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1Day

蒸気機関車が都内を駆け巡り、機械音が回りの摩天楼に響き反響する。

ここは蒸気機械の都、ルイン。

周りの街より一番近代化しているといわれる最先端技術を取り入れた都である。

都自体も他の街より規模が大きく、工場で生産される産物は主に機械類が多いと見れる。

この都が蒸気機械の技術に目覚めたのは今から約60年前。

都の下に隠されていたらしい隠し地下遺跡。

『立ち入り禁止区画エリア0』という場所で、トレジャーハンターの調査隊が潜った時に、そこで『蒸気ゲージ』といわれるものを見つけたらしい。

それは、奥の大広間のような場所で箱に入って積み上げられていたそうで、その一部を持ち帰り、サンプルとして実験に使ったところ、今この都で利用している蒸気機関車の動力源となることが分かったらしい。

それから研究が積み重ねられてこうして蒸気動力を利用した都市が開発されていった。

それがこの都の歴史。

その前までは本当にこの都は何もなかった。

本当に緑ばかりで、穀物ばかりの田舎らしい風景がこの場所にはあった。

だが、それもやはり時代の流れ。

近代化を計る未来人には過去刻んできた歴史は捨てる時がくるのだ。

「早く!!レイス早くしないと機関車に乗り遅れるよ!!」

「分かってるって!」

レイスと呼ばれた青年はスケボーに乗りつつも、住宅街の高い壁を飛び越えた。

着地した先は線路上を走る蒸気機関車の屋根の上。

途中摩天楼を支える鉄骨が非常に邪魔ではあるがそれをレイスは軽々とすり避ける。

それは日頃からの無断乗車にて慣れていることだからであろう。

先にレイスが着地したのは友人を支えるため。

友人が鉄骨のない場所から飛び降りると、レイスが友人を受け止める。

理由は友人の足が少々障害があり、着地などは上手くできない面からである。

レイスはこの都に来てからすぐにこの青年と仲良くなった仲で、その頃からこうしてずっと青年のことを考えてサポートしている。

「まったく・・・どうなるかと思った。」

「ははは・・・ごめんごめん。まさかおっちゃんがあんなに長く引き止めるとは思わなかったからさ。」

機関車に揺られながら二人はいつも通りにのんびりと日常を過ごしていた。

レイスは持ってきた紙袋の中に入っている青い林檎を青年に渡した。

二人はにっと笑いながら蒼い林檎をかじった。

そうこうしているうちにレイスの友人が住む第14番区に蒸気機関車は着いた。

蒸気機関車は止まってくれたため、近くにあった街灯に手を突きながら青年はゆっくりとホームへ降りた。

「あ、そうだ。レイスこれやるよ。」

「はぃ?」

青年から投げ渡されたのはアンティークな黒い鍵だった。

デザインは鈴のようなものを守っている鳥の姿を彫刻している。

かなり年期が入っているようで、このようなアンティークなデザインは今市場では出回っていないと見られる。

「これは?」

「お前の住んでいる第6番区の立ち入り禁止区画通路の途中にある瓦礫だらけのA-20ってかかれてたよく分からないシェルターあるだろ?なんか戦争前からずっとあるってやつ。あそこの先に古い屋敷があるんだけど、そこの鍵が何故か家の倉庫の箱の中に入ってたんだよ。親父もいらねぇって言うからさ、お前に物件ごとやる。」

「ちょ・・・いいのか?!」

「いいよいいよ。こうして毎日世話になりっぱなしだし、生活忙しいのに付き合ってくれてるレイス君にご褒美だよ。」

そう青年が言い終わると同時に蒸気機関車は走り出した。

慣性の法則により一瞬レイスの体はぐらつくが、すぐに身を起こし、青年のほうへ向き直るとお礼を告げて、レイスも自宅のある第6番区に戻っていった。

第6番区に到着すると、レイスはすぐに自宅への帰路を歩いていった。

もう既に日は暮れていて、街灯の光が頼りである。

第6番区は過疎化のために、最近人気は少ないため、誰ともすれ違わないのは少々レイスを不安にさせる。

しかし、そんな状況の中、レイスの視界に青年から渡された鍵の屋敷があるA-20シェルターが入ってきた。

家に帰っても誰かがいるというわけでもないし、明日の仕事は休みなのでレイスは好奇心に身を任せるようにシェルターの中へ入っていった。

シェルターの中は光など差さず、電気があるわけでもないため、真っ暗である。

レイスはペンライトを点けてシェルターの中を歩み始めた。

ほんの少し先に月の光が差し込み、何かが照らされている。

近づいてみてみると、古びた屋敷だった。おそらくこれが青年の言っていた屋敷なのだろう。

駆け寄っていきレイスは扉に近づくと、鍵穴を探した。

しかし、何処にも見当たらない。

「おっかしいなぁ・・・この屋敷じゃないのかな?」

屋敷の周りをぐるぐる回っていると、突然ポケットの中に入れていた鍵が光り出した。

一瞬驚いたものの、レイスは鍵を取り出してみた。

確かにレイスの手の中で鍵は光っている。

ふと、屋敷の入り口付近へ目をやると、そこが光っていた。

まさかとは思いながらもレイスが入り口へ近づいて行ってみると、いつの間にか先ほど探したときにはなかった鍵穴があり、そこが光っていた。

「あっ!」

それに反応するかのように鍵はレイスの手の中からすり抜けて、鍵穴に吸い込まれていった。

そして、鍵の開く音が響く。

それからすぐに光は収まり、何事もなかったかのように夜の沈黙が再びこの場に戻ってきた。

何が起こったのかよく分からなかったが、レイスはとりあえず扉に手をかけた。


カチャ・・・


「開いた・・・」

扉は開いてしまった。

少々不安ではあるが、レイスは思い切って扉を開けた。

「・・・え?」

レイスの視界に入ってきたのは、意外と綺麗に片付いていて、埃が被っていることはない室内。

しかも、小さなテーブルの上にはロウソクが燭代に刺さっていて、火が灯されていた。

(なんで火が灯されているんだ?誰もいないはずなんじゃ・・・?)

不思議に思いながらロウソクに近づいていくと男性の声が響いた。

「いらっしゃいませ。どうしましたか?夜にここへ訪れるなんて珍しい方ですね?」

「だ・・・誰?!」

辺りを見渡すが、誰もいないようだ。

「ふふふ・・・前だよ前。ロウソクをみていて。」

視線をロウソクへやっていると、ロウソクの向こう側から少しずつ人の顔が浮かぶように照らされていき、全体がはっきりとしてくる。

目の前に現れたのは黄緑の長髪を持った男性だった。

彼の左の頬には蒼い雫のフェイスペイントがされており、耳には金色のピアスが輝いている。

「何処から・・・」

「私はずっと前からここにいましたよ?」

不敵に笑う彼は、ゆっくりとレイスに近づいてくる。

すると、彼は何か不思議そうにレイスのことを見始めた。

「あの・・・どうしました?」

「いや・・・似ている・・・と思いまして。昔、親友だった友に。」

「あ、そうですか・・・。」

「暗いですよね、明かりつけますね。」

彼がそう言い、指を鳴らすとぱっと明かりがつき始めた。

勝手に点いていく明かりにレイスは驚いた様子でいた。

「そう驚かないで。単なる魔法ですよ。」

「まほう?」

「そう、魔法。」

更に彼は指で指揮をするように振り始めた。

すると、勝手に椅子が浮いてレイスの後ろへ回り込むと、レイスを乗せてテーブルへと近づけた。

まるで、アリスになったような気分であるレイスにはもはやこの空間の不思議さは疑問に思わない。

勝手に動いている家具達に見とれていると、甘い香りがしてきて彼の方へ振り返るといつの間にかテーブルの上には紅茶とお菓子が置かれていた。

そして、彼も椅子に座っている。

「まぁ昔からよく言われる幻想術とか奇術みたいなものですよ。もちろん・・・――」

「カッコイイ!!アンタかっこいいな!!」

「はい?」

まだ話の途中だった彼は突然のレイスの声に少々納得しない様子だったが、一体何のことを言っているのか聞き返した。

「だってアンタ凄いよ!俺、じっちゃんから昔よく聞かされてたんだけど、魔術師って本当にに血族が少なくて、貴重な人種っていわれてるすげぇ人じゃんか!!うわぁ・・・俺初めて魔術師みた!!」

そう言いレイスは輝いた瞳で彼を見ていた。

まるで夢を追う子どものように、小さな頃夢見たヒーローを目の前にして感動しているようだ。

それを見て彼は今まで偽りの不敵な笑みを見せていたが、優しく笑っていた。

「全く・・・貴方はまるで子どものようですね。」

「子どもじゃない!俺はレイスだ!」

「レイス・・・ですか。申し送れました。私はセシル。大道魔術師をしております。」

そういい、セシルは大道芸人の真似をした。

実際大道魔術師と言っている所から大道芸人であることは予測されるのだが、まるでそう思わせない容姿が勘違いをさせる。

「大道魔術師ねぇ・・・なんかカッコよさそう!」

「ふふ・・・ありがとうございます。それにしてもレイス。貴方は私を怖がらないのですね。」

セシルがそう言うと、レイスは首をかしげて当たり前のように言った。

「なんでセシルを怖がらなきゃならないの?」

「何故って・・・魔術師は何をしでかすか分からないって言われている存在ですよ?古文書や文献にも魔術師は人を実験台にするだの、魔法研究のために人を殺すだの書いてあるじゃないですか・・・きっとレイスもそのこと知っているはずでは・・・」

「なんでそうセシルは後ろめいているのかな?」

その言葉にセシルは俯き加減だった顔をばっと上げた。

「俺ね、想うんだ。そんな固定観念ばっかり捉えてても仕方ないと思う。だってそうじゃない?『そういわれてるから』とかそんな理由だけで他人のこと勝手にこんな人なんだって思ってもそれはもしかしたら本来ある姿とは違うかもしれないじゃない。だから実際に自分の目で確かめて、それから自分の中でこの人はこういう人なんだって捉えていかなくちゃ。俺、嫌いなんだ差別とかそういうの。だから・・・ね?それにセシルが本当に本に書かれているような人なら既に俺を実験台か殺すかしてたでしょ?でも、実験台にもしないし殺しもしなかったじゃない。だから俺はセシルのこと信じたんだよ。」


「・・・レイス」

「ね、セシル。約束。もうそんなこと考えるのやめよ?俺がいるじゃない!今日から俺はセシルの友達!」

ね?といいながらレイスはセシルに手を差し出す。

握手の意の手である。

その手を見て一瞬は戸惑ってしまったセシルだが、その手をとって握った。

「よろしく、レイス。」

「あぁ!こちらこそよろしく!セシル!」







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