第8章 11話
彼女を討てるなら、毛髪が一生生えて来ない事なんて安い代償。
このままにしておく訳にはいかない。
それはディルスの活動に少なからず手助けしてしまった林道家の宿命。
あの事故が起きてから、両親共に古代美術の世界から身を引いてしまった。
それは真方家を紹介してしまった責任ゆえに。
そして。
そのディルスのやろうとした事を止めるのは私の責任。
両親に頼る事もしないし、やらせる訳にもいかない。
「本気か?」
キッドが聞いてくる。
「もちろん」
これでようやく終わりにする事が出来る。
ディルスと。
そしてその部下達も、もういない。
残りは霧島のみ。
「すいませんね。最後の最後にあなたに渡せなくて」
「気にするな。どうせ俺の復讐もこれで終わる」
え?
何か引っかかる言い方。
「そう。これでな!下がれ!」
未だに霧島に掴みかかってる葛葉に叫ぶ。
え?どういう事?
それを聞いて葛葉が離れる。
「馬鹿め。何を考えている?」
「危険だから下げただけだ」
そう言った次の瞬間。
キッドの手から大量のカードが放たれた。
「こんなの効くか!」
だが。
カードの1枚が当たった次の瞬間。
もの凄い炎の渦がそこにはあった。
これは!?
「効くかって?残念ながら効くんだよ。アーティファクトすら溶かすほどの業火。あんたは骨も残らずに死ぬんだ」
こんな力が!?
「ぐっ!」
苦しんでいる。
どんどん人の形が崩れていく。
本当に!?
「くそっ!」
霧島が自分の右腕を自分で切断した。
「え?」
私の足下に転がる。
どういう事?
何かをやるかと思ったけれど。
そのまま溶けて無くなってしまった。
右腕だけを残して。