第7章 10話
なんとか無事に脱出。
今回はキッドさんに色々助けて貰ったわ。
「すいません。足を引っ張ってしまって」
「何、気にするな」
でも一つ気がかりが。
「宜しかったのですか?赤沢の事は。私の妹の方に行ってるとなると、倒されてる可能性が。いえ、生きてる可能性は無いと思われますが」
「いいんだ。俺の家族を殺したような奴だが。きちんと罰さえ与えていればいい。正直、この俺の手で殺してやりたいってのは事実だが」
キッドさん。
「だが、あんたを見殺しにするくらいなら、その手柄をくれてやる方がマシだ」
その辺りの事情は見たくは無かったのですが。
「その赤沢のせいで、あなたは両親を。そして妹を亡くしてしまった」
「妹か。あの葛葉って娘は若干面影が似てるくらいだが。つい思い起こしてしまったな」
「それで、これからはどうするおつもりで?」
今回はキッドさんの敵の場所が分かるかもしれないと思って、ビルの中に進入した。
でも、それはもう終わっている事でしょう。
葛葉と美喜子さんがいて赤沢に倒されるなんて無い。
それに。
山本さんも向かっているという連絡は受けている。
万が一の事態があっても山本さんなら大丈夫でしょう。
だから。
キッドさんは目的を失ってしまった。
「簡単な事さ。その赤沢のボスを倒す」
赤沢のボスって。
「霧島佐久名を?」
「ああ。元々はそいつが元凶なんだ。そいつを倒さない限り、区切りはついてない」
元々って。
「一体何があったんですか?そこまでは見て無いので私も知らないのですが」
「なぁに。簡単な事さ。俺の両親があの原子力発電所の監督責任者だったんだ」
監督責任!?
「つまり現場の地図や職員のスケジュール等を知るにはうってつけって奴だ。あいつはそれが目的で俺に近づいた」
まさか。
ディルスに運命を左右された人がここにも。
「まさか。そんな繋がりがあったなんて」
「あれだけの大惨事だ。どこで誰が繋がってるかなんて、分からないものさ」
なるほど。
しかし彼女は当時の作戦でミスをし、機械によって命を維持する羽目になってしまった。
「まさか。赤沢のミスをあなた達になすりつけたのが、あなた達家族が破滅した原因?」
「そういう事さ。俺の両親のデータは間違って無かった。間違っていたのは、あいつが日にちの違うデータを持ち出したって事さ」
なるほど。
それで彼らにとっても予期せぬ出来事になってしまった。
「不幸中の幸いなのは、その事故のせいで俺は学校から帰るのが遅くなった事だ。当たり前だ。その時すでに両親と妹は死んでいるんだからな。誰も迎えに来ないさ。だから俺は事故に巻き込まれる事は無かった」
そういう事だったのね。