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悪徳店舗撲滅作戦(その2)

 直樹は店のホルコンに侵入した。

 ホルコンとは、どの台がいくら使われてどの位の出玉があったかとか、景品は何が幾つ出たかとかを管理するコンピューターを、ホールのコンピューター、略してホルコンと呼ぶ。


 本来、台からホルコンへ情報が送られるのみの一方通行で、ホルコンから台へ何らかの指示、例えば特定の台に大当たりをさせるとか、連チャンを止めさせるとかは出来ない。

 あまりに出ないと「遠隔操作で出なくされてる」と言う人がいるが、もしもそれが発覚したら店はお仕舞い、営業許可を取り上げられてしまうので、やる店は無い。


 しかし、確実におかしな事は起こっている。店側から何らかの指示が出ているとしか考えられない事がある。


 以前は裏ロムと言う物があった。

 本来の設定とは違う動きをさせる基盤を台に設置し、店に有利になるようにさせていた事もあった。だがそんなのは警察が来て台の中を確認すればすぐにバレてしまう。


 メーカーが最初からそう言う設定にしてある可能性もある。ほとんどの店には規定通りの台を納入し、得意先にだけ違法な設定をした台を納入するとかだ。

 そうなると中々分からない。基盤の配列やプログラムまで全てを正規品と比べてみなければならない。

 だが直樹はすでに調べ終えていた。

 研究所にある台のデータと店の台のデータは全く一緒だった。

 メーカー側はシロだった。


 では何処だ。何処で操作されているんだ?


 直樹はホルコンを隅々まで調べた。確かに台からホルコンへの一方通行で、ホルコンから台へ信号は送る装置は付いていない。


 「あれ?」

 

 確かに全て一方通行だった。だが、台の向こうに何かがある。台が起点では無く、ただの通過点だった。起点は他にある。


 直樹は集中端子盤と呼ばれる、台の情報をホルコンへ送る装置を調べていた。本当なら台からの情報のみを受け取るだけのはずが、他からの情報を受け取れるようになっている。

 

 直樹はその先へアクセスしようと試みたが、何物かにブロックされ、中々進めない。


 「俺に出来ない事なんか無い!」


 気合いで突き進む。

 

 しばらくすると道が開けた。

 かなり容量が大きいらしいコンピューターだった。あの店だったらパチンコとスロット合わせて五百台位だろうが、このコンピューターは五万台位へ信号を送れるようになっている。


 「店単位じゃ無くて、チェーン店全部を管理しているんだ」

 直樹は納得した。

 店で操作していたら、警察に踏み込まれればバレてしまう。でも外部で操作していれば分からない。


 「系列の全店舗を管理してるんだ。優秀だね。でも俺の方が優秀だよー」

 直樹はプログラムを解析し始めた。


 それによると、出玉の管理をしているようだった。

 四台を一つのグループとして、その中のどれか一台が設定された時間になったら当たる確率が上がる。

 その時間帯がグループ単位で移動する。

 その時間帯以外は当たる確率が下がる。

 もしも設定以外で当たってしまった台があれば、設定された時間に出る予定だったグループと時間帯を交換する。

 一日に出る玉の数も上限を設け、それ以降は出る確率を全台下げる。


 解析しながら直樹は腹が立った。

 それじゃあ設定なんて関係無いじゃないか。一生懸命勉強して設定看破しようとしたって無駄じゃないか。カウンター使ってチェリーやスイカの数数えても意味無いじゃ無いか。機械割りなんて関係無いじゃないか。


 全ての努力が水の泡になる。

 こんな事知らないで、一喜一憂しながら打ってた自分がバカに思える。


 こんなことしていながら「お客様の笑顔が見たいから頑張ってます」とか何とかCMで若いお姉ちゃんが笑顔で言っている。

 

 詐欺じゃん。CMに偽り有りだろ。

 公共広告機構に電話しなきゃダメなヤツだろ。


 さて、どうしてくれようか。


 直樹はキーボードを凄い勢いで叩いた。


 次の日、直樹はまた同じ店に行った。

 そしてまた同じ台に座った。


 最初の千円分のコインがまだあるうちに、大当たりが来た。それにARTも付いて、朝から直樹の台は賑やかだった。

 そのARTも上乗せに次ぐ上乗せで、あっという間に一箱になった。

 その後も深くはまる事無く当たりを引き、どんどん箱が増えて行った。


 お昼には五箱が積み上がっていた。


 コーヒーを買いに自販機へ行った時、後ろから肩を叩かれた。

 「お兄さん、ちょっと来てもらえますか?」

 ヤダと言おうと思ったが、腕をガッシリ掴まれていた。


 直樹は二階の店長室と書かれた部屋へ連れてこられた。


 「お兄さん、良く出てますね」

 まだ若そうな、三十ちょっと越えた位の小綺麗にした男が話し掛けてきた。

 「さすが新台、出してますねー」

 直樹はわざと大袈裟に答えた。

 「でも少々出過ぎですね」

 口元は笑っているが、目は直樹を睨み付けていた。

 「昨日一昨日と出なかったから吹いたんですかね」

 まだまだ余裕で直樹は答えた。

 「そうかもしれないけど、そんな筈は無いですよ」

 「言ってる意味がわかりません。じゃあ、もしかして設定悪いんですか? 新台なのに?」

 ちょっと嫌味を言ってみた。

 「私が言いたいのは、あなたが何かいけない道具を使っているんじゃ無いかと聞いているんです」

 「体感機とかですか? そんなの持ってませんよ」

 「では調べさせてもらいますよ」

 店長の言葉に、部屋の外から体格の良い二人の店員が入ってきた。いかにも悪者ですという顔だった。

 一人が直樹を羽交い締めにし、もう一人が服を脱がせ始めた。

 「ヤダー、何するのー、変態ー」

 直樹の叫びは誰にも届かなかった。


 が、一部始終を見ていた者がいた。

 曽我部だ。


 「本宮さん、直樹さんが襲われています」

 「分かりました」

 そう言うと本宮は警察に連絡した。店内で客のふりをしていた警察官達にすぐに指令が届き、一斉に二階へ走って行った。


 「警察だ。暴行の現行犯で逮捕する」

 店員二人は連れていかれた。


 「店長、あなたは直接手を出していませんが、示唆した疑いがあります。一緒に来てもらいます」

 店長も連れていかれた。


 「大丈夫ですか?」

 「大丈夫です。助かりました」

 

 直樹は服を整え、台に戻った。

 全てのコインを両替し、帰る事にした。


 昨夜直樹はコンピューターに細工しつおいた。直樹の台だけ出るようにしておいた。

 異常な出方をさせ、店員に不振に思わせ、事務所に連れて行かれると言う予定だった。せいぜい監禁で逮捕させるつもりだったが、手を出してくれたので、暴行になってしまった。


 この店の系列の全店で同じ事が行われた。多分今頃警察署には全店長が集合し事情を聞かれているだろう。


 直樹は警察官に顔を見られたが、各店に配置された捜査員だと思われた筈だ。


 直樹は研究所へ戻った。

 

 「岡倉さん、ご苦労様でした。ここの所寝てないから疲れたでしょう。良く休んで下さい。後の事は警察に任せれば良いです」

 「はい。そうさせてもらいます」


 直樹は部屋へ戻ってベットに横になった。

 「あー、疲れた」

 流石に眠かった。肩も凝っている。


 しかし、直樹は一つ引っ掛かった。

 事件が終わったようには思えなかった。あの店を摘発しただけで何が解決したんだろう。他の店は調べ無くても良かったのか。


 本当にパチンコ屋の儲けは外国へ行っているのか。

 

 それを分かっていながら何で今まで放置されて来たんだ? 外国への送金方法とか、送金先とか、俺に調べさせようとはしない。


 本宮、何か隠してやがる。


 きっと俺達には話せない事があるんだろうな。まだぺーぺーな俺達には。


 知りたいような、知らない方が良いような。


 まあ、難しい事に関わるのは面倒臭い。

 今が楽しきゃいいや。言われた事やってりゃいいや。


 直樹はいつの間にか眠っていた。

 何故か父親の顔が頭に浮かんでいた。

 


 

 

 

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