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実践しました(その1)

 曽我部は能力を使い国内でパソコンを操作している人達を見渡した。まずパソコン教室の生徒や学校の授業で教わっている生徒達を除外した。次に通販やショッピングをしている女性達を除外した。次はオンラインゲームをしている人達を除外した。


 そんな感じで除外を繰り返し、巧みにキーを叩き銀行にアクセスしている男性を発見した。画面には顧客の名簿、預金額、貸金庫の利用状況が次々に映し出される。

 ここは何処だろうと思いその部屋から外に出る。その部屋はマンションの一室らしい。マンションの玄関にはマンションの名前があった。さっきの男の部屋番号の郵便受けを見る。電気料金の通知書があった。住所氏名がはっきり確認出来た。

 もう一度部屋に戻る。男が電話を掛けていた。

 「俺だ。いい獲物見つけたよ。貸金庫の暗証番号は入手した。偽の身分証明書を用意してくれ。運転免許でいいや。名前と住所はメールで送る。夕方には出来るよな。閉店の七時には間に合いそうだな。現物手に入れたらまた連絡するよ。あとはいつものように……ああ、ウィルス送ってやれ。違う銀行にだぞ。この間みたいに盗みに行った銀行に送って騒ぎにさせんなよ。盗んだ事バレそうになったじゃねえか」

 すぐに電話の相手のところへ視線を移す。こちらもパソコンの前に座り電話で話をしていた。パソコンの画面には数字だらけで曽我部には意味が解らなかった。だが電話を終えると男は「何処にしようかな」と楽しそうに銀行を検索し始めた。「よし此処にしよう、名前が気に入らないからな」と言いながらある銀行へのメールを作成し始めた。

 部屋から出るとやはりそこもマンションだった。さっきと同様に住所氏名を確認する。

 

 「本宮さん、犯人と思われる二名の住所と氏名が判りました」

 曽我部は本宮に見た事を報告した。

 「ご苦労様です。早く対処しないといけないですね」と言うと本宮は警察に連絡した。

 「次は岡倉さんと水沢さんの力が必要ですね」

 そう言って直樹に電話を掛け、来るように言った。


 直樹と望が研究所に来ると、すぐに違う部屋に連れて行かれた。その部屋には大小のコンピューターが何台も設置されていた。

 本宮が直樹と望に今からして貰いたい事を伝えた。二人は頷くと手を繋ぎ、すぐに消えた。

 

 二人が現れたのはウィルス付きメールを送ろうとしていた男のマンションの一階だった。物陰に隠れているとエレベーターから降り管理人室へ向かう男が確認された。本宮が男に宅配便が来たから管理人室へ来てくれと嘘の電話を掛けていた。

 直樹と望は急いで男の部屋に瞬間移動した。直樹は男のパソコンを操作し、研究所のコンピューターと繋がるように設定した。部屋の外で「何だったんだ、イタズラか?」とぶつぶつ言う男の声が聞こえた。二人は手を繋ぎ、その場から消えた。


 研究所に戻ると直樹はコンピューターに向かいキーを叩き始めた。

 「もう大丈夫。あいつのパソコンからはウィルス付きのメールは送れないようにした」

 曽我部が男の様子を見る。

 「パソコンに細工された事には気付いていません」

 「俺の仕事は完璧に決まってんだろ」

 直樹が得意気に言った。

 「さっさと捕まえちゃえばいいのに」

 と望が言った。

 「まだ盗んで無い人を捕まえる訳にはいきません」

 「今まで盗んだ物あるんじゃないの?」

 「家の中を探すには捜索令状が必要ですし、盗品をすでに売ってしまっていたら現物はありません。あの男が実際に銀行に行って偽造の身分証明書で貸金庫を開けたら現行犯で逮捕出来ます」

 「なるほどー」

 本当に理解出来たのかは不明だが望は一応返事をした。

 「あ、免許証を作り始めました」

 曽我部が男の様子を皆に伝えた。


 男は相手の男から送られてきた住所氏名の情報をパソコンに入力し、免許証の画像を完成させた。それをプリンターを通して現実の物とさせた。

 「完璧だな」

 と得意気に呟き、電話を掛ける。

 「免許出来たぞ。取りに来るか?」


 「盗みの実行犯が直接取りに来るみたいです」

 曽我部は実行犯の方に目を向けた。

 男は仕立ての良いスーツに身を包み家を出た。車を走らせ十五分程で仲間のマンションに着き、部屋のチャイムを押した。

 「馬子にも衣装だな」とからかわれたが「いつものカッコだと疑われるだろ。早くよこせ」と催促し免許を受け取った。

 「頑張れよ」「任せとけ」と短く挨拶を交わし車に乗る。時計を見ると二時半だった。

 「予定より早いけど、三時の閉店間際でバタバタしてるだろう。丁度いい」

 そう言って更に車を走らせる。

 

 「曽我部さん、マンションを見て下さい」

 本宮の言葉に曽我部が視線を移すと、

 「あ、警察に逮捕されています」

 男はすでに捕まっていた。

 「車にも尾行が付けられています。もう一人の男が逮捕されるのも時間の問題でしょう。皆さん、ご苦労様でした。今日はもう終わりにしましょう。寮の二人にも伝えておいて下さい。ではまた明日」

 今日の演習は終わった。


 三人が寮に戻った時、冴子と涼平はそれぞれの部屋にいた。

 「ねえ、二人にも演習の話しようよ」

 望が興奮気味に言うと、

 「そうですね、今日はもう演習終わりだという事も伝えたいですしね」

 曽我部が冷静に言った。

 望が冴子を、直樹が涼平を呼びに行った。五人が食堂に集まった時、曽我部のスマホに本宮から着信が入った。話し終わると、嬉しそうに曽我部が言った。

 「犯人捕まったそうです」

 その報告に直樹と望はハイタッチをして喜んだ。

 何の事か分からない冴子と涼平だったが今日の演習の話を聞かされ驚いた。

 「何それ、凄いじゃん!」

「スゲー!」

 

 その日は夜まで演習の話で盛り上がった。



 


 

  

 

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