第2話 準備
次の日の朝、紅夜は階段を上っていた。
その場所はあの富士山だ。
「どんだけあんだよ……」
紅夜が指定された場所は日本にある内の最も高い場所にある、富士山の8合目付近にある会場だ。
紅夜はなんで地元じゃねーんだよと思いつつ、結構な段数を上っているのだが、まだ着かないようだ。
「あっ、看板だ。」
〔最高の扉まで、 10550段中後5550段〕
「まじかよぉぉおお‼︎‼︎‼︎」
30分以上かけて上ったはずだが、まだまだ先は長いようだ。階段は1段1段がごつごつして、配置は急な角度なので、上るにはとてもきつい。
それから紅夜は無言で上り続け……
ー約45分後ー
「はぁ………はぁ……やっど…づいだ……」
昔の美しく秀麗な富士山はもうない。木が頂上付近まで人間によって植えつけられ、「殺人ゲーム」の会場として、マグマを全て取り除かれ、休火山にされ、階段を作られ、今に至る。富士山内部もいろいろといじられたようだ。
今、紅夜の目の前にはある扉は『最高の扉』。
到着するためにわざわざ登る必要がある。
紅夜はその鉄でできたとても大きな重い扉を思い切り押した。
キィィィィィイ………ガタンッ!
「すっげー…」
扉はある一室とつながっていた。
そこには沢山の武器が並んでいた。
いわゆる武器屋みたいなところだった。
剣は大剣、日本刀、楯突きの小型剣、双剣など様々。
銃もマシンガンや拳銃などもある。
他にも、弓矢や、武器創作コーナーまでもあった。
「おはようございます。」
奥から見た目30代前半の男が現れた。
「ここは武器を販売しています。様々な種類が並んでいますので好きなものを…「あ、貯金下ろしてなかった‼︎」……あ、それでしたらこち…「なーんだこんなところにあんじゃん。」……………」
マイペース過ぎる紅夜に絶句する謎の男。
それを無視し、ATMに駆け寄る紅夜。
「すみません、何か言いましたか?」
お金をおろした紅夜が開いた口がふさがらない謎の男に聞いた。
「あぁはい。えっ『うひょぁぁぁああ大剣だぁぁあ‼︎初めて見たぁ‼︎‼︎‼︎』………〈シクシクシクシク〉」
紅夜は目を光らしていた。
全く話を聞いてもらえない支配人は泣いて、その機会をうかがうのだった。
「あっ…すみません。つい癖で……」
ようやくその時が来た。
「あぁ、はい。お好きな武器をお選び」
「よし日本刀。」
(最後まで聞いてくださいよぉ…)
謎の男は半泣きになった。
紅夜は何かに迷い、そして決めた。
「よし。やっぱマシンガンも買おう。」
この時謎の男は思った。
(どれだけ買う気なのだろう。)
武器の所持数は特に決められていない。しかしほとんどの人が1人1つの武器にしている。そっちの方が動きやすいからだ。殺人ゲームにおいて、足の速さは一つの戦力で、それを失うと殺られる確率が高くなる。それを考えると、武器が2つとなると、非常に重くなる。
謎の男からすれば予想外だった。開催者からしてみれば、お金がそれだけ入るので喜ばしいことだが、日本刀は5〜10キロ、それ以上と考えてもいい。【品質で異なる】それからマシンガン銃【拳銃の2倍の大きさのマシンガン】。今回紅夜が買うものはおよそ10キロ。弾ははめ込み式で、マシンガンとしても、単発弾としても打つことができる。
というわけで、全体的な重さとして20キロ弱。とんでもない重さだし、莫大な費用もかかる。
「ウエストポーチのでかいの……これか。」
紅夜はまだ買う気らしいです。
「キズ薬と……毒・炎・氷・雷のビンと、マシンガン用弾……でいいかな?肉は食いたいけどちょっとよしとこう。」
(肉も買う気だったのか……)
紅夜は雑貨コーナーのある一点に目が止まった。
「ん?これは……シャカシャカじゃぁないか‼︎‼︎」
『ヘッドホンだぁぁぁぁあああ‼︎‼︎‼︎』
とうとう謎の男は叫んだ。驚きと怒りが混ざり、おかしな表情を浮かべている。
「あーもーじゃコレも買お『買うの⁉︎』………ダメですか?」
「コホン………。いや別にいいんですけど……。」
「んじゃ会計お願いします。」
「はい…。」
会計台の上に武器やら何やらまで多くのものが置かれた。謎の男にとって、初めての量なのかもしれない。少々困惑気味だった。
「えーと……日本刀700万、マシンガン銃500万、ウエストポーチ〈強化済み〉10万、ビン4本セット50万、マシンガン用弾50万×5で250万、これだけで聴けるヘッドホン55万で、合計…1565万円です。」
とんでもない額だ。謎の男も困ったような顔をしている。しかし、それを出せるのが紅夜だ。
「ちょい待ち………………はい。」
謎の男はちょっと驚いたような行動をとったが、平然を装い、それを受け取る。
「それでは……1.2.3.4.5.6.7.8.………」
紅夜は驚いた。特に金を数える機械が見当たらないので、どのように数えるのかと考えていたが、思いつきもしなかった。謎の男は自分で数えているのだ。さらにその数える速さ……速い、速すぎる。
目測でも追いつかない。だいたい1秒に10枚近く数えている感じがする。
謎の男は1565枚もの1万円札を3分と10秒程度で数え終えた。
「よくこんなに集めましたね〜。」
「どうやったらその技身につくんすか。」
「いや、みんな高いもの買うから出来るだけ早く数えようと思って特訓してたら身につきました。」
「す…すごい…。」
「あ、そういえば…。」
謎の男は何か気になるようだ。
「コレらはだいたい2.30キロ位ありますが…大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫!このために毎日筋トレしてたんだから。」
「ほぅ。」
紅夜はとりあえず全てを装着してみた。とんでもない形に背負っている。
正面から見ると、右肩から刀の柄が見え、左腰辺りから鞘の先が見えている。右腰にはマシンガン銃が納められており、左腰【鞘より前あたり】にはウエストポーチが付けられ、その中にたくさんの小物が入っている。そんな感じだ。【マシンガン銃などの銃系統のものを買った場合、特典で銃を納める革製のものが貰える。】
「ん、とりあえず大丈夫だね。一応走れるし、ジャンプも出来る。けど……ちょっと遅くなったかな…。」
(そんだけできれば十分だろうがぁぁぁぁあ‼︎‼︎)
謎の男は心の中でそう叫びつつも、結構驚いていた。
何故なら普通に見ても並の人より早く走れている【オリンピック並のちょい下くらい】し、ジャンプも並とは言えない【大人のバレーボール選手並】。
「どうやったらそんなにできんだよ……。」ボソッ
「?何か言いました?」
「い、いぇ。なんでもありません。」
「そうですか?」
何か言った気がすると思った紅夜だか、とりあえず気にしないようにした。
「準備は良いですね?それでは待合室へどうぞ。」
謎の男は武器部屋の左隅にある木のドアを開けた。
ギィィィィィイイイイ
普通のドアのはずなのに嫌な音を立てるなと紅夜は思いながら、そのドアの向こう側に行った。薄暗かった武器部屋とは対照的にとても明るかった。
「うぉぉぉぉおお‼︎‼︎」
紅夜は何だか興奮した。これから待ち受けていることに対し、立ち向かっていこうと、改めて決意した。
本当に申し訳ございません(′;ω;`)
ゲームの直前まで書く予定が待合室までとなってしまいました……。
理由に付きましては、なんだか長かったんです。
なので少し分けようと思ったわけです。
はい。
次こそはおそらく直前まで行くかと思われます。
頑張ります。