぜか謝っている……中等部の学生がいた。

おそらく、修一が出て行ったあと、偶然通りかかった学生が部室を見て勘違いをし、警官を読んでしまったのだろう。いま彼が言った勘違いとはそういうことのはずだ。

……つまり、


「(モノホン来ちゃったぁああああああああああああ!?)」

「(ど、どどどどどどうしましょう!?本物の警官さん来ちゃいましたよ!?)」

「(ももももももちけつ!大丈夫だ!もう誤解ってわかってるんだから今度は俺の誤解を解けば……)」

「(そ、そうですよね……それじゃまず誤解を解きましょうか)」


突然の出来事に顔を見合わせながら小声で話し合った二人は、修一が本職の警官であるという勘違いを解こうと思ったとき、


『こちら上代署、こちら上代署、応答せよ』

「はいこちらーー」


なにやら警官の持っていた通信が入り、それを警官が受け取る。

その話が終わるまで茫然と立っていると、話を終えた警官が修一を見た。


「現在脱走犯がでて逃走中らしい。確保に向かわなければ」

「はぁ……」


そんなことを言われても修一は何を言えばいいのかわからなかった。

しかし警官はそのまま続ける。


「いくぞ」

「はぁ……はっ!?え、ちょまーー」

「あっ!修一先輩!?」


警官に腕をつかまれ、修一は引っ張られ連れていかれる。美代はそれを止めようとするが、時すでに遅し、そのまま修一は引っ張られ、校舎から出て行った。

茫然としている美代のもとに結菜たち3人が集まる。


「……帰りましょうか」

「そうですわね、運動して疲れましたし」

「……さすがに同情」

「……これ、どうしましょう?」

「「「ほっときましょう」」」


そしてそのまま、4人は下校することにした。


……


「どうしてこうなったぁああああああああああああああああああああああああ!」

「まて脱走犯!逃げ場はないぞ!ほらお前!もっと追い込め!」

「ちくしょうがぁあああああああああああああああああああ!」

「うおぉ!?なんだこいつっ!めっちゃ執拗に追ってくる……か、勘弁してくれぇ!」

「それはこっちのセリフだぁああああああああああああああああ!」

「ひぃいいいいいいいいいいいいい!」


結局修一は、脱走犯を確保するまで誤解を解くことができなかった……。



アオイです。

警官といえば、少し前に高速道路に乗っていたら捕まってしまいました。

理由は後部座席の人がシートベルトをしてなかったからでした。

運転手はせっかくのゴールド免許がと嘆いていました。

みなさんも気を付けてください。

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