第9章 8話
それにしても。
今回の事は霧島が異世界の門を開ける所から全ての元凶。
そもそも、この原子力研究所は元々はディルスが所有していた。
原子力事故の反省を込めてきちんと研究しなおそうという名目で。
もちろん、ディルスがそれらの圧力を行っていた。
つまり。
ここがオロチ・システムを解明した場所でもある。
幾多の動物実験の後に、人体実験も行った。
だけど、多くはそれを制御するには至っていなかった。
以前私達が冒険をした時に立ちはだかったレンド・ムシュラフさんとかは珍しいケース。
もちろん、ディルスの部下である彼らも能力を開花できた。
それはたぶん、オロチ・システムにおける適合者なんだわ。
あのアーティファクトは能力を開花するには”欲”の心を利用する。
それはディルスを始め部下の5人を見ても分かる。
そしてその能力やアーティファクトの力を使って。
ディルスがやろうとした事を変わりにやろうとした。
それは、この世界の混乱。
ディルスはオロチ・システムを使って、そしてイザナキノミコトを使って。
そして、彼女達は異世界の門を使って。
あの異世界の門もアーティファクトの力をヒントにしている。
異世界へと飛ぶ事は佐藤葉子さんや私の妹もすでに体験済み。
異世界という存在はある。
しかも一つだけでは無い。
それは私達が以前冒険をした時にも体験した。
人々が絶滅した世界を。
霧島の計画では、それらの部品を集めるのに大量の資金が必要だった。
その為に青山の資金を頼りにした。
邪魔をする存在は他の3人が消し去った。
こうして。
ようやく計画を開始する事になったのだけど。
運が悪い事に、こっちにはキッドさんがいた。
彼の運を引き寄せる能力のせいで、偶然にも佐藤葉子さんの飛んだ先でもある妖魔界と繋がってしまった。
そもそも妖魔界と繋ぐつもりが、佐藤葉子さんと繋がりがあるなんて知らなかったかのどちらか。
こうして。
彼女の計画は崩れ去ってしまった。
「しかし、俺の運の良さが能力とはな」
憮然とした表情が見える。
「こう言い返れば納得出来るでしょう。”才能”と」
そう。
それこそが、ワルキュリア様が人間に与えたもの。
スポーツの世界なんかでは、そのスポーツをする為に生まれたような選手がいたりする。
普段は気づかないけれど、突然開花したり努力の末に勝ち取ったのもある。
「普段はそう呼ばれてるだけの事。それがより超能力的になったのを”能力”と呼んでいるに過ぎません」
あくまで人より長けているというもの。
それがより特化したのが私の鑑定能力であり、葛葉の雷の能力でもある。
「私から見れば同じようにしか見えません」
そこに境は無い。
他の人がどう感じるだけの問題。
「ふっ・・・。なら、そう納得してやるか」
私から見れば、彼のイカサマによる技術も似たようなもの。
ただ努力出来るか出来ないかだけ。
「それで、これからどうするのです?」
もう霧島は死んだ。
彼の仇はもういない。
「まずは墓参りするさ。それからじっくり考える」
そう。
「でも」
ん?
「また力が欲しい時は言ってくれ。何処にいようか駆けつける」
「期待していますわよ」
今回でアーティファクトを生み出した神のいる世界の話は終了させてもらいます。