第1章 7話
ダンプカーの運転手を見る。
じゃが。
すでに息絶えておる。
あれだけの猛スピードなら当然とも思うたが。
それは違う。
何か体内から食い破った跡が見える。
おそらく、何者かが住み着いて操ったのじゃろう。
しかし何故わらわが?
思い当たる節は一つしかない。
あの手術室に現れた動く血。
どうもわらわが生きている事を分かってるようじゃ。
おっと。
サイレンの音が聞こえる。
さすがにこれほど大きな事故じゃ。
色々聞かれるのも面倒。
そもそも、正直に言った所で誰が信用する?
わらわはそっと、その現場を離れる。
しかし。
どういう事じゃ?
見られてまずい事なのか、わらわには分からぬ。
血が動いて襲ったとか言うて、誰が信用する?
漫画とか映画とかの世界なら分かるが。
そんな事が実際にある訳ないと言われておしまい。
事実、体験したわらわですら容易には信じられない出来事が起きている。
人間の血がまるで意思を持ってるように動いているなどと。
頭が混乱しそうじゃ。
しかし、これからどうする?
わらわの働いている職場は、二度と開業出来る事はなかろう。
あんな陰惨な出来事が起きたのじゃ。
つまり。
今現在、わらわの味方はおらぬ。
まさに一人ぼっち。
一体どうすれば良い?
「おい!きさま!!」
なぬ!?
声がした方向を見る。
なんじゃと!?
そこには。
子供を人質にした男がいた。