第9章 巻き戻る
息が荒い。
なんとかなった。
ギリギリだったけど。
恐らく何があったのか理解していないだろう。
正直、この力は使いたくなかった。
使える状況が限定的過ぎる。
だけど。
これはディルス様の力をも超えた無敵の力。
何故ディルス様はこれを私に授けたのか。
そのまま自分でお使いになれば良かったのに。
そうすれば死ぬことは無かった。
私もこうやって。
このアーティファクトの力のおかげで、生き残れた。
これは素晴らしい。
私の体に埋め込まれたアーティファクトの能力。
それは。
使用者が死ぬほどの状況にならないと発動しないが。
過去に飛ぶ事が出来る。
そう。
死ぬ前に巻き戻る事が出来る。
しかも。
過去という事は、これから起こる事を知っている。
私だけが。
これから起こる未来を変える事が可能。
そういう能力。
いくらあいつらが私を殺そうとしても。
巻き戻ってそれを防ぐ事が出来る。
まさに無敵の能力。
欠点は死ぬほどの状況にならないと発動しない事。
そしてある一定の時間しか巻き戻らない事。
ここは死ぬ直前にもいたダンスホール。
すでに異次元の門は無意味と化した後の状況。
これからあいつらがここにやってくる。
逃げる事は出来ない。
その状況は変える事は出来ない。
だけど。
これから起こる事はもう分かっている。
まずはあの雷を無効化する少女だ。
手始めにあいつを殺そう。